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第80話 広がる夢

 アマリス様とルーチェがやって来て四日目のこと、ラッシュバードたちが揃って新しく卵を産みました。

 ラッシュバードは十日から二十日くらいの間隔でもって卵を一気に産むみたいですね。その数は四個から六個で、最終的には五十個くらいとなるそうです。

 一応私のスピードとスター、アマリス様のフォレとラニは別々の小部屋に分けて配置をしています。それというのも、混ざってしまっては困るからというのがあります。


「えっと?」


 キサラさんがなにやら困っているようです。


「どうかしましたか、キサラさん」


「はい、私の前に卵を転がしてきたんですけれど、これはどうしたらよいのでしょうか」


 どうやらキサラさんも信用されたのか、卵を差し出してきたみたいですね。

 これまで見てる前で私が何度か取っている様子を見せたのですけれど、勝手なことをしてはいけないと不安がっているようです。


「ふふっ、これはかえらない卵を譲ってくれているのですよ。この子たちは私の眷属ですから、今までは私に対してのみ行ってきたんです。この様子だと、キサラさんもスピードとスターからかなり信頼を得ているようですね」


「そうなのですね。えへっ、えへへへ……」


 キサラさんがとても嬉しそうですね。

 当然ですが、フォレとラニの方は無反応です。ただし、私の姿を確認すると、スピードとスターのように卵を差し出してきました。まったく頭のいい子たちですね。

 それで、差し出されてきた卵を鑑定魔法で鑑定します。

 結果は確かに無精卵でした。ラッシュバードの勘は素晴らしいですね。


「よし、これだけ卵があれば、今日は卵料理を出すこととしましょうか」


「わあ、卵料理ですか。楽しみですね」


 キサラさんの顔が明るくなります。

 この分ですと、卵を使ったデザートを期待しているような感じですね。おそらくこの目はプリンでしょう。

 甘味のまだまだ少ないこの世界ですもの。プリンなんて出されてはそれはもうとりこになるのも仕方ありません。


 お昼になる頃、湖まで散策に出ていたアマリス様とルーチェが戻ってきます。

 そういえば、毎日のように湖に行ってますけれど、一体どうしてなのでしょうかね。私の邪魔をしないようにという気遣いだとしても、毎日湖はさすがに飽きると思いますが……。


「ただいま戻りました、お姉様」


「お帰りなさい、アマリス様、ルーチェ。今日は卵が手に入りましたから、デザートにはプリンがございますよ」


「やったね」


 ああ、言葉遣いが……。

 二人ともプリンが気に入っているようですね。やはり甘味は強いです。


「それにしても、二人揃って毎日湖へ何をしに行っているのですか?」


「内緒ですよ、お姉様」


 私が問い掛けると、二人揃って答えてくれませんでした。これは気になりますね。

 とはいえ、私だって鬼じゃありませんから、二人が答えないのでしたらこれ以上は聞きません。護衛の人たちに聞けばわかるでしょうけれど、それもそれで気が引けますしね。

 私が視線を向けると、護衛の人たちはぷいっと視線を背けてしまいました。なんでしょうか、すごく気になります。多分、口止めされているんでしょうね、あの態度を見るかぎりですけれど。


 それはそれとして、昼食はそれはおいしそうに食べてくれますので私としては満足です。


「お姉様、本当に食堂をなさるのですか?」


「ええ、もう少し食材が手に入るようになりましたら、開業しようと思います。野菜の生産が整ってきましたので、やはり問題は肉でしょうかね」


「肉……、ラッシュバードは食いなさるんですか、レチェ様」


 マックスさんが酷いことを聞いてきます。


「あれだけ愛着が湧いてしまいますと、食べるということができませんね。そのあたりはギルバートに任せようと思います」


「俺一人で食堂を賄うだけの肉を取ってくるのは無理だぞ。それこそ商業ギルドや冒険者ギルドを利用してくれ」


 ギルバートから苦情が出てしまいましたね。さすがに酷すぎましたか。


「王家やウィルソン公爵家を頼るという選択肢はございませんか、お姉様」


「それはありませんね。私は個人的には公爵家を抜けたと思っておりますゆえ、独立した生活をしたいのです。近くの街の商業ギルドと冒険者ギルドに相談してみますよ」


「そうですか……」


 アマリス様がしょぼんと落ち込んでしまいます。よっぽど私の役に立ちたかったのでしょうね。ですが、私はもう社交界から身を引いたのですから、極力距離を置きたいのですよ。

 もちろん、アマリス様たちが遊びに来られるのは止めませんけれどね。

 なんともちょっと沈んでしまったような気がしますが、このお昼のメインディッシュが登場すると、そんな雰囲気は一気に吹き飛んでしまいます。


「はい、お待ちかねのプリンですよ。材料は卵とミルクと砂糖だけでできた甘味です。よく味わって下さいね」


 初めて食べることになるカリナさん親子にも分かるように、私は説明をしながらテーブルにプリンを出します。


「うっ、あまーいっ!」


 マリナさんの目がしいたけになってしまっています。久しぶりに見ましたね、この瞳。

 漫画などではよく見ましたが、リアルに見るとなんとも不思議な感じです。


「先程のお料理もですが、このプリンというものも素晴らしいと思います。食堂を開業される時が楽しみでございます」


 カリナさんからも褒められてしまいましたね。子を持つ母親からこう言われてしまえば、私もつい胸を張ってしまいます。


 今のところは順調ですし、この生産規模なら来年には食堂を開業できるかもしれません。

 夢は広がり続けますね。

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