01.なに?このカメラ?理解不能なんだが!?
タッタッタッ、私の走る音がグラウンドに響く。
私の名前は、杉谷亜音。陸上部の新高一だ。といっても、中高一貫の進学校なので、あまり高校生になった実感は湧いていない。
(あー、このなんでもない日常が永遠に続いてほしいなあ、、、)
燦々と太陽が照っている中、そんなことを考えながら走っていると、急に後ろに気配を感じて私は振り向く。
そこには平林玲夜がいた。
あいつは、うちの学年で1番頭が良く、運動もでき、おまけに顔もいい、まあつまりは、ハイスペック男子である。
そんなアイツであるが、女子からモテるかというと全くモテない。
コミュニケーションが全く取れないからだ。
やはり人間顔ではない。
そんなことを私が考えているとはつゆ知らず、平林が私の前を走っていると、、、
突然ころんだ。
「は〜〜〜〜〜〜!?」
あの完璧な平林がころんだ!?
人生には不思議なこともあるものだ。
私は、素知らぬ顔をして、平林の隣を通り過ぎようとした。
すると、
「おい、待て。」
そうあいつが口にした。
今は、春休みなので、私達しか部活に来ていない。
どうやら私に話しているらしい。
「あんた、喋るんだ、確かに男子と話しているところ、見たことあるような気もするか、、、?」
「お前、失礼だな、それよりこれを見てくれ。」
平林がそう言いながら、指さした先には、古びたおもちゃのカメラが落ちていた。
「なにこれー、こんなカメラで3歳頃、よく遊んでたわ、なんか懐かしい感じ。」
「は?お前何いってんだ?この状況、おかしいだろどう見ても。」
そこで私もようやく気付いた。
グラウンドにカメラが落ちている様子は、明らかに異様だ。
「俺はこのカメラに躓いたんだ。」
と、偉そうに平林が言う。
(いやいや、それそんなに偉そうに言えることじゃないから。)
内心そんなことを思ったが、私は平林と会話を続ける。
「いや、でもこのカメラ何?」
「知らんから杉谷に聞いている。お前、意味わからないくらい、交友関係広いだろ。」
(こいつ、私の名前認識してたんや、ていうか、いらん一言多くないですか?)
そんな会話をしていると、ふと私はひらめいた。
「これで写真撮ろうよ!平林、写って!」
私は軽い気持ちで、彼にレンズを向けた。
「おもちゃなんだから撮れるはずないだろ。」
平林が顔をしかめながら、渋々うつる。
そして、私はファインダーを覗いた。
その先には、見知らぬ森が写っていた。
それに、心なしか、大勢の人の「助けてくれ」という声も聞こえる。
「え、なにこれ。意味わからない。」
「は?どういうことだ?」
平林が首を傾げる。
私はなぜか、吸い寄せられるようにシャッターを切った。
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