君はぬいぐるみ
「しかも、少し正解したくらいで調子に乗るなんてあーだこーだって言われて、明日から二週間連続で小テストになっちゃった。一回でも赤点取ったらレックスさんにチクるとも言われちゃったよう!」
泣き出す私の背中を撫でるベイルくん。
「このままじゃ、資格も取れないし、王都からも追放だ……」
嗚呼、あれだけレックスさんに期待されていたのに。これじゃあダメだ。モラハラ教師のせいで、私とレックスさんの仲は引き裂かれるんだ。
絵本の王子様のように私を「守る」って言ってくれたレックスさん。会えなくなったらどうしよう……。
「せっかく、王子様に出会えたのに……」
「!?」
「素敵な結婚生活も夢じゃないって思ったのに……」
「す、スイさん。そこまで僕のこと……!!」
背中を撫でてくれていたベイルくんの手が離れたので、
どうしたのか、と彼の方を見てみると、
なぜだかその目が闘志に燃えていた。
「スイさん、僕に任せてください。僕が絶対にスイさんを受からせます! どんなに難しい問題も解けるようにしますので、安心してください……!!」
「ほ、本当?」
「もちろんです」
力強く頷くベイルくん。何てできた子なんだ!!
「ありがとう、ベイルくーーーん! 大好きだよーーー!!」
午前中と同じように、ベイルくんを抱きしめる。
嗚呼、この感触。この安心感。
実家に置いてきた、タヌ吉のことを思い出すぜ……。
「ぼ、僕もスイさんのこと、大好きです」
「ありがとう。ありがとうねぇ」
ベイルくん、本当に良い子だよ。
リネカーみたいな悪い大人と過ごしていたせいか、余計に子供の純粋さが染みるんだよなぁ……。
それから、私の猛勉強が続いた。
朝早く起きて、ベイルくんの予習授業。リンカーの授業を受けて小テストをクリアし、お夕飯を食べたらベイルくんの復習授業だ。
「あー、もう今日は眠たくて無理。ベイルくん、一緒に寝ちゃおう?」
「す、スイさん……!?」
ベイルくんを抱っこして、ベッドの方へ移動するが、彼は足をバタバタして抵抗する。
「だ、ダメですよ! あと5ページ分やるだけですから、頑張りましょうよ!」
「朝やろう? お願いお願い」
「だ、ダメですーーー!」
そんな日もありながら、私の猛勉強は二週間続いた。
「……全問、正解です」
リネカーのやつ、目を丸くしてやんの。まさかって、びっくりしているみたい。
さまぁ見ろって!
「しばらく小テストの必要はないようですね。これからは授業に集中しましょう。ただ、予習と復習を怠らないように」
「はぁーい」
こうして、私の試験勉強は軌道に乗り、安定して知識を蓄積していくのだった。しかし、しばらくしてからレックスさんがこんなことを言うのだった。
「スイ様、次は技術試験の準備に入りましょう」
「ぎ、技術試験? 何をするんですか……?」
「主に身体能力のテストですね。スイ様は学生時代にどんなスポーツクラブに入っていましたか?」
「……えーっと」
勉強の次は運動、か。
レックスさん、ララバイ村で一番どんくさい女って言われていた私に、
何をやらせようって言うんだい?
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