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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第63話 生まれました

 リキシルおじさまのおかげで、新しい料理を作ることができました。

 あとはラッシュバードの卵が大量に定期的に手に入るようになれば、更なるお料理が作れるようになります。

 ただ、たくさん卵を採るようになってしまえば、スピードとスターにはとても申し訳なく思いますけれどね。


 そんなある日のことです。


「ブフェッ!」


 農園に響き渡るくらいの大きな鳴き声が聞こえてきました。

 これはスターの声ですね。

 何事かと思い、私とイリス、それとキサラさんの三人で農園に駆け付けます。ギルバートたち男性陣はどうも興味がなさそうで、畑仕事をやると言って動きませんでした。


「どうしたのですか、スター」


 小屋に入るなり、スターは私の後ろへやって来て頭で押してきます。

 小屋の奥ではスピードが座ったまま微動だにしません。と思ったら、私の気配を感じて顔をくるりと向けてきました。よかった生きてますね。


「ブェッ!」


 鳴いたかと思えば、自分の下の方へと視線を向けています。

 最初こそ何かと思いましたが、すぐに分かりました。


「これは……卵がかえるのですね」


「ブフェッ」


 その通りと言わんばかりに、スターが頭を何度も縦に振っています。私の言葉が分かっている反応ですね。


「ええ、ついにラッシュバードの卵がかえるのですか。それは楽しみですね」


 キサラさんが目を輝かせて、スピードの下を見ています。

 今回産んだ卵は六個です。そのうち二個は無精卵だったらしく、スピードとスターが私に譲ってくれました。おいしくいただきましたけど、なんだか申し訳ない気持ちになりましたね。

 私たちが見守る中、しばらくするとスピードの下から何か声が聞こえ始めました。

 どうやら卵がかえったようですね。


「ブフェーッ!」


 自分たちの子が生まれたのが嬉しいのか、スターが大きな声で鳴きました。それにつられるようにスピードもまた鳴いていました。

 近くで大声を出されたものですから、ちょっと耳が痛いです。

 じっとスピードを見ていると、視線に耐え切れなくなったのか、スピードが立ち上がります。

 露わになったスピードの座っていた場所には、可愛いヒナが四羽姿を見せました。


「うわぁ、可愛い。魔物だと分かっていても子どもは可愛いですね」


 キサラさんのテンションが高くなっています。

 そんな中、ぱちりとヒナの一羽とキサラさんの目が合います。

 目が合ったヒナはよちよちと歩いて私たちの方へとやってきました。


「やあん、可愛すぎるぅ」


 どこから出てるのでしょうね、この声。


「ふふっ、お母さんだと思っているようですよ。鳥には最初に見た動くものを親だと思う習性がありますからね」


「へえ、そうなんですか」


「はい。だから、スピードとスターも私のことを親だと思っているんですよ」


「ブフェ」


 スピードとスターは鳴くと、私に寄り添ってきます。まったく、いくつになっても甘えん坊なんですから。

 さて、問題は残りの三羽ですね。鑑定魔法では元気そうなので問題はないでしょうけれど、なかなか周りを見ようとしません。


「動きませんね」


「そうですね。鑑定魔法では健康と出ているのですけれど、ちょっと怖がっているのかもしれませんね」


「ブェ……」


 私の声を理解したのか、心配そうにスピードとスターはラッシュバードのヒナたちに顔を近付けます。

 何かが近付いてきたことに気が付いたらしく、ヒナたちはふと顔を上げていました。そして、スピードとスターの顔を視界に収めたようです。

 それで安心したのか、ようやく動き始めました。スピードとスターのことも無事に親と認めたようですね。


「これで一安心ですね」


「そうでございますね。ところで、レチェ様」


「なんでしょうか、イリス」


「名前は付けられるのですか?」


「名前……ですか。そうですね、そうしましょうか」


 スピードとスターの記念すべき第一子たちです。せっかくですから名前を付けてあげましょう。

 ただし、これから後になると数が段々と増えていきますので、おそらく今回が最後でしょうね。名前を付けても覚えられなくなりますし。

 そのことを話すとイリスは納得していました。

 そんなわけでして、今回生まれた四羽には名前を付けてあげることに決まりました。

 キサラさんに懐いている一羽を除いては、イリスにも手伝ってもらい名前を付けます。私のネーミングセンスもどうかと思いましたから。

 ただし、名前は出してもらいますが、名づけは私が行います。理由としては、イリスがおそれ多いと断ったためですね。

 そんなわけでして、イリスが考えた名前を、三羽にそれぞれ付けていきます。

 するとどうしたことでしょうか。スピードやスターたちの時とまではいきませんが、生まれたばかりのラッシュバードの体が大きくなったではありませんか。


「どうやら、眷属の効果があるみたいですね。スピードとスターのことを親と認識しているので、この二羽を通じてレチェ様の魔力が流れ込んで、成長を促してしまったのではないでしょうか」


「むむむっ、今回は小さなヒナから楽しみたかったのですが、仕方ありませんね……」


 大きくなってしまったものは仕方ありません。また次の子どもたちに期待しましょう。

 私たちはスピードたちと戯れるヒナたちの姿をじっと眺めていたのでした。

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