子どもたちよ、はしゃぐな
次の日の朝、城門の前で集合。
メンバーは昨夜と一緒で、レックスさんにベイルくん、フレイルくん、リリアちゃん、ライムちゃん。
「久しぶりに駄菓子屋いこうぜ。大人買いしてストックしておかないと」
「フレイル、駄菓子なんてまだ食べているの?」
「なんだよ、美味いからいいじゃん。それに、城だと食べれないし」
「姉さま、駄菓子ってなんですか?」
「ライムは知らなくていいの」
はしゃぐ子どもたち。
嗚呼、賑やかなこと。
なんだか学校の遠足を思い出しちゃうなぁ……。
膨れっ面にならないよう注意しなければ、と大きく息を吐く。それが溜め息に聞こえてしまったのか、ベイルくんがこちらを見た。
「スイさん、ごめんなさい」
「え? な、何が?」
「僕たちが一緒だと、スイさんが嫌だったんじゃないかなって……」
「そ、そんなことないよ。初めての王都! 楽しみで仕方ないぜ!」
無理に明るく振る舞おうとするが、ベイルくんにはお見通しなのか、何とも言えない笑顔を返されてしまった。
「では行きましょう」
レックスさんが穏やかな笑顔で出発を宣言する。すると、城門が開いて王都の街並みが私の眼前に広がった。レックスさんを先頭に私たちは橋の上を進む。レックスさんの後ろにライムちゃん、フレイルくんとリリアちゃん、最後に私とベイルくんという順番だ。
「レックスは孤児院で育ったんです」
「え?」
歩きながら、唐突にベイルくんが言った。
「孤児院の中でも年長だったらしく、いつも子どもに囲まれて面倒を見ていたそうです。レックスにとってはそれが自然で、落ち着く環境らしいですよ。
だから、今も休みの日は孤児院に行って、スタッフの手伝いとか子どもと遊んでるみたいです。それがレックスなりのリフレッシュと言うか、数少ない楽しみなんだと思います」
「そうなんだ……」
何だか、恥ずかしいな。
レックスさんのこと、ちょっと空気の読めないやつって思っちゃったけど、忙しい中、私のために時間を作ってくれたんだ。
少しくらいは、レックスさんにとっても楽しい休日にしてあげないと!
そのつもりだったんだけど……。
「見て、ベイルくん! 超高層タワー! やばっ、超都会!!」
「す、スイさん……。あれはただのマンションですよ。って言うか、少し高い建物を見るだけで興奮するのやめてください」
「見て、ベイルくん! あれがクレイプってやつでしょ!? 知ってるよ、若者が集まるような、オシャレな街でしか売ってないんでしょ?」
「す、スイさん……。あれはケバーブです。それに、クレイプは若者が集まる街だけで売っているわけじゃないですよ」
「見て、ベイルくん! スタッバだよ! 都会にしかないオシャレかふぇ、スタッバだ! なんちゃらふらぺちーの飲もうよ!」
「す、スイさん! スタッバで興奮するのは一番の田舎者ですから! スイさんが一番嫌がる田舎者に見られちゃうやつですよ!」
私が一番はしゃいでしまった……。
だが、そんな私を見てレックスさんは穏やかな笑みを浮かべて、こんなことを言うのだった。
「スイ様は子どものような方ですね」
う、うわぁ……。
レックスさん、完全に私のこと、面倒を見てると癒される子ども、みたいに見てない?
なんだかなぁ……。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
もし、まだブックマーク登録をお済でない方は「ブックマークに追加」のボタンを押していただけると嬉しいです。
他にも下の方にある☆☆☆☆☆のボタンによる応援、感想を投稿いただけると、モチベーションアップにつながります。
「面白かった」「続きが気になる」と思ったら、ぜひよろしくお願いします!




