第67話 妹たちからの手紙
今日も今日とて、畑仕事をしながらスピードたちの面倒を見ています。
ギルバートは今日は近所に魔物を狩りに行っています。こうしないと、私たちは肉が食べられませんからね。
この近所に生息する魔物は、ほぼホーンラビットかウルフです。どちらも毛皮はそこそこで売れますし、肉もおいしいので楽しみにさせてもらっています。
「レチェ様、お手紙が届きました」
マックスさんとハーベイさんと一緒に畑仕事をしていると、イリスがなにやら騒がしてくしています。
「分かりました。キリのいいところまで作業を進めますので、それからでよろしいでしょうか」
私はこのように答えますが、イリスは今回は引き下がりませんでした。
「何を仰ってるんですか。アマリス様とルーチェ様のお二人からですよ」
「えっ、なんですって?」
イリスの口から出た名前に、私は作業の手を止めてしまいます。
アマリス様とルーチェからとなれば、これは仕事をしている場合ではありませんね。
「ノームたち、二人のことを手伝ってあげてね」
『分かったよ』
私は畑仕事をノームに頼み、慌てて家の中へと戻っていきました。
家の中ではラッシュバードの相手をちょうど終えたばかりと思われるキサラさんが休憩をしていました。
疲れているように見えますが、その顔はとても幸せそうです。
キサラさんがいるので、さらに部屋を変えます。
アマリス様とルーチェからの手紙はできる限り極秘の方がいいですからね。
まあ、私の正体なんて、リキシルおじさまが来られた時の対応でバレバレなのでどうでもいいのですけれどね。
部屋にやって来た私たちは、早速手紙を確認します。
先にルーチェからですね。どちらも可愛い妹ですけれど、今回はルーチェの手紙から読んだ方がいい気がしました。
ルーチェの手紙には、とにかく近況がつらつらと書かれていましたね。
私のことで苦労をしているのかと思ったのですが、ルーチェがしっかりしていますから、ルーチェ経由でアンドリュー殿下に悪い話がいくことをみなさん嫌ったようですね。
それにアマリス様がほとんど一緒にいらっしゃるみたいですので、ルーチェはどうやら無事のようです。とてもほっとしました。
「お父様は相変わらず仕事に忙しそうですね。お母様は私からの手紙を楽しみにしていらっしゃるのですか……。今度お書きしましょうかね」
「その方がよいと思います。旦那様も奥様も、レチェ様のことはとても大切に思ってらっしゃいますのでね」
イリスの言葉もありますし、少し落ち着いた頃に手紙を認めることにしましょう。
家族はみんな元気そうで、私は一安心です。
さて、後回しにしてしまいましたアマリス様の手紙です。一体どのような内容が書かれているのでしょうか。
「……ああ、あそこは頭を悩ませましたからね」
「なんて書いてあるのですか?」
「入学試験の答案、アマリス様は実際にご覧になったそうです」
「……見れたのですね」
最初に書かれていたのは、私の入学試験の答案でした。
それは付与魔法に関する設問のところで盛大に間違いまくっていたという話でした。
確かに、試験を受けた時には私はわけが分からなくて適当に書いた覚えがあります。ヒロインだし不思議パワーでどうにかなるでしょうと、たかを括っていましたね。
でも、現実は厳しく、それが致命的となって試験に落とされたようです。
ゲームと現実の違いをまざまざと叩きつけられた瞬間でしたね。今となってはいい思い出ですよ。
「アマリス様が強引に見せて頂いたようですね。私のことを姉のように慕っていますから、アマリス様は」
私はさらに手紙を読み進めます。
そこには、アマリス様が連れて帰ったラッシュバードの処遇についても書かれていますね。
「へえ、魔法学園で飼うことになったのですか」
「なるほど、魔物の生態調査のためですか。いいのではないでしょうか、魔法学園らしくて」
「可哀想ですけれど、魔物との戦いの訓練にもなるでしょうしね。これはいい試みだと思います」
なんでもこの決定には、水の精霊アクエリアスが深くかかわったようです。そういえばアクエリアスって、人間と話できたのですね。
手紙を読み終わって、二人が無事に学園生活を送っていることが分かって、私はとても安心しました。
「この調子でラッシュバードが増えると、馬に乗った騎兵隊に代わって、ラッシュバードの騎兵隊ができ上がりそうですね」
「そうですね。刷り込みを利用すれば、慣れさせるのも楽でしょうしね」
元々はギルバートがたまたま拾って帰ってきた卵が始まりでしたが、なんだかとても大ごとになっているみたいです。
私のところのスピードとスターの間にも、二回目の産卵がありましたし、ラッシュバードたちは私たちの生活になくてはいけない存在になってしまいそうですね。
これは、こちらの様子も時折報告して差し上げなくてはなりませんね。
アマリス様とルーチェの手紙を読み終えた私たちは、しばらくの間、ちょっとした懐かしさに浸っていました。
二人も頑張っているようですし、私たちも負けてはいられません。
「さあ、仕事を再開しますよ」
「はい、レチェ様」
すっかり元気になった私たちは、それぞれの仕事へと戻っていったのでした。




