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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第37話 ちょっと商業ギルドまで

 アマリス様が王都に戻られて、すっかり静かになってしまいました。

 ラッシュバードもスピードとスターの二羽だけになって、少し寂しそうです。……と思ったのですが、ノームが交代しながら構っているらしく、思ったよりも元気そうでした。

 そんな中ですが、畑は空いている部分と一部の畑を冬用の作物に入れ替えます。代表的なものは小麦で、冬と春の二種類がありますからね。

 それというのも、アマリス様が王都に戻られる時期と前後して、商業ギルドの方々が姿を見せなくなったからです。

 収穫時期は終わったということでしょうね。


「レチェ様、大丈夫なんですかね。一年中作物を育てていて」


「普通ならよくないでしょうが、私たちにはノームがいます。多少の無茶なら押し通せると思います」


 魔法の中には地力を回復させるものもあると聞きます。土の精霊であるノームであればおそらくお手の物でしょう。

 ノームに尋ねてみますと、「任せて」とだけ返事がありました。これまでの実績がありますから、信じて大丈夫だと思います。


 冬用に畑の作付けを変更し終えた私は、スピードを連れ出します。スターが暴れそうになりますが、ノームがなだめてくれて事なきを得ました。


「ごめんなさい、スター。今日は私は商業ギルドに確認に行かなくてはいけないの。だから、今日の間だけ、スピードを連れて行きます」


 私が首筋を撫でながら話をすると、スターは理解してくれたのか、ノームがなだめた以上におとなしくなりました。

 そうかと思うと、スピードと首を当て合っていました。挨拶なのでしょうかね。


「それでは、イリス、ギルバート。こちらのことをお願いします」


「はい、レチェ様もお気を付けて」


 私はスピードの背に乗り、近くの街の商業ギルドへ向けて出発しました。


 街に到着すると、ラッシュバードの背に乗って現れた私に門番が驚いています。

 門の前で一度止まり、背中から降りてギルド証を見せます。


「ああ、レチェさんか。噂には聞いていたが、本当にラッシュバードを手懐けたんだな。実際に見てみても信じられないよ」


「そうでしょうね。でも、この子たちはおとなしい子ですよ。ちょっとやきもちっぽいですけれどね」


 出かける前にスターが暴れた様子を思い出して、私はくすくすと笑ってしまいます。


「まぁ、冒険者ギルドでの登録もあるみたいだしな。それでも襲い掛かるやつはいるかもしれないから、気を付けてくれよ」


「ご忠告、ありがとうございます」


 無事に街の中へと通されましたので、私は再びスピードの背中に乗って街へと入っていきます。


 当然ですけれど、ラッシュバードの乗った姿は目立ちます。そこら中から視線を集めてしまっていますね。スピードの背中に乗って高い位置にいるというのも、拍車をかけてしまっているようです。

 しばらく歩いていると、商業ギルドに到着します。


「スピード、外で待っていて下さいね」


「ブフェ」


 なんとも言えない鳴き声ですよね、いつ聞いても。でも、きちんと返事をしてくれているようなので、私は外でスピードを待たせます。

 商業ギルドの中へと入ると、ミサエラさんが私を見つけて手招きをしていますね。見つけるの早くありませんか?


「レチェ様、お待ちしておりました。いつ来るか楽しみにしてましたよ」


「ようやく落ち着きましたのでね。売り上げの状況を確認しにやってきました」


「ですよね。まとめてありますから、奥へどうぞ」


 ミサエラさんは他の職員に席を譲って、私を商業ギルドの奥へと連れて行きます。

 それにしても、ミサエラさんって何者なのでしょうかね。他の職員の方が委縮しているように見えるのですけれど、受付というわけではなさそうです。

 気にはなりますが、詮索はよろしくありませんね。お聞きするのはやめておきましょう。


 そうしている間に、奥の部屋へとやってきます。

 私を椅子に座らせると、ミサエラさんは棚から帳簿を引っ張り出してきました。見た感じ、すごくまだ新しそうです。


「これは、レチェ様の帳簿ですよ。半年ほど前の薬草の件から、全部取引が記録されています。本日は作物の売上についてですよね?」


「は、はい。その通りです」


 言うまでもなく当てられてしまいました。


「えっとですね。全部で取引を行ったのは二十日ほどですね。これが売上でして、これが手数料、こちらがレチェ様の取り分となります」


 じっと見せてもらいましたが、ちょっと目を疑ってしまいましたね。


「あの……、ちょっと高くありませんかね?」


 街の中を散策した際に、屋台で売られている野菜などの値段は確認したことがあります。それと比べてみても、最大で半分程度は高くなっているのです。


「鑑定でしっかりと質を見させてもらったゆえの価格です。その結果を踏まえればこれくらいは当然でしょう」


「は、はあ……」


 なんとも信じられないですね。

 確かに、アマリス様も含めて大切に育ててきましたけれど、まさかここまでの高評価を頂けるとは……。

 おかげで、貯蓄の額が大きくなっています。


「開業初年度ですので、税金は納めなくてもいいです。来年からは年間総売上の三割が公爵様への税金として自動的に納められますので、ご注意下さいね」


「わ、分かりました」


 三割でいいのですね、お父様。

 自分の売上額を見て、ちょっと怖くなってしまいました。

 初年度は免税されているというのも驚きです。よくこれで、ウィルソン公爵家は成り立ってきたものですね。

 ここで知ったのは、私は公爵領の仕組みをあまりにも知らなかったことです。

 せっかく商業ギルドに来たことですし、私はミサエラさんに詳しく聞くことにします。


 ところが、その時でした。


「ブフェッ!!」


 スピードの大きな鳴き声が聞こえてきたのです。

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