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第68話 卵とミルクを混ぜるのです

 スターの産んだ二回目の卵は、五つのうち三つが無精卵でかえらないようでした。

 スピードとスターはそれを感じ取ったらしく、せっせと巣から外して私に渡してくれました。


「ブフェッ」


『主、役立ててくれだってさ』


 スピードたちの言葉を、ノームが訳してくれます。


「そうですか。本当にありがとうございますね」


 自分たちの産んだ卵だというのに、かえらないことが分かると二羽ともおとなしく差し出してくれます。

 私への忠誠の表れなのでしょうけれど、なんだか可哀想な気がしますね。


 そんなわけでして、今回は卵が三つ手に入りました。

 ケーキに卵焼き、目玉焼き、ゆで卵にマヨネーズ……。

 卵を使う料理はいろいろと思い浮かびます。

 ですが、今回はあれにしてみましょう。


 異世界への転生や転移でおなじみの甘味、プリンです。

 卵とミルクで作れますからね。


(この世界、甘味が思ったより少ないですからね。甘すぎるのはダメでしょうから、お砂糖はカラメル部分だけにしましょう)


 そんなわけで、プリン本体には砂糖を入れず、カラメルで別添えするという形を取ることにしました。


 ラッシュバードの卵は、本当にいつ見てもダチョウの卵のようです。

 前世で見慣れている鶏卵に比べてかなり大きいですから、覚えているレシピに対してどのくらいに調節すればいいのか、ちょっと分かりませんね。

 でも、卵を一個使うだけで、私たち六人分を十分作ることができるくらいはありそうですね。


 最初にカラメルを作ります。商業ギルドを通じて手に入れたお砂糖を薄く水を張った鍋に入れて、コンロの上で十分加熱して溶かしていきます。

 やりすぎると真っ黒な炭になってしまいますから、この加減は重要です。

 ボウルに卵を割り入れ、まずは軽く撹拌します。

 崩れたところに温めたミルクを少しずつ入れて再び撹拌します。

 なめらかさを出すためには、このミルクと混ぜた卵を一度こします。

 土魔法で作った器の底に最初に作ったカラメルを入れ、その上からミルクと溶いた卵を流し込みます。


「さて、あとは焼くだけですね。正確な分量が分かりませんのでやや適当ですけれど、ここまでは順調です。ここで失敗しては食堂なんて開けませんからね」


 ラッシュバードの卵一個でできたプリンの量は、実に十五個分でした。やっぱり大きいですね。

 でも、これだけの個数を一気に焼き上げることのできるオーブンはいいですね。

 焼き上げた後は粗熱を取るのですが、冷蔵庫は小型のものがありませんから、魔法で冷やしちゃいましょう。

 プリンを焼き上げている間、私は今回のレシピをまとめていきます。

 ミルクの量も大体の感覚で使いましたからね。こっちの世界、計量カップなんてものはありませんもの。

 誰でもいつでも同じものを作れるようにするのなら、やはりそういうものは必要でしょうからね。また暇を見つけて作ることにしましょう。


 しばらくすると、オーブンの運転スイッチになっている魔石の色が薄くなります。これは運転が止まっている状態ですので、どうやらプリンが焼き上がったようです。

 さてどうなっていますでしょうか。


「あっつっ!」


 オーブンを開けると、熱が噴き出してきました。

 さすがは百八十度の空間。うっかりしていました。

 どうにかすぐに退避したのでやけどは回避できましたが、こういうドジっ子みたいなところは直さないといけませんね。

 魔法学園もそういうところが災いして落ちてしまったわけですからね。


「おーっ、いい感じになっていますね」


 適切だったらしく、焼き上がったプリンはいい感じの色になっていました。

 乗せているバットを取り出して、私はテーブルの上に置きます。


「ラ・ズミ・アセ」


 水属性魔法の冷却魔法を使って、プリンの熱を取っていきます。


「レチェ様、今日は何を作られているんですか」


 厨房にイリスがやってきました。


「はい、プリンという甘味を作っていました。甘味というのは甘いお菓子という意味ですよ」


「……お菓子でございますか」


 メイドということもあり、イリスの目の色が変わりました。

 私に近寄りますと、じっと私の目の前にあるものを見つめています。


「これがプリンですか。黄色いですね」


「はい、ラッシュバードの卵を使用しております。それとミルクを混ぜて焼いたものです。そこにはお砂糖を焦がして作ったカラメルというものが敷いてあります」


「ふむふむ……」


 イリスは熱心に覚えようとしていますね。

 ここで、私がさっきメモしておいたレシピのことを教えますと、それは嬉しさと驚きの入り混じった表情をしていましたね。


「あとでみなさんが戻ってきたら試食をしましょう。今は冷やしている最中ですので、完成までもう少し時間がかかります」


「承知致しました。時間的に仕事も一段落するでしょうから、お呼びして参ります」


「はい、頼みますね」


 バタバタとイリスは外へと駆け出していきました。


 さて、このあとは夕食を前にみなさんに試食をしてもらったのですが、イリスとキサラさんはおいしそうに食べてらっしゃいました。

 男性陣はどうも甘いものが苦手なようですね。ギルバートは前々から甘いのが苦手だと言っていましたからね。食べてはくれましたが、あまりいい顔はしていませんでした。

 ひとまず、新しい料理が作れたので私は満足でしたが、評価が割れてしまったのは意外でした。

 もう少し甘さを抑えたものも頑張って作ってみましょうかね。


 もう一つの目標である食堂を開くためにも、私は改めて料理開発を頑張る決意を固めたのでした。

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