なぜか逃げ出してしまいました
その日、私はお昼も食べないで布団の中にもぐりこんだ。って言うか、教会でジョイと顔を合わせてから、すぐに逃げ出してから、すっと隠れている。
「スイ、もう夜だよ。ご飯はどうするの?」
ママが様子を見に来たけれど、私は黙って布団の中に隠れ続けた。
「本当に何があったの? もう……ジョイくんに相談してみようかしら」
「やめて!!」
ママのことは大好き。
だけど、初めて怒鳴ってしまった。
たぶん、ママもショックを受けたみたいで「ごめんなさいね」と言って部屋のドアを閉めてくれた。
夜になると、今度はパパが様子を見に来た。
「スイ、どうして布団から出てこないんだい? 何か嫌なことがあったのかい?」
私はパパのことだって大好きだ。
だけど、無視するしかない。だって、何があったのか、何が気に入らないのか、自分でも分からないから。
布団から出ようとしない私にパパは言う。
「明日は、フォグ・スイーパの儀式があるけど、延期してもらえるようシスターに頼んでおこうか? ジョイくんにも――」
「やめて!」
たぶん、パパもショックを受けただろう。何も言わず、部屋のドアを閉める。それから、静かな時間が、ただ経過していった。その間、私は何度も自分に問いかける。
何がショックなの?
今まで何度も知らない相手と儀式を行った。その中には、どこか不潔な感じの人もいたし、いけ好かない性格のやつ、 ババスと同類みたいなやつだっていた。
だけど、私を聖女として活躍させてくれるなら構わないと、全部受け入れてきたつもりだ……。
ジョイが嫌い?
もちろん、違う。今までのドラクラ候補に比べたら、ジョイは良いやつだ。
性格だけじゃない。顔だって、私は見慣れちゃっただけで、たぶん可愛い方なんだと思う。それなのに、どうして……。
時刻は深夜に。
たぶん、パパもママの眠っている時間だ。
いつもなら私も眠ってしまう時間だけれど、明日の儀式のこと、ジョイのことを考えていたら、睡魔は一向に訪れなかった。
コンコンッ。
あ、寝てた。
眠れないと思ってたけど、普通に寝てたわ。
コンコンッ。
なんだろう。
そうだ、この音で目が覚めたんだ。
コンコンッ。
音は窓の方から。
私は布団から抜け出し、恐る恐る音の方へ。
まさか、デモンが村に入り込んで、聖女の私を狙っているわけじゃないよね?
そんな知能が高いデモンが、こんな田舎の村を襲うわけがない、はず。
「えええーーーいっ!」
恐怖を振り払い、思い切ってカーテンを開く。そこには、音の正体が。窓の外に張り付く、ジョイの姿だった。
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