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ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします  作者: 未羊


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第146話 ひずみに関するお話です

 どうやら、話さないことには私は解放してもらえないようです。見て下さいよ、あの精霊王様の眼光。なんですかね、恨みでもあるような酷い眼差しです。

 前世で遊んでゲームということは秘密にしながら、夢の中で見たということにしておきましょう。

 頼みますから、精霊王様もそれで話を合わせて下さるといいのですがね。前世の話なんて、気が触れたとでも思われかねませんからね。予知夢みたいなものの方がいいでしょう。

 精霊王様、鼻で笑わないで下さい。

 私は頭を押さえてしまいます。


「……ここから話す話は、夢で見たことになります」


 覚悟を決めた私は、精霊界に現れたひずみについて話すことにしました。

 全部、知識の大本は前世のゲームです。それを夢に見たことにして話を進めてまいります。


「というわけでして、思い出すことが遅くなって、このようなことになってしまったのです。あのまま放っておけば、魔王は出現しなくても、強力な魔物が暴れていた可能性はあります」


 ともかく、私が忘れていたのが原因ですので、そこは踏まえて謝罪をします。


「あのひずみは、魔王復活の兆しだったのか……」


「よかったですわ。開き切らないうちに消すことができまして」


 アンドリュー殿下とアマリス様がほっとした表情をしていらっしゃいます。

 ですけれど、今まで話したところで納得のできていないところもたくさんあるでしょう。ここからは、私の推測になります。


「ですが、夢に見たこととかなり違ったところがございました」


「それは何かな?」


 私が続きを話せば、アンドリュー殿下が尋ねてきます。


「はい、ひずみの大きさですね」


「あれでも結構大きくなっていましたのに……。本来ならどの程度の大きさになっていたのですか、お姉様」


 アマリス様が心配そうな顔で迫ってきます。


「あの倍くらいにはなっていたはずです。魔王復活までもう少しというくらいに、大きくなっていたかと」


「なんだって?!」


 耳をつんざくような大きな声で騒いでいるのは、ひずみを一刀両断したワイルズです。うるさいですよ。説明中ですから静かにして下さい。

 私が耳を塞いでいますと、精霊王様から質問が飛んできます。


「ほう……。では、なにゆえ大きくならなかったというのかな?」


「はい。おそらくは魔王の器となる人物に変化があったと思われます。あのひずみは、負の感情を吸い取って大きくなるという話でした。その負の感情が供給されなくなったので、別の方法でひずみを大きくしようとしたのでしょう」


「して、その負の感情の供給元とは、一体誰なのかな?」


 間髪入れずに質問が飛んできます。

 そこで、私は立ち上がって、部屋の中にいるとある人物の後ろに回ります。


「ウィルくん。この子こそが魔王の器の人物です」


「えっ?」


 私に名指しされたウィルくんが、表情を引きつらせて黙り込んでしまいました。それもそうでしょうね。魔王の器とかいわれて、誰が信じられるかというのです。

 でも、私には確信があります。


「ひとつは、夢の中で聞いた魔王の名前です。ウィルトナーと名乗っていました」


「ふむ、名前に共通点があるな」


 みなさん、頷いています。


「それと、彼は父親を失い、母親と弟も病気で亡くしそうになっていました。そして、この街の薄汚れた暗がりの場所で暮らしていました。器となるには、十分な条件が揃っていたのです」


「なるほど。そんな彼をレイチェルが救い出してしまったから、負の感情が供給されずに、ひずみが小さくなったというわけか」


「はい、その通りでございます」


「さすがですわ、お姉様」


 アンドリュー殿下は感心していますが、アマリス様は手放しで喜んできます。


「その後は、彼と接触を持った私たちの魔法に反応して、ひずみに魔力だけが蓄えられていったのでしょう。それなら、ひずみが大きくなったことや、力を蓄えていたことの理由としては十分です」


「ふむ。どうなのだ、マサよ。小娘の魔法を使った時と、ひずみの変化が起きた時期にずれはないか?」


「いえ、一致していますね」


「だそうだ」


 はぁ~……。やっぱり私のせいですか。

 なんでしょうかね、この罪悪感は……。ど忘れ以外にもいろいろとやらかしたせいでしょうかね。まったく、私ってポンコツすぎませんかね。

 ですけれど、他にもまだ解決していないことがあります。


「そういえば、ワイルズ様の一撃でひずみが消し飛んだ理由、あれだけは分かりませんね。精霊王様はご存じでいらっしゃいますか?」


 そう。ワイルズが一撃でひずみを消してしまったことです。

 彼がゲームの主人公というだけです。主人公だからできたなんて、そんな理由、現実世界で通用するわけがありませんからね。


「ああ、それは単純だ。魔力を調べてみてわかったよ。彼は、魔王を封印した人物の子孫だ」


「……はい?」


 精霊王様がしれっとした表情で伝えてきた言葉に、私たちはそろいもそろって絶句してしまいます。

 なんと、ワイルズはかつて魔王を封印したという人物の子孫だったのです。

 そんな偶然ってあるんですかね?!

 私はただただ、表情を引きつらせて驚くばかりですよ。

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