表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

159/196

第159話 お魚料理です

 マソルの街の中に戻ってきた私は、宿に戻ります。


「すみません。厨房をお貸し願えますでしょうか」


「なんだい、料理でもするのかい?」


 宿のおかみさんに尋ねられます。私は「はい」と答えておきます。

 そんなわけでして、私はアマリス様とルーチェの目の前で料理を始めることにします。


「お姉様、何をお作りになられるのですか?」


「それは内緒ですよ。二人は黙って見ていて下さいな」


 私は二人が見守る中、料理を始めます。

 かばんの中から先程購入してきた魚をまずは一匹取り出します。

 土魔法でボウルを作り、その中に水魔法で水を張ります。さっき作った塩を溶かして、一度魚を洗います。

 腹を開いてわたを取り出し、三枚におろしてもう一度塩水で洗います。


「お姉様、こんなことができたのですか?」


「ええ、食堂を経営するにあたって、いろいろできるように頑張りましたからね」


 ルーチェに聞かれて、私はとっさにそう答えてしまいます。

 ですが、こればかりは嘘です。前世の経験です。小さい頃から家の手伝いはしてきましたから、ひと通りの調理はできるんですよね、私。

 今やっている魚の三枚おろしも、一体どのくらいしてきたでしょうか。転生しても体がしっかりと覚えていました。


「おやおや、お嬢ちゃん。魚の扱いに慣れているね」


「え、ええ。私、今食堂を経営しているんです。ですので、どんな料理でも作れるようにとあれこれ挑戦しているんですよね」


 おかみさんがやって来て話し掛けてきたので、私はびっくりしてしまいました。

 ですが、包丁を扱っている今、下手に動揺したらケガをします。びっくりはしましたが、どうにか落ち着いて対応しています。

 落ち着きを取り戻した私は、調理に戻ります。

 ルーチェに頼んで、かばんからワインビネガーを取り出してもらいます。


「どうされるんですか。これって、ワインの出来損ないですよね?」


「まあ、見ていて下さい」


 そういえば、ルーチェは知らないんでしたっけかね。だったら、どう使うのか見せてあげましょう。

 土魔法で平たいバットを作り出し、そこにワインビネガーを流し込みます。さすがに元々ワインですから、そういった香りが広がります。

 そこに、三枚におろした魚の身をさらに小さく切り分けながら漬け込んでいきます。魚の酢じめですね。

 程よい状態になるには少し時間がかかりますので、その間に別の料理を作りましょう。

 同じように三枚におろした魚を複数用意します。今度は小麦粉をまぶして、油を引いた平鍋に入れて焼きます。


「おやおや、見たことのない調理法だね」


 宿のおかみさんもこんな感じですね。普段はどういった料理を作ってらっしゃるのでしょうか。

 気にはなりますけれど、今はとにかく自分の作っている料理に集中します。

 魚は意外と焦げ付きやすいですので、慎重に私は魚の焼け具合をチェックします。


「さあ、できましたよ。これでお昼にしましょう」


「さあ、お姉様の手料理です」


「期待しちゃいますね」


 アマリス様もルーチェも、この上ない喜びようです。

 ですが、私にはまだ不安があるのですよね。

 何かというと、組み合わるパンとの相性です。

 実はかばんの中には、食堂でいつも出しているパンが何個か入っているんですよ。満足したパンが手に入るか不安でしたので、持ってきているんですよね。

 ですが、ここは一応おかみさんにも確認を取りましょう。


「パンかい? それなら斜め向かいの店が売ってるから、そこで買ってくるといいだろう。うちで焼くパンは朝と夕の二回だけだよ」


 やっぱりダメでした。自力で用意しなければいけないようですね。

 料理を作ってしまった今、時間的にもパン屋さんで買ってくる間に料理は冷めてしまいます。

 やむを得ないので、食堂から持ってきたパンを出して食べることにしました。


 食堂へと移動します。さすがに厨房で食べるわけにはいきませんからね。

 調理に使った器具は、そのままおかみさんにプレゼントしました。使わさせていただいたお礼です。

 食堂のテーブルの上には、私の食堂で出しているふんわりパンと、酢じめの魚と、小麦をつけて焼いた魚が置いてあります。組み合わせ的にどうかと思うかもしれませんが、作ってしまった以上は仕方ないです。

 ナイフとフォークをお借りしまして、いざ実食です。


 緊張の一瞬ですね。


 私がまず率先して食べることにします。

 酢じめの魚は、ワインビネガーの香りが漂います。うっかりすると酔いそうですね。

 程よくにおいも取れて、臭みはない感じです。

 ぱくりと口に入れてみますと、なんだか懐かしい気持ちになりました。

 焼き魚の方も小麦粉がいい感じに衣となっていて、中までしっかりと火が通っていました。


「これが魚料理ですか」


「お姉様が作られたのですから、やっぱりおいしいですね」


 意外とお二人の口に合ったようですね。こう言っていただけると、私も嬉しいかぎりです。

 これなら、食堂で新たに出してみてもいいかもしれませんね。

 二人の笑顔に癒されながら、私はお昼ごはんをしっかりと平らげたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ