第62話 早速使います
ワインビネガーが届きましたので、早速使ってみることにしましょう。
届いたのは赤と白の両方ですね。
これならいろいろと試せそうです。
「まずは風味の確認ですね」
届いたワインビネガーを確認します。
封を開けると、ワインの香りが確かにします。ですが、私は飲めません。未成年の飲酒はダメですからね?
そこで、イリスを呼びます。
「お呼びでしょうか、レチェ様」
「イリス、このワインビネガーの味を見て下さいませんかしら。ワインの発酵が進んで、酸味が強くなってしまったものですが、お酒であれば私は飲めませんのでね」
「確かにそうでございますね。では、失礼ながら私が味を見てみます」
小さなコップにすくい入れ、イリスは口に含んでいます。
「酸っぱいですね。ワインとはとても言えない代物ですよ、これ」
淡々と感想を述べるイリスですが、その表情は見事に眉間にしわを寄せています。
ちなみにですが、赤でも白でも似たような反応です。よっぽど酸っぱいんですね。
でも、それなら完全に酢になっているようですから、私の目的のものというものです。
「レチェ様、これで一体何をするおつもりなのですか」
「チーズを作ります」
「チーズ?」
何か分からないようなので、イリスは首を傾げていますね。やはり、この世界にはチーズがないようです。
確認が取れましたので、私はお鍋にミルクを注いで温めていきます。
ぽつぽつと気泡が出始めましたら、そこへワインビネガーを入れます。チーズの色のこともあるので、まずは白の方ですね。
注いで少しかき混ぜたら、火を止めてしばらく放置します。
イリスは私の作り方をじっと見守っています。
さて、どのくらい経ちましたかね。
鍋の中を見ますと、ごわごわしたものが出てきました。
「レチェ様、これは?」
「このごわごわしたものがチーズです。さあ、水分を絞ってやれば完成ですよ。水分の方も栄養価が高いので、シチューに入れてしまいましょうか」
「へ、へぇ~、こんなものができるのですね。レチェ様は物知りでございますね」
「えへへ、まあ……」
褒めてはきますけれど、あえてどこで知ったかは尋ねてきませんね。こういう気遣いはとても助かります。
普通なら気になって尋ねまくってしまうものですからね。
「ひとまずでき上がったチーズを食べてみましょうか」
「はい、それではいただきます」
塊が崩れていますから、スプーンですくってひと口いただきます。
思ったより濃厚な味わいのようですね。
「ワインの風味が思ったよりも残っていませんね」
「そうですね。心配だったアルコール分もほとんどなくなっているみたいですし、助かりました」
「アルコール? 何ですか、それ」
「あは、あははははは」
思わず出てしまった言葉をイリスに指摘されてしまいます。とりあえず笑ってごまかしておきましょう。
「と、とりあえず、先日のバターと同じように小麦粉と混ぜてあげると、お菓子を作ることができるんですよ。チーズケーキが作れますから、種類にバリエーションが出せますよ」
「それは素晴らしいですね。早速作ってみませんか?」
イリスが思いっきり食いついてきましたね。やはりお菓子はみなさん大好きなんですね。
「でしたら、イリスもレシピを覚えて下さいね。作れる人は多い方がいいですから」
「はい、お任せ下さい」
イリスが胸を叩いています。
いつもやる気は十分なのですが、今日はいつも以上にやる気ですよ。
そんなわけで、この日の残りは畑作業はギルバートたちに任せて、私とイリスの二人で料理を作りまくったのです。
その日の夜の食卓です。
今日の夕食は赤ワインビネガーとチーズを作った時に出たホエーを使ってのシチューです。お酢が入ると臭みが軽減されますから、いつもとは違った感じのシチューになったと思います。
「レチェ様、今日のシチューはなんだか一味違いますね。何をされたんですか?」
ギルバートですら気が付くとは、やはりお酢の力はすごいですね。
「ええ、おじさまが持ってこられた酸っぱくなったワインをお料理に使ってみたんですよ。どうでしたでしょうか」
「そうなんですか。いつもおいしいですが、今日もまた違った感じで気に入りましたよ。
どうやらギルバートからは絶賛のようです。
さて他の方はどうなんでしょうかね。
あまりにも黙々と食べられているので気になってしまいます。
結局、キサラさんたちからはおいしかったという感想がいただけただけでした。
こちらの方だと、あまり細かい違いとか気になさらないのでしょうかね。なんともすっきりしませんね。
とはいえど、あまりしつこく聞くのはやめておきましょうか。
そんなわけで、気持ちを切り替えてデザートを出します。
どんとイリスと一緒に運んできたのはチーズケーキです。何回か焦がしてしまいました。ショートケーキの時はちょっと勝手が違ったようです。
「先程のシチューやこのチーズケーキは、将来的に食堂を経営する時に出してみようと思うんです。よければ感想を下さいませ」
「ああ、そうなのですね。それでしたら、しっかり味わわせて頂きます」
ようやくマックスさんたちも反応してくれました。
この日頂いたみなさんの感想は、料理の改良に役立たせて頂きますね。
新しい料理を作れた私は、とても満足な一日を過ごしたのでした。




