王様とご対面イベント、なんだけど……
「では、謁見の間へ」
レックスさんに案内され、控室から謁見の間へ移動する。そこは、無駄に広い空間で、奥に王様がいるのだろうけれど、ぜんぜん見えてこない。
無駄に歩かされた後、ついに王様が見えてきた。少し高い段差、その上に大袈裟な椅子があり、国王が腰を下ろしている。彫が深く艶のある髪は、二人も息子がいるとは思えないほど若々しく、スタイルもよさそうだ。
確か、年齢は四十代前半ってテレビで言っていた気がするけど、五歳以上は若く見えるような……。うーん、フレイルくんが言っていた通り、ドラクラ化したときのベイルくんに似ているなぁ。
「国王。スイ様をお連れしました」
「うむ」
レックスさんが私を紹介すると、王様の目がこちらに向けられた。
か、かっこいい。
流石、都会だよ。
会う人みんなかっこいいんですけど!
さて、そんな王様は私にどんな言葉をかけるのか、と身構えていたのだが……。
「ベイル」
と王様の視線はベイルくんの方へ。
「は、はい。父上」
緊張しているのだろうか。
ベイルくんの声から堅さを感じる。
そんなベイルくんを見下ろす王様は立ち上がると、私たちの前に立った。
お、怒られるのかな。
田舎者の私でも王様から出ている圧に押し潰されてしまいそうだった。
だったのだけど……。
「ベイルーーー!! 会いたかったよーーーん!!!」
王様が急にベイルくんを抱き上げ、ぶんぶんと音を立てて回り始めた。
「ち、父上! 会いたかったって、昨日も会っているじゃないですか! というか、いつも会ってます!」
「だって、ずっと行方不明だったじゃん! 帰ってきたのが嬉しくて嬉しくて!!」
……どういうこと?
王様は回転をやめると、今度はベイルくんに頬ずりを始める。このままだと、ベイルくんを舐め回した後、食べてしまいそうな勢いだ。
ベイルくんは涙目になって抵抗するが、王様の力は強いらしく、されるがままだ。
「もう何日これやっていると思っているんですか?? っていうか、スイさんの前ではやらない約束です!」
「なんで?? いいじゃん! 仲良し親子なんだからーーー!」
「程度というものがあります! 父上、お願いだから!!」
何とか抵抗するベイルくんだったが、王様による息子大好きタイムはなかなか終わらなかった。レックスさんもそれを止めることなく、何が起こるのか、いつまで続くのかも説明してくれなかったので、私はそれを眺め続けるしかなかった……。
……まぁ、なんていうか、
ベイルくんがお父さんと不仲じゃなくて、本当に良かったよ。
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