第32話 学習能力
畑へとやって来た私は、作業をしているギルバートを見つけます。近くにはスピードとスターもいますね。
なにやらスピードとスターは地面を突いています。何をしているのでしょうか。
「あっ、レチェ様。こいつらすごいですぜ」
私を見つけたギルバートが興奮気味に声をかけてきます。一体何があったのでしょうか。気になりますね。
「どうしたのですか、ギルバート」
フォレとラニを引き連れながら、私はギルバートに近付いていきます。
現場を見てみると近くには、引き抜かれた雑草が大量に積み上がっていました。ますます状況が分かりません。
「いやあ、ラッシュバードって頭が悪いと聞いてましたが、こいつらときたらそうでもないんですよ」
「どういうことですか?」
ギルバートの話す内容がいまいち分からないので、私は詳細を確認します。
詳しい話を聞いてみれば、ギルバートは畑の雑草の処理をしていたいそうです。
そこへ、スピードとスターの2羽がやって来たそうです。
最初は邪険にしていたそうですが、ギルバートが雑草を抜いている姿を見て、真似して雑草を引っこ抜き始めたそうです。
その結果が、この山盛りの雑草というわけですね。
よく見ると、畑に植わっている野菜にはまったく口をつけていません。つまり、ギルバートが引っこ抜いていた雑草だけを、真似してくちばしで引っこ抜いたようです。
「まあ、えらいですね、あなたたち」
私がスピードとスターの首を優しく手で触れると、二羽とも頭を私にすり寄せてきました。本当に可愛いかぎりですね。
それにしても、頭はあまりよろしくないとは伺っていましたが、本当にこのようなことはあるのでしょうかね。
近くにいたノームに聞いてみます。
『僕たちも初めて聞くよ。多分、主たちの眷属になったからじゃないかな』
「私たちの眷属になったから、ですか?」
ノームたちの話によれば、眷属化させると主の影響を受けるようになるそうですね。
粗暴な魔物でもおとなしくなったり、ラッシュバードたちのように頭がよくなったり、新たな能力を取得することもあるのだとか。
不思議なこともあるものです。
『多分、王女様の方のラッシュバードたちも頭がよくなってると思うよ~。でも、こういうのは僕らでも噂程度にしか聞いたことないから、真相はよく分からない~』
なんとものんきなノームたちですね。
でも、目の前のラッシュバードたちを見ていたら、納得はできますね。
納得した様子で眺めていますと、ラッシュバードたちは引っこ抜いた雑草を突き始めました。今度は何を始めたのでしょうかね。
じっと見つめていますと、うぞうぞと動くものが見えます。
『みみずだね、あれは』
私の視線に気が付いたらしくて、ノームが説明を加えていました。
『なるほど、食事をしているみたいだね。雑草を抜けば主たちが喜ぶし、自分たちの餌も見つかる。どうやら覚えたみたいだね』
「頭よくて可愛いですね。ますます気に入ってしまいました」
食事をするラッシュバードたちを眺めながら、私はにこにこと笑顔を浮かべていました。
フォレとラニも加わって、四羽で仲良く食事をしています。
ああ、スマホでもあれば写真に撮ったんですけれど、ここにはないんですよね。どうにかして残せないでしょうかね。
余裕があったら、前世の便利道具を再現しましょうかね。
次なる目標ができたので、私も夕食までの間、畑作業に勤しみましょう。
私もノームたちを連れて、あちこちの畑に水をやったり生育状況を確認したりと、せわしく動いたのでした。
夜のこと、ラッシュバードたちを鳥小屋へとおとなしく移動させた私たちは、食事の前にお風呂で体をきれいにしておきます。
何度見ても、アマリス様の肌も髪もきれいです。
ここで畑作業をしながら、入学試験の勉強も頑張ってらっしゃるとは思えないくらいです。一年違うだけでこんなにきれいなものなのですかね。
「お姉様、どうなさったのですか?」
「お、いえ。アマリス様はさすがにおきれいだなと思いまして」
「もう、お姉様ってば。お姉様だってきれいですよ」
何か変なことを言ってしまいましたかね。
アマリス様はおかしそうに笑いながら、私のことを褒めて下さいます。
なんでしょうか。不思議とむずがゆくなってしまいますね。やっぱり、学園の入学試験に落ちたことで少し自虐が増してしまったからでしょうかね。
「ありがとうございます。これだけ私のことを慕って下さる方が、学園に無事入学できるように、微力ながらお力添えをさせていただきたく存じます」
「はい、よろしくお願いしますね、お姉様」
本当にアマリス様はよいお方です。
入学試験に落ちた身であるだけに、なんとも身に余る光栄だと思います。
ラッシュバードの一件もいよいよ落ち着いてきました。
畑のことはギルバートやノームたちに任せて、アマリス様のために勉強をしっかりと見ることにしましょう。
「お姉様?」
「なんでもありませんよ。それでは、そろそろ上がって夕食に致しましょうね」
「はい、お姉様」
嬉しそうに微笑むアマリス様です。
この笑顔、本当に守って差し上げたいです。




