表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/239

これはガチ!最狂の天才少女!

「ここがトランドスト大学!」


立派な赤い門を抜けると、そこには広大な敷地が広がり、荘厳な雰囲気の建造物がいくつも並んでいた。そして、確かに右も左も若者が歩いている。ただし、私の「これぞ都会センサー」は少しも反応しなかった。


「ベイルくん、ここが本当にトランドスト大学なの? 若者に人気なお洒落スポットには見えないけど」


「わ、若者に人気なのは確かです! ほら、あそこもあそこも。若者がいっぱいでしょ?」


「うーん……」


確かに若者は多いけど、真面目そうな子ばかりじゃない?


私は釈然としないまま、ベイルくんが「こっちです」と歩き出したので、それに従った。


「ところで、ベイルくん。君が担いでいる、それは何?」


「何って……さっき斬った呪木です」


ベイルくんは先程から、自分と同じくらいの大きさがある枯れ木を背負っていた。確かに、言われてみれば、浄化された呪木に違いない。


「でも、何でそんなものを?」


「ニアにお土産です。彼女、どんな差し入れよりも、これが一番喜びますから」


「ふーん」


それから、建物の中に入ったが、どこも楽しそうな場所ではなかった。雰囲気も静かで、私みたいなものが来るのは、場違いなのでは……という気持ちが膨れていく。


「……そっか!」


唐突に理解した。


「大学ってお洒落スポットじゃなくて、勉強するところじゃん! ……何でこんなところに連れてくるのよ、ベイルくん!!」


騙された、と隣に歩くベイルくんを怒鳴ると、彼は担いでいる呪木に潰されそうになりながら謝るのだった。


「ご、ごめんなさい。どうしても、ニアにスイさんを会わせたくて!!」


「……ニアって、誰だっけ?」


聞いたことはあると思うけど。


「何回も説明したと思うんですけど……ニアは国立黒霧研究機関に所属する、研究者です。呪木を斬る大剣……斬呪刀を作ってくれたのも、彼女なんですよ?」


「あー、はいはい。例の天才少女ね! 大学生なの?」


「いえ、大学はちょっと前に卒業しています」


んんん??

大学生って私くらいの歳の人間が行くものじゃなかったっけ?

だって、彼女はまだ少女なんでしょ?


私が疑問を口にするより先に、ベイルくんは話を続けてしまう。


「ニアの勤め先、つまりは国立黒霧研究機関がトランドスト大学の中にある、というだけです」


「ふーん、そう。そうなんだぁ」


まぁ、気になるけど別にいっか。

思考のスイッチを切ると、ベイルくんは呆れたように眉を八の字に曲げた。


「スイさん、完全に興味を失ったの、丸わかりですよ……」


私が返事すらしないので、ベイルくんは再び歩き出す。私は口を半開きにした状態で、ただ付き従うのだった。


しかし、気付くと建物の雰囲気が変わっていく。


「なんか病院っぽいね」


なぜか私の質問をベイルくんは無視する。


私、病院って苦手なんだよなぁ。

でも、ここって大学だよね。

病院ではないよね?


もちろん、これだけ大きい病院は見たことないけどさ、この雰囲気って……。


「テレビで見た『医の極み』に出てくる病院が、こんな感じだったような……」


「あ、その通りですよ、スイさん。ここ、そのドラマの撮影に使われていました。あの頃、ニアは撮影スタッフに道を通してほしいって言えなくて、よく遠回りしてたって――」


「ベイルくん!!」


「は、はい!?」


「ここ、ドラマの撮影現場だったの!?」


「だから……はい、そうですよ」


「そんな重要なこと、何で言わなかったのぉぉぉーー??あのドラマ、私とママ、毎週見てたんだから! あっ、記念撮影しないと!」


「記念撮影って、ここただの廊下ですよ?」


「違うよ、ベイルくん! 思い出したの、私。ここはドラマの中で、ドクター・ジーゼンとドクター・セトミが初めてすれ違う廊下だよ! 第一話の! 最初のシーン!」


「……カメラがないので、後でニアにお願いしてみましょうね」


必死な私に苦笑いを浮かべるベイルくんだったが、気のせいか安心した表情を見せたような……。廊下を進むと、両側にたくさんのドアが並んでいた。その一つの前で、ベイルくんが立ち止まる。


「ここがニアの研究室です。ニア、入るよー!」


かなり親しい関係なのだろう。

軽くノックしてから、ベイルくんが部屋の中に入ると、そこには白衣に身を包む、ウェーブがかかった金髪の女の子が。


メガネで弱々しく見えるけど、勉強が得意って感じがする。どれだけ賢いんだろう、と彼女を観察すると、物影に隠れられてしまった。


そんなニアちゃんが遠慮がちに口を開く。


「ベイル様。もしかして、この方が……?」


「うん。スイさんだよ」


「こんにちは。スイです。よろしくねー」


挨拶したはずなのに、ニアちゃんは私に背を向けてしまう。


「??」


何か失礼なことしたかな?

あ、もしかして凄くシャイなのかな??


と思ったら、振り返ってこちらを見るニアちゃん。その手には……。


「……へっ?」


私は見た。

右手にハサミ、左手に注射器を持ったニアちゃん。


その目は爛々と輝き、狂気に満ちていた。


一歩、一歩と私に近付くニアちゃん。そして、悪魔のような笑顔を浮かべた。


「では、さっそく調べさせていただきまーーーす!! お覚悟ーーー!!」


「ぎゃあああぁぁぁーーー!!」


襲い掛かってきたニアちゃんに、私は思わず悲鳴を上げるのだった。

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ