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第75話 相性はよかったようです

 まさか、私やアマリス様以外にも精霊が見える方がいらっしゃるとは思いませんでしたね。

 ちなみにあのノームはなぜ鳥小屋にいたかといいますと、お掃除をしてくれていたのです。キサラさん一人では手が回りませんからね。ノームが自発的にお掃除を手伝っているのです。

 でも、ノームの数自体は変わっていないのですよね。最初に出会った五体のままです。とはいえ、大いに助かっていますから数が減らない限り文句を言うべきではないでしょう。


 それはそれとして、マリナさんがじっとノームを見ています。

 ですが、カリナさんとサリナさんには見えていないようで、双方の間は妙な空気になってきたように思います。

 家族の間でも見える見えないというのは、アマリス様の手紙からでも明白ですからね。なんでも、アクエリアスもアマリス様には見えますのに、アンドリュー殿下には見えなかったそうですから。

 とりあえず、ここは雇い主として話を丸く収めませんとね。


「ここには私と契約したノームが五体住んでいらっしゃいます。精霊の祝福を受けた場所で働くのですから、悪いようには致しませんよ。ねえ、ノーム」


『もちろんだよ。僕たちはここが気に入っているからね』


 私が抱きかかえたノームは、笑顔で言い切ってくれます。嬉しいかぎりではないですか。

 ところが、私が笑顔を見せても、あまり様子に変化は見られませんね。どうやら驚きすぎて反応に困っているようです。


「ブフェッ」


 どう対応しようかと悩んでいますと、ラッシュバードが一羽やってきました。この子は巻いたスカーフに一本線が入っていますので、一回目の産卵で生まれた子ですね。茶色のスカーフはキサラさんが名付けた子です。


「あっ、こら。レチェ様の邪魔をしちゃいけませんよ、キララ」


 そうでした。キララって名前でしたね。キサラさんと名前が似ていますので、呼び間違えそうです。

 でも、自分と似た名前をつけたがるのは、分からなくはありません。なにせここにはカリナさん、サリナさん、マリナさんという似た名前の親子がいるのですから。

 キサラさんがキララを止めようとしますが、どういうわけか、キララはサリナさんに近付いていきます。


「ブェッ」


 服の裾を加えて引っ張ったかと思うと、すぐに離してキサラさんに何かを訴えています。


「えっ、その方が気に入ったのですか?」


 キサラさんがキララに確認すると、こくこくと頷いています。眷属化の影響か、言葉を理解しているあたり、かなり頭が良いようですね。

 この様子には、私はもちろんミサエラさんも驚かされます。


「どうされますか。雇われますか?」


「雇いましょう。仕事はしっかりと覚えてもらいますが、ラッシュバードが気に入るというのはあまりないと思いますからね」


 私は判断しました。

 実際、ラッシュバードには好き嫌いがあるようです。ギルバートとマックスさんはあまり好きでないようで、近くに寄ってもほとんど無反応です。一方、残った男性のハーベイさんは気に入っているようで、時折彼に餌をねだっている様子が見られました。

 今回は、サリナさんが一番気に入られていて、カリナさんとマリナさんはそうでもないといった感じです。この差はどこから来るのでしょうね。

 こればっかりはラッシュバードたちに聞いてみないと分かりませんが、言葉が通じませんから永遠の謎ですね。


 最後に食堂に戻り、契約を交わして今日の話は終わりです。

 今回も三人を新たに雇うことができて、私たちの仕事は分担されて、だいぶ負担が減りそうです。

 カリナさんはイリスのお手伝いを、サリナさんはキサラさんのお手伝いを、マリナさんはノームと話をしながら自由にお手伝いということになりました。

 ボールペンを取り出し、さらさらと契約書にサインをします。


「はい、契約成立ですね。今回はどうなるかとは思いましたが、思いもよらない相性もあって無事に決まって、私自身もほっとしています」


「ミサエラさんの見る目は確かなようですね」


 内心ドキドキだったらしく、カリナさんたちがいる前だというのに正直な気持ちを吐露していました。

 ですが、私がすぐにフォローをしておきますと、ミサエラさんは微笑んでいました。


「これから、よろしくお願いします」


「はい、こちらこそよろしくお願いしますね。それでは、住む場所を早速ご用意しましょうか」


「え?」


 改めて挨拶を終えた私がにっこりと微笑むと、カリナさんたちの表情が固まってしまいましたね。

 ちょっと何を言っているのか分からないといったところでしょうか。

 家がすぐ建つなんて思ってないからなんでしょうね。

 ところがどっこい、これが現実なのです。


「ラ・ギア・ルド!」


 どーんと一軒家が出現します。

 この現実に、カリナさんたちは狐につままれたようになっていますね。


「……まったく、なぜこれだけの魔法が使える人が、学園に落ちたのでしょうね」


「それには触れないで下さい!」


 呆れるミサエラさんに、私は即座にツッコミを入れておきます。


 そんなわけでして、レチェ農園には新しい従業員が三人加わりました。

 訳ありな方々ですが、ここが三人にとって安息の地になることを祈らざるをえませんね。

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