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いよいよ前世の上司を迎える時になった。今度はおかしな派閥争いで彼から距離を離されることはしない。なにせ俺が最高責任者なのだから。音楽関係に隙間なく張り巡らされたパイプを使って秋元氏といよいよ対談だ。
秋元「君が噂の中村和樹かい?」
中村「はい」
緊張した若い昔初めてあった時より若い。
「俺に何の用?」
あちゃーそうか、この頃も有名人だけど、あの時ほどじゃないよな。何の伝手もない人間がずっと秋元康と会いたいとずっと音楽関係者に言い続けてるんだ。そいつがやたらとヒット曲ばかり飛ばして、まだ出してない曲がいくらでもあると言う。しかも突然湧いて出てきた。
こりゃ気持ち悪いよな。
「そうですね、アイドルのプロデュース一緒にやりませんか?」
いきなり本命を出した。この後AKBまでずっと売れっ子作詞家だが、アイドルだけ上手く行かなかったのを知っている。おそらく数多くのアイデアが頭の中でめぐっているだろう。
「アイドル?」
この時期アイドルは下火だった。それに目をつけてたのは前の時代おニャン子をやっていた秋元さんぐらいで。
「ははは」
「笑っちゃいますか?」
「そりゃね、こんな奇特な人間が俺以外に音楽業界にいるとは」
「今が何故アイドルが外れるか分かりますか?」
「挑戦的だな、4年前なら許せない発言だが今は面白い」
「音楽番組ですよ、プロモーションの機会が減ったと。これが回復することは無いです。文化が成熟して好みが多様化するのは発展する国では当たり前です。そうすると視聴率が取れるような知名度の高い歌手ばかり集めてもイマイチパッとしないわけです」
「淘汰されすぎてほんの一部となった番組と深夜がこの先の未来だと考えています。そこで考えるべきは音楽番組のプロモーションに頼らないアイドルの売り出しです」
「それはどういうものだよ。大体それなら何故俺に声掛けるんだ?俺は古い時代の人間だぞ?」
「俺はそうは見ていません。あなたには先見の明があります。それが思い浮かばなくても良いんですよ。先見の明を持つ人間の意見を理解できる。これだけで十分です。突っ込んで言うと俺はアイドルのさらに先を目指していて、そのためアイドルを全部任せられる人と組みたいんですよ」
「お前どんな人間だ?業界でもお前が謎すぎて話題になってるが、お前特定の人間しか合わないよな?」
「はい、選んだ人しか会いません。それには理由があります聞きますか?」
「ああ是非謎に興味がわいてきた。」
ある男の一生を話す。それを俺は夢みたいに捉えていて、その夢の通り知ってる事を出してるだけだと答える。
「馬鹿げた話でしょ?信じますか?」
「分かりやすく言うと未来が見えてると言う事か?」
「それはちょっと違います。例えばですよ。俺があるアーティストのヒット曲を出す前に知っていて出してしまったとします。そのアーティストはデビュー前ならデビューに躓いて、普通の人として一生を終えるかもしれません。それは歴史を変えてしまいます」
「あるアーティストが出す予定だった2曲目を僕は知らないとします。もう2度とその曲は世界に出ません。これは未来を知ってますか?」
「ああなるほど、未来が変わってしまう未来を知ってるのか」
「はい」
「中村お前は俺の部下だったのか?」
「ちょっと違いますけどね、戸籍を調べれば俺は中村和樹です。それ以外の何物でもないです。その中村和樹が不思議な夢を見て、秋元さんに会いたいって遺言のような言葉が意思として重なった人物です。自分はその人なのか?それとも中村和樹なのか?と言われたら混ざったものだとも思います」
「何より重要なのは、今の俺は、秋元さんとあったわけです。目的を果たしています。でもこの先の目的こそ俺がやりたい事です。前世の知識を知ることである目的がひらめいたからです」
「それは聞いてない」
「欧米に負けない、歌と踊りが出来るガールズグループを作りだす組織を作る事です。ガールズグループを作りたいわけじゃないです。それを大量生産する組織こそ作りたいものです。そのため母体としてアイドルを使いたいのです」
「俺はお前の下か?」
「ちょっと違うのじゃないですかね?自由にやってもらって構わないのですが、オーディションを行うのですが、優先的に秋元さんのつくった組織から募集します。あれです野球などのトーナメントでシードを設けるようなものです」
中村「気に入らなければ、別に出なくても良いですよ?」
「確かにそれは自由だな。で細かい所教えろ」
「なんか部下になってしまってるのですが…」
「でも作りたいんだろ?」
「はい、えーっとですねモデルは宝塚や舞台俳優などです。この時代あるのか?分からないのですが、秋元さんと前世の男が始めたころ、舞台俳優が自分の人気を利用してチケットをさばくわけです。これをアイドルにやらせて小劇場を舞台にして、歌に踊りにお芝居になんてどうですか?」
「もう1追加で、歌などは歌ってしまったら消えますよね?そこでCDなどを舞台やライブ後に手売り販売するんですよ」
「ああTV一切使わない?」
「はい。宝塚などが分かりやすいですが、追っかけ?今ならこんな風に言うのですが、これを俺らの時代は推しのアイドルと言ってました」
「特定の舞台俳優にファンが付くのあるな。あれか」
「下手したら歌舞伎の頃からあるかもしれませんよ?これをアイドルの売り出しに使うんですよ」
「さてこれだけじゃ駄目です。何故なら似た事をすぐ真似されるからです。そこで俺のオーディションです。キラキラした大きな舞台へのシード権を与えらえるとするとファンにもアイドル自身にも差別化になると思いませんか?」
「俺の見た時代はこれは無かったです。これなしに知名度があがりメジャーデビューしたからです」
「いらないんじゃないか?」
「俺はこの最初の成功が大失敗だったと見てるわけです。この後勝てるモデルが出来てしまって工夫が減るんですよ。最終的に韓国のアイドルグループの方に若いファンや日本の美少女が向かってしまいます。簡単に成功したことで、リスクを冒す事を極端に嫌がる組織になります」
「アイドルより組織が腐ったと見ています。俺はそこから危機感をもって訴えたがそれが煩わしくて排除されました。要するにですね、簡単に成功して、これを捨ててまでやる事とか?ってすぐ批判されるんですよ」
「それはそうだろう?」
「たまに自分が何者か?となるのですが、俺はこの時の悔しさに共感できて、自分の事のように考える面があります。この時不味かったと思った部分もあり。俺はすべてを変えるべきと言ってしまったんですよ。今から思うとそれは過激だったと思っています」
「だからシード権なんですよ」
「ああなるほど、俺の組織とお前の組織が別なのは意味があるんだな?」
「まあ出資ぐらいするので支配的な関係になるかもしれません、そこは秋元さんとの関係でしませんと言うしかできません。俺も秋元さんとまた壁を作るような奴が多分現れると見てますので」
「そうだな、それはどんな組織も似てると思う」
「分離してるのは、秋元さんの考えで作った小劇場集団が全国の知名度になっても良いわけです。おニャン子が丸ごと下から這い上がるのを想像してください」
「俺はそれに批判的なんですよ。だから別組織にして、あくまでこっちの組織に来るのは本人の意思としておくわけです。ちなみにシードでも落としますよ。じゃ何のためのシードかというと予選が無い本戦出場?と思ってください。圧倒的に有利です」
「出さなくても良いんだよな?」
中村「ええですが絶対メリットを気が付かせます。俺が未来を知ってるような部分があるのを忘れたらいけませんよ?秋元さんのやり方だと息詰まったのを知ってて、でもそのすべてが否定されるべきじゃないと俺は閑職時代に分かったんですよ。その点は自分が間違っていたと、それで別組織で秋元さんの良いところを見せるべきだと」
「後とっておきなのが、95年に爆発的に伸びるインターネットというのが、TV以外のプロモーションの場を作ってしまうからです。ここで俺はさらに有利になります。小劇場は所詮舞台と同じ生の魅力ですからね。衆目に晒されるのはきついと見ています。このネット戦略で未来でも韓国と差がついたので」
「とても成功すると思えないのだがな」
「良いじゃないですか、その責任は俺にあるんですから、秋元さんは俺がつぶれても大きな被害はないと思いますよ。最初の投資金程度で成り立つと思いますから。秋元さんが釈然としないの分かりますよ。日本は素人芸大好きですからね。それでしょ?」
「ああ」
「未来は変わるんですよ。その被害をもろ受けるのが秋元さんが作るアイドルグループです。ただ日本人全員が変わるのか?というとなんとも。それでも侵食されるのは間違いないです。均衡点が分からずに落ちていく中で死んだので全滅するのか?は分かりませんけどね。俺は全滅しないと思うから、秋元さんを誘ってるわけです」
「確かに俺にはお前が失敗しても損が無いな。やろう」
まず適当な賃貸を探す絶対に土地建物を買ってはいけない。これは秋元さんにきちんと話してありカラ売りで儲けてるので実証済み。問題点も語っておいたので一緒にはやらないようだ。信用の利率さえなければ放置したいのにな…。現物と違ってそれが不便だ。
土地の下落に応じて賃料の相談に乗てくれるようにした。これはいざとなったら出ていくとおどすぐらいに。これかなり問題あるけどね。ファン=客が場所変わるのは致命的。あくまで駆け引き程度。後は、握手券だけ教えておく。中身は一切口出さない。これは秋元さん以外無理。
そもそもこの部分俺はあまり興味が無いんだ。面白いとあまり思ってない。そりゃ全国に行くときは楽しかったが、後から振り返るとお金以外はあまり面白みがない。集金システムとしての価値しか見出してない。そもそもそれが韓国で問題になってる部分だから。
1つの解決策として、ほどほどに仕上げて、活動の中でレベルを上げて行けば良いと思う。ほどほどがかなり高いレベルだが。どういう名前になるか分からないが、AKB(仮)から取りたいのは、ある程度仕上がってるからだ。これをさらに才能で選別して仕上げる時間を短くする。
他にも一般公募で集めるのは、AKBの選考基準と違うからだ。だからシードしてもバンバン落とすとは言ってある。卒業生休業生がいるから劇場でやるのは間違いないが、他はどうするか?まあまずは、CDでの販売を目指していこう。問題は、ダンスの価値だよな。
これが売りだからな。ネットが無い時代にやるのは危険。だが今からやってネット時代に入ったほうが圧倒的なアドバンテージが得られる。作詞作曲で大量のお金が入るので、長い間赤字でも良い。それでも工夫はしなくちゃいかん。
NYダウが1990年から上がり続けるので、問題のあるバブル崩壊だけさければ回転を絡めながら持ち続ければいい。テンバーガーは特別に買うが、この時期から買いを開始しても良い。早くアメリカ法人を作って、洋楽を発表したい。アメリカに攻める時に絶大の信頼がある作曲家がいれば簡単に攻略できる。
信頼できる人間を選んでこれを任せる。相当信頼できないとトンずらするからだ。
この時期ネットもなくTVも使わないで集まるのか?ならなんとかなる。確かにこの時期よりちょっと後にオーディション番組が増えた。モー娘もそれだ。ただこの時期もレコード会社のオーディションにしこたま集まってる。ただ顔をかなり重視する。
妥協しても良いのだが、どういったものを見せるか?を最初に見せておきたいレベルよりそこだ。分かりやすいから。審査員とトレーナーにHIPPOP系の踊れる人間を探す。ただ単純にHIPPOPをやるわけじゃないので、そこは慎重に話し合いがいる。新しいものを作りたいから。
後HIPPOPにこだわらない振付師的人間もいる。全体の構成があるからだ。
次にこの時期のディスコをハウスに変えていきたい。EDMの流れを作るにはどうしてもこれが外せない。プロデューサー作曲ダンス、すべてにおいて無視できない。HIPPOPもこの過程で組み込まれたものだ。余裕があれば2系統やる必要がある。基礎して叩き込むにはHIPPOPの方が都合が良いんだ。
HIPPOP自体はまず日本じゃ広がらないと思う。エグザイルもどっちかと言えばバラード調にダンスを合わせる。聞かせる部分と踊る部分をミックスしたもので見た目はHIPPOPだがあれはR&Bのスローなテンポで踊るものに似ている。HIPPOPはやはりラップがきつい。
この時期の小室さんがかなり面白い動きをしてる。彼と協力してハウスに変えていきたい。こんな早く彼が登場するとは。この後もかなり深くDMに関わっていくのでその活動を後で吸収できる。俺の活動が届いていたようで、すぐに会えた。
「どうも中村和樹です」
「小室哲哉です」
「本音でいきなりいって良いですか?もっと後で会うつもりだったのですが、小室さんが面白い事してると聞いて今会う事にしました。本当は他の人にも打ち明けるべきですが、俺は秋元さん以外にあなたが日本のダンスミュージックにおいて重要になると思っています。今からすごい事言いますよ?」
「???何??」
「まあ待ってください。やはりそれは後にしましょう。俺はねロックが未来に衰退すると思ってるんですよ。小室さんがどう考えてるのか?分からないのですが、一応ロックバンドですよね?TMNって」
「そうなりますね」
「でもDMに関心持ってますよね?俺と同じ理由ですか?」
「いやいやロックの衰退何て全く思ってない」
「そうですか端的に言うと日本以外の世界がロックじゃなくてDMが強くなるからです。その原因は何か?と言われると分からないのですけどね、とにかく日本だけが音楽鎖国状態になります。これがね予測じゃないんですよ。俺は未来を知ってるんですよ。これを秋元さんにだけ話しています」
「は??」
「小室さんだけに特別話したのは、あなた将来借金生活になります。それを救いたいからあなたにはいつか打ち明けようと思っていました。そうですね、未来が見える1つの例を見せましょう」
そこで最近手掛けていた。歌を乗せたEDM風音楽を聞かせた。
「作った曲?何故これが未来?」
「確かに今信じる必要はないですね。小室さんはいずれ、日本の歌とダンスミュージックの相性の悪さに気がつきます。それは今じゃないから分からないのかと」
かなり音が悪いが未来にあるかなり歌いこむ音楽とDMの曲を聞かせる。
「ええ何これ?」
「答えってわけじゃないです。1つの例にすぎません。俺は結局大衆側が未来に平坦な歌を受け入れると見ています。それはとても時間がかかります。その間はむしろ小室さんの方が上手くやると思います。1つは、コンピューターの処理速度の向上で音楽ソフトが大幅に改善します。他には歌手が発達します。平坦でもそうとう聞かせる上手い歌手の登場ですね」
「まあその時が来てから考えましょう。今日は、日本のDMの発展に手を取り合いましょうって話がしたくて、今は俺の与太話だと思っててください。ただ俺の聞かせた音楽がおそらく未来のものだと分かる時がいつか来るでしょう。そもそも俺が突然音楽界に表れてヒット曲を連発するのはなぜか?」
「簡単です近未来にヒットする曲を大半知ってるからです。本当なら小室さんの曲も教えられますよ?」
俺はある1つの曲を口ずさんで歌って見せた。これは多分効果がある。小室さんの曲はすべてではないが特徴的な部分が出る時がある。それが入ってた曲を歌ってみた。
「ああこれ占有権なんて主張しないので気に行ったら勝手に自作にしてください。あなたの歌なんですから。さて今話す本題を話しましょう。今イギリスに来てるのかな?アメリカで出てきたもっと濃いダンスのための音楽。まあ歌を排除するところがありますよね。これらをゲイ文化とむすびつけたハウスミュージックと向こうでは呼ばれています」
「日本のディスコをこれに一部変えられませんかね?いずれイギリスではやるので、人間を使わせて学ばせようと思ってるのですが、この立ち上げに協力してくれませんかね?」
「面白そうだね」
「もし海外の音楽関係に詳しい人がいるなら多分知ってるので、ぜひこれ聞いてみてください。今のディスコじゃ駄目なんですよ。ノリが違うんですよ。機材は変わらないので音楽を変えたいんですよね。小さなところで良いのでこれに協力してくれるところを見つけないと思っています。自分で建てる気はないです」
「DMの作曲プロデュースーを出来る人間をハウスから育てたいんですよ。やっぱDJをやって学ぶのが一番だから」
最後はシェイクハンドで終わったが、途中の話どう思ってるんだろう?じゃ何故打ち明けたのか?未来を知ってるとして話すと無茶苦茶話が早いからだ。何故こんな事をするのか?が見えてくるから。
俺としては駒が欲しいから大きすぎる駒はいらない。だから落ち目になる彼を狙ってたんだ。何故かまったく理由が分からないがヒットしなくなる。この後の時代DMの時代になるのに、彼が売れなくなるのは謎すぎるんだ。敢えて言うなら彼の落ちた原因はおそらく枯渇だ。
彼のDMの情熱の方を実際は求めてる。その熱意で人間を集めて欲しいんだ。彼の凋落は本当に分からない。俺もなんとなく考えてるだけで。それゆえ作曲には全く期待してない。
今の機材ではかなり音が悪い。これがどう影響を与えるのか…。