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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第74話 新しい従業員候補

 いやはや、魔法かばんというものはすごいものですね。

 私は、ミサエラさんから渡されました魔法かばんの効果に驚いていました。

 前世で異世界ものは時々読んでいましたけれど、自分が持つに至って、その便利さに思わず感動してしまいました。

 どれだけ入るのだろうかと試してみたのですが、農園の倉庫一室分の小麦を入れてもまだ余裕がありました。さすがは三年目の一人前の商人が持たされるような代物ですね。びっくりです。

 この魔法かばんには、多くの魔法が施されていました。

 空間拡張に破れ防止、汚れ防止、時間停滞などいろいろ様々です。ただし、生きたものは入れられないようですね。なるほど、異世界ものでよく見る仕様そのものです。

 これが付与魔法というものですか。改めてそのすごさを思い知らされました。

 うう、これならばもっと真剣に勉強しておくべきでしたね。今となっては後の祭りなのですけれど。


 かばんを見たイリスも驚いてしましたね。

 このようなものを商業ギルドがなぜ持っているのかと。

 確かにそうですね。開業三年目の商人たちに渡しているとか仰られていましたが、そんなに数を用意できるものなのでしょうか。

 そんなわけでして、ミサエラさんから新しい従業員が集まったと連絡を受けましたので、その際に尋ねてみることにしました。


 以前と同じように、私のところまで新しい従業員連れて、ミサエラさんたちがやってきました。

 お願いしたのは五人でしたが、今回集まったのは三名です。今回は女性ばかりでした。


「お待たせしました。申し訳ありませんね、ご希望の人数には足りませんでした」


 やって来るなり、ミサエラさんが人数の不足を謝罪しています。

 ですけれど、新しい人を見つけて下さるだけでも嬉しいかぎりです。他の商人の方々とのお相手もあるでしょうに、私たちのために人を集めて下さっているのですから。


「収穫の時期までに間に合えば問題ありません。本当にありがとうございます」


 人数は足りなくても、集めて下さったのでお礼はきちんと申し上げておきます。

 集まった女性たちですが、年齢がすごくバラバラです。十代前半と後半、それと三十代と思われる三名です。

 集まった方々にひとまずは自己紹介をしましょう。


「みなさん、よく今回はご応募いただきました。私がレチェ農園の主であるレチェと申します。十四歳の若輩者ではありますが、どうぞよろしくお願いします」


 私が挨拶をすると、三人からもそれぞれ挨拶がありました。

 一番若い子はマリナ、次に若い子はサリナ、年の離れた女性はカリナというそうです。


「お名前が似てらっしゃるということは、みなさんは親子でしょうか」


 ふと思ったので声をかけてみると、どうやら当たりだったようです。

 事情を聞けば、最近カリナさんは夫を亡くしたらしく、そのため自分たちで稼がなければならなくなったようです。

 そこで耳に入ったのが私のところだったようですね。なるほど、双方の利害の一致となりそうです。


「どのような仕事でもさせて頂きます。ですので、どうか、どうか雇って頂けないでしょうか」


 カリナさんが頭を下げてきます。

 でも、私はすぐには返事をしません。


「それは今判断することではありません。まずはこの農園の仕事を見ていただかないと。雇った後で合いませんでしたでは済まないということもあります。やはり、双方納得した上で雇用をしたいと思いますから」


 私はにっこりと微笑みます。

 生活のために必死になるというのは、私もその気持ちがよく分かります。

 とりあえず、雇用を決める前に仕事をしっかりと見てもらいましょう。

 この農園での仕事は主に三つ。

 イリスが担当する、家の中での作業。掃除、洗濯、炊事、それと倉庫の管理です。

 ギルバートたち男性陣が主に担当している畑作業。面積が広い上に、力もいる大変な作業です。

 キサラさんが担当するラッシュバードの世話。これは私も主として時々手伝っています。


「ま、魔物……」


 カリナさんが怯えていますね。夫が亡くなった原因が、魔物の襲撃だそうですからこればかりは仕方がない反応でしょう。


「ラッシュバードはおとなしい子たちです。あそこで作業されている女性も平気でしょう?」


「た、確かに……」


 キサラさんがにこにことラッシュバードたちの相手をしている様子を見て、親子三人は驚いているようですね。

 これも私との間で成立している眷属契約の効果です。

 このことも三人にはしっかりと説明をしておきます。

 その説明の中、末っ子のマリナがじっとどこかを見ています。確か、その視線の先にはノームがいたはずです。

 ……まさか、この子、精霊が見えるのでしょうか。


「マリナ、そっちに何かいるの?」


「うん、もぐらさんが見える」


「何もいないじゃないの。嘘はダメよ」


「本当にいるもん」


 見えてますね、やっぱり。

 これは説明した方がよさそうですね。


「カリナさん、マリナさんは嘘は言っていませんよ。あそこにはノームっていう精霊がいるんです」


「精霊がいるのですか?!」


 またまた驚いていますね。

 これはずいぶんと大騒ぎになりそうです。

 とりあえずはひと通り説明は終わりましたが、どうやらこの雇用契約、ただで終わりそうになさそうです。

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