どうやら私は仲間らしい
2025年6月1日
脚本の都合上修正を加えました。
ああ、そういうことか。まあドラム云々という話が出てきた時点で音楽関連の話なんだろうというのは察していたけど、まさか新しいバンドに入って欲しいという誘いとは…
「申し訳ないんですけど、私もうバンドやるつもりないので、他を当たってくれませんか?」
当然だが私は断った。正直、もうバンドのことは忘れ去りたいくらいだった。
「そう…なんだ。でも私、あなたのドラムやらないなら演奏したくないんだよね」
「そう言われても…無理なものは無理でして」
そこまで言われるとは、バンドマンには変人が多いとはよく聞くけれど流石にこの子は変人ってレベルを超えている。さて、どう言えば引き取ってもらえるだろうか。職員室に行って助け求めてもらうか、うーん…
「まあまあ、騙されたと思って一回ライブハウス行こ」
愛さんが私の腕を無理矢理掴む。まあ特段予定がある訳でもないし、向こうでまた断れば流石に諦めがつくだろうと考えて、私は下北沢へ行くことにした。
久しぶりの下北沢。2回ライブで訪れて以来だ。相変わらず工事みたいな柵がある。
ライブハウスDreamに着くと、愛さんのバンドメンバーである青木唯さんと、クラスメイトの岸田さんの姿がそこにはあった。
私たちは椅子に座り、自己紹介し合った。
岩下愛。担当はギターボーカル。親戚にバンドをやっている人がいるらしいのだが、別にその人に憧れてギターを始めたわけではないらしい。
青木唯。ベース担当。コミュ障という程ではないが、あまり大勢と何かするのは好きではないらしい(バンドは別物)。気づいたらベースを握っていたとの事だった。
岸田綾乃。この子はバンドメンバーではないが私のドラムに興味があるらしく今回同行している。自己紹介では痛い人に見えたが、実は普段はああいうキャラではなく割と大人しいらしい(自称)。
そして私、星野マグワイア。日本人の父とイギリス人の母の間に生まれたハーフだが、物心つかないうちに母は亡くなり、お父さんに育てられたという話、ドラマーとしてデビューするまでの話、そして父が事故に遭ってからの話をした。
「そんなことがあったんだ…本当に辛い中よく頑張ったね」
みんなが私の境遇に同情してくれた。
「皆さん、ありがとう……」
「いいんだよ…えっと」
「あ、星野ちゃんかマグでいいよ」
「じゃあマグちゃん。そのくらいやって当然でしょ?これから仲間なるんだから」
仲間…か。別にそんなつもりはないのに…
「こいつ、入る気あんのか?」
ドキッ
唯さんに心を見透かされていた。
「こーら、マグちゃんをおどろかせちゃだめじゃない。めっ」
岸田さんが唯さんの頭を軽く叩いた。
「だって、嫌そうだったから」
「まあまあ、そりゃあれだけのことあったら…ねぇ。まあとりあえず、私たちの演奏見てから決めたら?」
「…うん」