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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第189話 トラブルなく終わってくれませんか?

 いよいよ、商会の建物が完成しました。場所の関係でそれほど大きな建物ではありませんが、いよいよ活動拠点が完成したのです。


「できましたね、レチェ様」


「ええ、イリス」


「では、農園の方は支所という形になるのでしょうかね」


「そうなりますかね」


 イリスに指摘されて、私は思い出しました。

 最初の拠点というのなら、あちらに商会を建ててもよかったのではないかと。

 ですが、こちらですと商業ギルドにすぐに顔を出せますので、メリットとしてはそちらの方が大きいですね。何かあればラッシュバードで向かえばいいだけですし。

 なんだか面倒ですから、考えるのはやめましょう。

 商会の建物を建ててしまった以上、こちらが本拠地でいいんです。


 建物が完成したのなら、次は内装です。

 建設中からすでに商業ギルドには相談を持ち掛けていましたので、早いものならもうでき上がっているかと思います。

 ですが、建物が完成しても内装の工事が始まる様子はありません。私はイリスに大工さんたちを労うように指示を出しますと、すぐさま商業ギルドに向かいました。


 商業ギルドに到着しますと、いつものようにミサエラさんが出迎えてくれます。

 そこで、私はミサエラさんに内装工事の進捗を確認します。


「必要な内装品の製造が遅れているみたいですね」


「なんでですか?!」


 私はミサエラさんを問い詰めます。


「なんでも、必要な木材が手に入らないとかで、製造が進まないそうです」


 なんてことなのでしょうか。これでは建物ができというのに営業が始められないではないですか。どうしてこんなことになったのでしょう。


「心配をおかけしたくないので黙っておりましたが、こうなると代替材料でどうにかするしかしませんね」


「どうしてそうしなかったのでしょうか」


「レチェさんだからですよ」


「私だから?」


 ミサエラさんの言葉が、ちょっと理解できません。一体どういうことなのでしょうか。


「レチェさんが、公爵令嬢レイチェル・ウィルソンであることは、すでにこの街では周知のことです。ですので、その格に見合った家財道具を作らねばということで、職人の方々が素材にこだわっているのです」


「なるほど、そういうことですか」


 ミサエラさんと話をしていた私は、立ち上がります。


「レチェさん?」


「どこですか、その木材の場所は。私のために頑張って下さるというのでしたら、私がその問題を解決します」


 私は決意のこもった目をしてミサエラさんを見ます。

 しばらくすると、ミサエラさんは参ったような顔をして私に話をしてきます。


「このお店に行って下さい。詳しいお話は、そちらから伺って下さいね」


「分かりました。それでは、早速向かいます」


 私は話を終えると、木材のことで困っているというお店に向かいました。


 念のために一度鳥小屋まで向かい、ラッシュバードに乗って私は問題のお店までやってきました。

 外から見た感じ、かなり大きなお店で老舗っぽい雰囲気を持ったお店でした。


「ごめん下さいませ」


 乗ってきたスピードを外に待たせて、私はお店の中へと入っていきます。


「こ、これはレチェ様。本日はどのようなご用件でしょうか」


 私が中に入りますと、支配人らしき男性が対応をしてきました。


「ミサエラさんより、事情はお聞きしました。必要な木材が手に入らないとかで困っているそうですね」


「はい、その通りなのです。レチェ様の商会で使うものですゆえ、最高級のものをと考えていたのですが、木材が入手できる場所で魔物が出現したという情報が入りましてね。冒険者ギルドにも依頼は出したのですが、解決に至っていないのですよ」


 なんともまあ、これでは確かに普通の方では対処できない話ですね。

 ですが、事情をお伺いすると、これは私が直接行った方がよさそうですね。だって、私のためにいいものを作って下さろうとしているんですもの。その思いに報いなくて、何が貴族というのでしょうか。

 私は、すぐさま場所の確認をします。


「これは、精霊の国の入口付近ではないですか」


「そうなのですか? 今まではこんなことはなかったのですが、どうして今年に限ってこんなことになっているのでしょうか」


 お店の方も戸惑っていらっしゃるようですね。私もわけが分かりません。

 マリナさんの一件を済ませた後に、こんなトラブルが起きるとか、ゲームでもないことです。ですので、私にもまったく事情が分かりません。

 ですが、これは精霊の国でも何かが起きている可能性があります。

 私はお店を飛び出ると、すぐさま精霊の国の入口のある場所に単身向かいます。


「れ、レチェ様!?」


「大丈夫です。私がなんとかしてみせますから!」


 私はスピードにまたがり、急いで問題の場所へと向かっていきます。


「スピード、頼みますよ」


「ブェフェーッ!」


 任せろと言わんばかりに大きな声でスピードが鳴いています。

 私の行きたいところを理解しているようでして、何も言わずともスピードは精霊の国の入口の方向に向けて疾走していきます。

 一体何が起きているというのでしょうか。

 私はスピードと一緒に問題の現場へと急行したのでした。

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