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Girls Band Stars!  作者: 宮島485
White stars結成編
1/11

一緒にバンドやって欲しいらしい


挿絵(By みてみん)

ライブ演奏を終え、ライブハウスの上に建てられたビルの屋上で、私星野マグワイアは一人きりで夜空を見上げていた。


「マグちゃん」


屋上の入口から声がする。優しくもどこかかっこよさのあるその声の主は、私が所属するバンドwhite Starsのリーダーであり、ギターボーカルの岩下愛(いわしためぐみ)ちゃんだ。


「どうしたの愛ちゃん」


「いや、改めてお礼が言いたくて」


「どうして?」


私は首を傾げる


「だってマグちゃん、すごく頑張ってくれたからさ…」


「そうかな」


「うん、その姿見たらなんか改めて申し訳なくなっちゃってね...」


愛ちゃんらしくない表情で私に言った。


「え?」


私は困惑した。


「だってほら...マグちゃんが私のバンドに入ったのって、半ば無理矢理な感じだったじゃない?だからさ...」


確かに傍から見ればそう見えるのかもしれない。







私は日本人のお父さんとイギリス人のお母さんの間に生まれた所謂ハーフと呼ばれる子どもだった。私自身は幸いにも元気な子だったのだが、お母さんは病弱で、私が物心つかないうちに亡くなってしまった。それからはお父さんの手一つで何不自由ないように育てられた。しかしその代わり、お父さんは夜遅くまで帰ってこれない日が多かったため、家に帰るまではお父さんの昔馴染みの知り合いの叔父さんが私の面倒を見てくれた。その人はライブハウスの店長をしており、お父さんがいない時はライブハウスに居た。


そんなある日のことだった。店長の叔父さんが留守になり、私はとあるバンドのお姉さん達に預けられることがあった。


「叩いてみる?」








そこで、私はドラムと出会った。







そこから私は叔父さんのライブハウスで、毎日ドラムの練習をするようになった。そして中学に上がると、私は古上夕夏、中村ゆり、安武明音という三人組と出会い、彼女たちとバンドを組むことになった。このバンドはギターボーカルの古上さん、ベースの中村さん、キーボードの安武さん、そして私のドラムで編成されていた。古上さんは少し厳しめな人で、ミスに対しては結構詰めてくる人だったけれど、これも大成するためと私は頑張りました。そのおかげなのか、中二の終わりごろにはかなりの人気バンドになり、私たちは学校の人気者となった。そしてそんな私をお父さんは誇りに思っていてくれて、本当に幸せだった。




…そうここまでは





中三になり状況が一変。





私のお父さんが事故に遭った。





過労で疲れ果ててしまっていたお父さんは、注意力が散漫になってしまっていたのか、車が来てることを確認せず誤って横断歩道を渡ってしまい、はねられた。その連絡を聞いた私は大急ぎで都内の病院に向かった。幸い一命はとりとめたのだけれど、父は昏睡状態になってしまった。


大きなショックを受けた私は、バンドの練習に行けなくなった。




そこからは一人で過ごすようになった。放課後は、誰もいない家に帰るか、父の入院している病院にお見舞いへ行くかして過ごした。そうしていたら、バンドメンバーのみんなとも連絡が取れなくなって、バンドは自然消滅という形で解散となった。



お父さんが今目覚めたらがっかりするかな、なんてことも考えたけれど、ここまで負の連鎖が続くと、もう覚めないんじゃないかなと思ってしまって、そういうことに気を遣うのがどうでもよくなっちゃって、勉強する時以外はベランダや電車の車窓から見える景色を眺めながらイヤホンで音楽を聴く、静かで暗い人間になった。

高校は地元埼玉にある高校ではなく、親戚の家の傍から通えて、父の見舞いにも行けるように神奈川の江ノ島から通える高校に進学した。あんなトラウマを植え付けられて、またバンドやりたいなんて思えるはずもなく、私は中学の頃と同じような生活を続けた。正直このままで自分大丈夫なのかな、なんて思うこともあったが、今より状況をよくするにはどうすればいいかなんて私には分からなかった。もしその方法があるというのなら教えて欲しいかったくらいだ。そう、昼休みの屋上で、一人音楽を聴きながら考えていた。

突然、屋上のドアが開く。屋上はいつも私しかいないから、人が来るなんて珍しいことだった。先生かな、そう思って振り返るとそこには私と同じ制服を着た女の子がぜぇぜぇと息を切らしながらそこに立っていた。そして、私を見るなり


「ねぇ!君もしかして」


と言いながら私に近づいてくる。私に用でもあるのだろうか。でもこの子とは面識がないからそんなことあるはずないのだけれど…


「やっぱりそうだ。君、星野マグワイアちゃんでしょ!少し前に埼玉のバンドでドラムやってた」


え、何で知ってるの。怖い怖い。もしかして新手のストーカーだろうか。


「そうだけど、あなたは。というかなんでそのこと知ってるの」


とりあえずその子の質問に答えつつ、私は逆にその子に二つほど質問してみた。するとその子は少し落ち着いてから


「ああ、自己紹介し忘れてたね。私は上北沢高校一年の岩下愛(いわしたあい)って言います。あなたのことは友人から聞きました」


と丁寧に答えてくれた。友人とは誰のことだろうか、もしかして私がいたところの…そんなこと考えてる場合じゃない。その前に引っかかることがある。なんで東京の高校に通ってる子が、うちの学校の制服を着て、しかもここまで来ているのか。


「え、ここの学校の人じゃないよね?じゃあなんで」


「ああ、それは私の親愛なる岸田っちが協力してくれたおかげだよ」


岸田…そういえば、うちのクラスにそういう苗字の子がいた。入学式の日の自己紹介で


「くるりんってバンドでベースやってます!てへっ」


という痛い自己紹介をした子だ。まさかその子が私がドラムやっていた人だったことに気づいていたとは驚いた。出来れば気づかれたくはなかったが、やはり一度知名度が界隈で広まってしまうとその界隈の人には本人だとバレてしまうのか…それはそうと


「そうなんだ。ところで、私に何の用ですか?」


私に何の用なのだろうか。


「お願いがあるんだ。私、バンド作ろうと思ってるんだけど、人手が足りなくてね…ずばり、君にドラムやって欲しい!」

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