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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第33話 収穫の季節

 そうこうしている間に、畑の作物が実りの時期を迎えました。

 ノームとアクエリアスの恩恵があったために、思ったよりも早く収穫を迎えてしまいましたね。

 アマリス様が王都に戻られるよりも先に収穫を迎えられるということで、アマリス様の心残りを作らずに済みそうです。


「もう収穫なんですか」


「はい、ノームに確認してみても大丈夫だそうですので、明日にでも商業ギルドの方をお招きして見て頂きましょう」


 私とアマリス様は話をしまして、ギルバートに商業ギルドに向かってもらいます。そうすれば、明日の昼前には到着されるでしょうから、その時に査定をして頂くことが可能になるはずです。

 ギルバードにしっかりと説明をしますと、ちゃんと理解してくれたようですね。いい返事をして馬を走らせていました。

 こうして商業ギルドにギルバートを向かわせた私は、イリスと話をします。ハンナはアマリス様の勉強を見てらっしゃいますので、邪魔は致しません。


「イリス、ラッシュバードのことはさすがにもう隠せませんわよね?」


「そうでございますね。今まで隠し通せたことの方がおかしいとは思いますけれどね。あの子たちが聞き分けがいいからできただけでございますし」


「ですよね。さすがに今回は話さざるをえませんね。アマリス様はどうしてもフォレとラニの二羽は連れて帰るおつもりのようですし、王家にも知れ渡ることになります」


 私は両腕を組んで頭を悩ませています。

 初めて収穫する作物のこともですけれど、ラッシュバードたちのこともいよいよかと思うと気が休まりません。

 あの子たちはとても可愛いのですが、世間一般ではとっつきにくい魔物のイメージで通っていますからね。

 私とアマリス様を通じて、イリスたちには懐いておりますが、王都の中ではそうもいかないとは思います。アクエリアスもいらっしゃいますが、不安は尽きません。


「レチェ様、それはそれでまた別の心配でございます。今は明日をうまく乗り切ることを考えましょう」


「はっ、そうでしたね。えっと、今出荷できる品目は何でしたっけか」


「はい。小麦、キャベツ、トマト、ピーマンといったところでしょうか」


 イリスが答えてくれましたので、私は言われた野菜から作れそうなものを思い浮かべます。


「ふむふむ、でしたら、ちょっと料理をしてみましょうか。同じものを自分たち用の畑でも作っていますし、ギルバートの狩ってきた魔物の肉もありましたよね」


「はい、確かにございます。ですが、一体何をおつくりになるおつもりですか」


「それはでき上がってからのお楽しみです。さあ、ギルバートが戻ってくるまでに夕食の支度を済ませてしまいますよ」


「畏まりました」


 ウィンクしながら笑う私の姿に、イリスは少々不安を覚えたみたいですね。

 ですけれど、この組み合わせなら、前世で知るあの料理が作れそうです。洗い物は少し大変かもしれませんが、水魔法がありますから問題ありませんね。

 私は張り切って夕食の支度にかかりました。


 夕食の時間を前にして、ギルバートが戻ってきます。


「ただいま戻りました、レチェ様」


「ギルバート、お帰りなさい。商業ギルドの返事はなんと?」


「はい、明日訪問するとの約束を取り付けました。ミサエラ殿が来られるそうです」


 きちんと約束ができたようですね。

 ミサエラさんは私たちの専属といっていいくらいの方です。あの方がいらっしゃるのなら、安心ができるというものですね。


「それはそうとレチェ様。なんですか、このにおいは」


 話を終えたギルバートが鼻をひくつかせています。こんなところにいてもかぎつけるだなんて、すごいですよね。


「ふふっ、夕食の支度をしていました。もう完成しますので、手洗いとうがいをして食堂までお越し下さいませ」


「へーい……」


 手洗いとうがいは、私が義務付けた習慣です。少数精鋭の大敵は病気ですからね。自分たちと農園を守るためですから、面倒でも我慢して下さいね。

 こういう似非中世の世界では衛生に無頓着です。ですが、アマリス様も入学試験を控えた時期ですから、徹底的にして頂きます。

 面倒くさがっていたギルバートですが、私の作った料理を見たら、一気に死んだような顔から生き返りましたね。


「なんですか、これは」


「何でしょうか、真っ赤なスープの中にキャベツでしょうかね」


 ギルバートもアマリス様も、見慣れない食べ物に興味津々です。


「これはロールキャベツと言いまして、肉などの塊をキャベツの葉で巻いて煮込んだ料理です。真っ赤なのはトマトですね」


「へえ、これはすごい。レチェ様のお料理は、いつ見ても不思議ですね」


 褒めてるのかけなしているのか中途半端な感想ですね、ギルバート。もう少し、食レポを学んで下さいな。


「さあ、温かいうちに食べてしまいましょう。これは明日の商業ギルドにもお出しする予定の料理ですからね」


「しょ、承知致しました」


「はい、お姉様。お任せ下さい。ハンナもお願いしますよ」


「畏まりました、姫様」


 この日の食卓は、いつにもなく賑やかな食卓となりました。

 まったく、不慣れながらにも食レポをして下さってまして、おかしくてつい笑ってしまいます。

 お世辞も入っているのでしょうけれど、概ねは好評といったところでしょうか。これならば、明日の視察もうまく乗り切れそうですね。


 私レチェが手掛ける農園の一年目の成果が試される時が来ました。

 今夜は緊張でうまく眠れそうにないかもしれませんね。

 ですが、アマリス様たちがおいしそうに食べている姿を思い出すと、不思議と気持ちが落ち着いてきました。

 アマリス様たちのおかげで、どうにか眠れそうです。

 では、お休みなさいませ。

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