表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

171/198

第171話 勝負の百五十

 私は久しぶりの公爵邸だというのに、まったく落ち着けません。

 それというのも、一週間で魔法かばん五十と、男女別の水着五十の注文を受けたからです。せめてデザインでもあれば違いますのに、水着だけ作れと言われても困ったものですよ。


「お姉様」


 部屋で悩む私のところに、ルーチェがやってきました。


「どうしたのですか、ルーチェ」


 私は腕を組んで悩んでいた顔を上げて、ルーチェの方を見ます。


「大丈夫ですか、お姉様。大分、思い詰めてらっしゃるみたいですけれど」


「ええ、大丈夫ですよ。数自体は無茶ではありませんが、問題は水着のデザインなのですよね。シンプルな柄なしでいいとは思うのですが、どのような服装にすればいいのか分かりませんのでね。せめて用途でも分かればいいのですが……」


 ルーチェの疑問に、私はこう答えておいておきます。

 そう、魔法かばんも水着も、上級魔法を付与するとはいっても労力はしれているんです。本当に問題なのはデザインだけなんですよ。


「私もよくは分かりませんので、お父様にお聞きになられてはいかがでしょうか。国王陛下がどういった意図で注文を出されたのか、お父様ならきっと知っていらっしゃると思います」


「……そうですね。そう致しましょうか。なにせ水着は前例のない代物です。私が作ったものがこの世界の標準となるでしょうから、下手なものは作れませんからね」


 そんなわけでして、私はルーチェの提案に従って、お父様のところへと向かいます。


 部屋をノックいたしますと、お父様はすんなりと通して下さいました。

 こうやって面と向かって話をするのは、一体いつ以来でしょうかね。


「なんだ、レイチェル。私に質問でもあるのか?」


「はい、お父様」


 なんとも不機嫌そうな顔ですね。私がそれだけのことをしたゆえなのでしょうが、さすがに邪険にされたような表情はこたえますね。


「国王陛下の出された注文ですね」


「ふむ、質問を聞こうか」


 お父様が私と話すになっていらっしゃいます。なので、私はすぐに話を始めます。


「水着についてデザインの指定がなかったのです。国王陛下からの注文ということは、用途に想像はつくのですが、やはり具体的なデザインのイメージを確保するには、しっかりとした情報が必要と思いまして。それで、お父様を頼った次第です」


 私はしっかりと理由を話します。

 少し邪険にしていたお父様ですが、私の話を聞いて、ちょっと考え込んでいらっしゃるようです。

 しばらく考えていらっしゃったお父様ですけれど、何か思い当たったらしく顔を上げます。


「やはり、騎士団だろうかな」


「お父様もそうお考えですか?」


 ルーチェが反応します。やっぱりルーチェも同じことを考えていたのですね。

 ですが、騎士団だとしても疑問が残ります。


「数が同数っていうことが気になりますね。騎士団は圧倒的に男性の職場です。騎士団に配るのであれば、数を同じにする必要はないでしょうから」


「そこまではさすがに私も分からん。ひとまずはそれを前提としてイメージしたものを作ればいいのではないかな?」


 残っている疑問を口にしますと、お父様からはそう返ってきました。

 そうですね。騎士団が使うという前提でイメージすればいいですわよね。

 納得のいった私は、お父様にお礼を言いまして、部屋を去ろうとします。


「まあ、待て」


 ところが、私はお父様の呼び止められてしまいます」


「ここで改めて、魔法かばんの作製を実演してくれないか?」


「は、はあ。よろしいですけれど」


 どうせ納品のための材料は明日にならなければ屋敷に届きません。今頃商業ギルドが必死にものをかき集めているはずです。

 なので、公爵家の中で余っている布を使って作ることにします。


「ラ・ギア・ソー」


 私は普通にかばんを作り上げます。

 魔法があれば、端切れであってもきちんとした形になります。


「城でも見たが、かなりでたらめな魔法だな。あの不揃いにもほどがあるという切れ端から、どうしてこんなきれいなかばんができるのか」


「イメージでどうとでもなりますよ」


「まったく……。まさに魔法といった感じだな」


 そう言っていたかと思いきや、お父様はルーチェを見ます。


「どうだ。ルーチェもできそうかな?」


「わ、私ですか?!」


 突然のことにルーチェは驚いています。ですが、私の顔をじっと見たかと思えば、なんとなくですが気合いを入れていました。

 ルーチェの前に、私と同じように端切れが運ばれてきました。


「かばんをイメージ、かばんをイメージ……」


 ルーチェが私の真似をしようとして、かばんをしっかりと頭に思い浮かべています。


「ラ・ギア・ソー!」


 ルーチェが魔法を発動させると、端切れが光って形が変わっていきます。

 ですが、光が消えて出来上がったのは、私の作ったものの半部くらいの大きさのかばんでした。しかも、かなりつぎはぎです。


「ああ、お姉様のようには参りませんね」


 ルーチェは悔しそうですが、初めての割にはできた方だと思いますよ。


「ルーチェ。ちゃんとかばんの形になっているだけでもすごいですよ。最初は制御できずに形にもなりませんから。さすが、私の妹です」


「えへへへ。ありがとうございます、お姉様」


 私がフォローを入れますと、ルーチェはとても嬉しそうですね。

 話も終わりまして、これで私たちは部屋に戻っていきます。

 夕食までの間、私はとにかく水着のデザインに時間をかけました。イメージを確実にさせるために、わざわざデザイン画まで描きましたよ。

 本番は王家から届けられる布が手に入ってからです。

 私はとにかく気合いを入れ、しっかり実行できるようにと早めに休むことにしたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ