霧天決行
「それでは、儀式は一度中断して後日と言うことで」
王様は不謹慎ではあるが、ほっとした表情で将軍に提案する。
「ベイルの相手に関しても、そのとき改めて話しましょう」
王様からしてみると、それまでレックスさんたちと話し合って、将軍に納得してもらう方法を考えるつもりなのかもしれない。しかし、将軍はそれを許さなかった。
「いえ、儀式を続けましょう」
「え?」
ぽかん、と口を開く王様。
しかし、将軍はわずかに笑みを浮かべたようだった。
「霧の発生地で儀式を行うのはいかが?」
「何を仰る! ベイルを霧の中に放り込むつもりですか!?」
「そのつもりです」
泰然とした将軍の態度に、王様は言葉を失う。だが、我が子を想う気持ちが、再び王様を突き動かしたみたいだ。
「危険すぎる。いくら将軍とは言え、第一王子を危険に晒すなど……」
「それがこの国をダメにしていると、何度言わせるのか!!」
その一喝が再び王様の心をへし折る。王様は完全に萎縮してしまった様子だけど、将軍はさらにまくし立てるように主張した。
「そのように王が弱気だから国も力を失う! 立ち上がるべきとき、戦うべきときがあるのです。それを避けて、白黒つけずに曖昧な状態を続けるから、何もかもが脆くなる。ベイリール様のドラクラ化に関しても同じことが言える!」
将軍はベイルくんに指先を向ける。
「あの年になってもドラクラ化すらまともにできない、トランドスト王家の王子。それを作ったのは、王の態度にあると私は考えている。危険を顧みず、掴むべきものを掴もうと前に進まねば、何も手に入らない!」
……なんだろう。
イライラしてきたなぁ。
そろそろ我慢しなくていいよね?
チラッとレックスさんを見るが、彼は苦々しい顔で首を横に振るだけ。将軍の主張はまだ続く。
「だからこそ、ベイリール様は霧を前にして儀式を行うべきなのです。目の前に霧がある。絶好の機会ではないですか!」
おうおうおう、私はもう我慢ならないよ。
レックスさんが止めようと、私は言ってやる。
やってやろうじゃないか、ってね!
「やります!」
議事堂内に凛とした女の子の声が響いた。ただ、それは残念ながら私のものではない。
「私とベイルが、霧を払います」
真っ直ぐと将軍の目を見て、名乗りを上げたのはリリアちゃんだ。もし、ベイルくんがドラクラになれなかったら、娘であるリリアちゃんが危険に晒されるはず。将軍はどんな判断を下すのか、と全員の注目が集まったが……。
「やってみせよ」
将軍は、顔色一つ変えることなく、許可を出すのだった。
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