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第41話 料理に足りないもの

 私の元にも、アマリス様とルーチェの入学試験の合格の報が届きます。

 それを聞いて、私たちはひと安心をしました。


「これで、ウィルソン公爵家の面目は保たれましたね。ルーチェまで落ちてしまっては、立つ瀬もありません」


「私も安心致しました。しかも、首席合格とは、さすがと思います」


 そう、私の妹であるルーチェは、魔法学園の入学試験を首席で合格したというらしいのです。さすが、私が勉強している横で一緒に勉強していただけのことはあります。

 ルーチェは私以上に努力家ですからね。当然といえば当然の結果でしょう。


「これは、何かお祝いを用意してあげなければなりませんね」


「そうでございますね。でも、何をご用意なさるのですか?」


「ふふっ、それは決まっているじゃないですか。なんのために今年、ここで土いじりをしていたと思っているのです?」


「失礼致しました」


 私が何を言いたいのか、イリスは直感したようですね。

 私の農園には、数少ないですが作物があります。これらを使った料理を差し入れるのです。

 一時的に家に戻ることにはなりますが、このくらいはいいでしょう。

 私が家を飛び出したとは言いましても、ルーチェは可愛い血のつながった妹ですからね。このくらいはしてあげないと、姉として失格だと思うのです。

 そんなわけですので、私は早速ノームにも手伝ってもらって、ルーチェやアマリス様のお祝いのための料理を作ることにしたのです。


 そんなこんなで半月の月日が流れてしまいました。

 いや、これほどまでに今の設備で料理を作るのが大変だとは思ってもみませんでした。

 簡単な料理ならいいのですが、手の込んだ料理ともなると圧倒的に設備が足りません。火力の調節が特に難しくて、保てなかったり強くなりすぎたりで生焼けになったり焦がしてしまったりで大変です。

 温度を一定に保てるオーブンは絶対必要です。システムキッチンが欲しいです。


「レチェ様、なんですか、そのシステ……なんとかって」


「えっ?!」


 いけませんね。どうやら言葉に出てしまったいたようです。

 この世界にだってかまどはあるんですが、火の入り方にムラができてしまいます。火は魔法で起こすとはいっても、燃やし続けるためには薪が要りますからね。

 全体的に均一に熱が伝わるオーブンは絶対欲しいところです。

 ですが、このままでは年が明けて学園が始まってしまいます。何とかしなければいけませんね。


「レチェ様。別に料理でなくてもいいのではないですか?」


 私を心配するイリスがそんなことを言ってきます。

 いけませんね。私は絶対料理がいいんですよ。

 農園を営みながら、採れたものを出す食堂というものがしてみたいんです。ですから、料理でなければいけないのです。


「スピード、街に行くわよ」


「ブフェ!」


「スター、イリスたちを手伝ってあげてね」


「ブェ!」


 二羽両方とも連れていくことはできません。なので、今回もスピードに乗って街へと向かいます。

 料理に使えそうな材料を買い出しに行くためです。

 先日、また薬草が生えていましたので、それを売ったのでお金はたくさんありますからね。多少の無駄遣いができるというものですよ。


 街で必要なものを買ってきましたので、早速料理に取り掛かろうと思います。

 ですが、やはりシステムキッチンが諦めきれません。


「そうよね。ないのなら作ってしまうしかないわね」


 今まではどうやって作っていたのかですって?

 屋敷の厨房を参考にしたものを再現していたんですよ。これまでの料理ならそれでまったく問題なかったですからね。火種は枯草や枯れ枝がありましたし。


「ラ・ギア・ルド」


 私は魔法を使って、厨房を拡張して前世のシステムキッチンを模したものを作り出します。コンロ、オーブン、シンクなどが一体となった便利なものですよ。

 それで、火種や水源をどうするかですけれど、これも前世知識を使います。

 魔物から採れる魔石といわれるものですが、現在ではほとんどが明かり取りにしか使っていません。魔法が使えるのなら、魔法で済ませてしまいますからね。

 そこで、商業ギルドからの紹介で冒険者ギルドにも顔を出して、薬草を売ったお金で魔石を買ってきました。


「他の異世界ものの受け売りですけれど、きっとうまくいきます」


「なんですか、異世界ものって」


「いちいち突っ込まないで下さい、イリス」


 本当に困りますね。畑で作業しているはずなのに、どうして近くにいるんですか。


「それはそうと、レチェ様、これは?」


「昼前に話をしていたシステムキッチンですよ。水場に火元、調理器具などの置き場が一か所に集まっていて、作業がしやすいんですよ」


「そうなのですね」


 私はコンロの中央や、蛇口の注ぎ口、オーブンの天板などに魔石を仕込んでいきます。さすがにコンロなどは熱くなるので、操作のために手元にも魔石を仕込みます。魔力がなじみやすいという魔力銀の糸でそれらを結ぶのも忘れません。

 あとは、余計なところに熱が伝わらないように、防護魔法をかけて対策をして準備完了です。


「さあ、試運転といきましょうかね」


 まずはコンロから順番に動作を確認していきます。うまくいって下さいね。

 今まで我慢していた便利な前世の道具たち。いよいよ異世界デビューですよ。

 コンロの真ん中の魔石とつながる手元の魔石に、私は魔力をそっと注いだのです。

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