表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/200

第60話 ノームの手で試食品を

 種を買って帰ってきた私は、農園に戻ると小屋の裏手にある自分たち用の畑にやってきました。

 もちろん、私を乗せて移動してくれたスターは、鳥小屋に戻らせてご褒美を与えてからです。この子たちがいるから、私はこれほど早く農園に戻ってこれるのです。

 さて、裏手の畑は小麦と豆とジャガイモで埋まっています。

 新しいものを植えようとすると、拡張する必要があります。


『どうしたの、主』


 ノームがひょっこりと現れます。


「レタスとトマトとイチゴの種を買ってきたのですが、畑がないなと思いましてね」


『それならすぐに作るよ。どこら辺まで拡張して大丈夫?』


「おじさまからは特に制限は聞いておりませんね」


『だったら、今の畑を倍の面積にするね』


 ノームはそういうと、今ある畑と同じ面積を、あっという間に畑に変えてしまいました。

 さすがは土の精霊、一瞬でやってのけましたね。

 まったく素晴らしいですね。

 あっという間に地面を掘り返して畝まで作ってくれましたので、私は早速種を植えます。


『主、実らせちゃって大丈夫?』


 私が種を植えると、ノームが私に聞いてきます。


「ええ、いいですよ」


 私が許可を出すと、ノームたちは嬉しそうにしています。

 そうかと思えば仲間を呼んで三人に増えました。どうやら、一人ひとりそれぞれを担当するようですね。

 私がじっと見つめていると、ノームは体を縮こまらせています。力を使うために力んでいるようですね。


『はいっ!』


 掛け声のような声を出すと、地面からぽこんと芽が出てきます。

 本当に魔法のある世界だということを再認識させられるくらい、恐ろしいほどの速度で成長してきます。

 今しがた植えたばかりだというのに、あっという間に収穫が可能になってしまいました。


『どう?』


 実りを迎えた野菜を目の前に、ノームたちは実に誇らしげです。

 私は呆然と目の前の野菜を眺めるしかありませんでした。


『主?』


 ノームがこてんと首を傾けていますが、私はまだ反応できずにいます。


「レチェ様、こんなところにいらしたのですか」


「あ、ああ。イリス?」


 イリスに呼ばれて、ようやく我に返ります。


「どうなさったのです……って、なんですか、これは!」


 目の前に大量に実る野菜を見て、イリスが叫んでしまっています。

 あまりにもうるさかったのか、近くで作業をしていたキサラさんまでが駆けつけてしまいました。


「一体どうなさったんですか」


「見て下さいよ。また一瞬で野菜が実ってしまっているんですよ。レチェ様、ノームにお願いしましたね?」


「は、はい。その通りです……」


 怒っているイリスは怖いので、とりあえず素直に認めておきます。

 私はイリスの怒りを鎮めるために、こうなった経緯を説明します。

 経緯をすべて聞いたイリスは、頭が痛くなってきたのか、手で押さえています。


「精霊って本当に人間の常識が通じませんね。許可を出すレチェ様もレチェ様ですが……」


「申し訳ありません」


 言い訳はしないで謝っておきます。


「で、でも、おいしそうな野菜じゃないですか。レチェ様、今夜はこれを使ってお料理をなさるのですか?」


 この空気をどうにかしようとして、キサラさんがどうにか和ませようとしています。

 私もどうにかして紛らわせたいので、キサラさんの話に乗っかります。


「はい、今日のところは生のままサラダでしょうかね。採れたての野菜はとてもみずみずしいですから」


「おお、いいですね。いやあ、ここにきてよかったと思います」


 私が一生懸命アピールをして、キサラさんが笑顔で喜べば、どうにかイリスの怒りはおさまったようです。

 イリスはギルバートたちの様子を見に行くと言って、呆れた表情のまま去っていきました。


「ノーム、一部から種を採取しておいて下さい。売り物用の栽培をしなければなりませんので」


『任せてよ』


 私がお願いをすると、ノームは実ったばかりの野菜の一部を収穫して、自分たちの能力で種を採取し始めました。

 いや、レタスってそんなところに種があるんですか。

 前世を思い返してみても、まったく見たことがなかったので新鮮でした。


「さて、キサラさん」


「はい、レチェ様」


「今夜のお食事用の野菜を収穫しましょうか」


「はい、畏まりました」


 私が雇い主なためか、言葉遣いが堅苦しいのは仕方ないですね。

 ちゃんと手伝って下さるので、そこは気にしないことにしておきましょう。

 収穫が終わると、私は一部を手に取って、水魔法できれいにします。


「れ、レチェ様?!」


 キサラさんが驚いていますね。

 それもそうでしょう。

 私がおもむろに口に放り込んだんですから。

 私達が食べられないものであるなら、売りに出せるわけがありませんよ。だから、率先して食べるんです。


「うん、このシャキシャキ感、これでこそレタスです」


 私は葉っぱを一枚もぎ取って、キサラさんに手渡します。


「一枚どうぞ」


「は、はい。では、ありがたく頂戴します」


 堅苦しい返答をしながら、キサラさんはレタスを口に含みます。


「ううっ、シャキシャキしています」


 なんということでしょう。目がしいたけです。この目で実際に見るなんて思いませんでした。

 ですが、これだけ好評ならば、これから育てる分も十分期待できるというものですね。


 結果ですが、夕食に並んだ新しい野菜は、みなさんから好評でした。

 そんなわけでして、無事にレチェ農園のラインナップにレタス、トマト、イチゴの三種が加わったのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
目がしいたけは前にも見たような…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ