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背が高いとか関係ないのよ

「ベイル様、戻られましたか」


レックスさんは何事もなかったように私から離れると、今後についてベイルくんに説明を始めた。


「スイ様は、ベイル様のお誕生日までに王族聖女の資格を取っていただきます。その間、ベイル様もスイ様のサポートをお願いします」


「う、うん。でも、レックス……スイさんと何をしていたの?」


ベイルくんは赤面する私をチラチラ見ながらそんな質問をする。しかし、レックスさんは心の底から意図が理解できない様子で首を傾げた。


「ベイル様に今説明したことを、スイ様にも話していたところです」


「そうじゃなくて……」


「?」


「もう! 何でもないよ!」


ベイルくんが両手でレックスさんを突き放す。が、ちびっ子のパワーではレックスさんを怯ませることもできず、彼はもう一度首を傾げるのだった。


「では、私は教師を手配してきます。お二人はしばらくゆっくりしていてください」


レックスさんが立ち去ると、ベイルくんはドアをしっかりと閉じて、こちらに振り向いた。


「お父さん、どうだった?」


先手必勝、というわけではないのだけれど、レックスさんのことを触れられる前に、こちらから質問すると、ベイルくんは不満そうに口を尖らせた。


「別に、いつも通りです」


「いつも通りって?」


「そんなことより――」


と言いながら、ベイルくんは机を挟んで向かい側に座る。


「レックスと何を話していたんですか?」


「え? 別に普通の……ベイルくんが聞いた通りのことだよ?」


「資格を取るって話ですよね。スイさん、勉強できるんですか?」


「君、私のこと馬鹿だと思っているよね?」


「馬鹿だとは思っていませんが……」


思っていませんが、の後は何が続くんだい?


「まぁ、でも君の想像通りだよ。勉強は大の苦手。村の先生にはいつも怒られてたよ。やっと学校も卒業できたと思ってたのに、また勉強か……」


私は肩を落とすが、ベイルくんが少し身を乗り出した。


「だったら、僕がスイさんに教えます! 僕、勉強は得意なんです!」


「えええ? ベイルくんが?」


「はい! スイさんの先生になります」


私はつい笑い出してしまう。


「大丈夫だって。さすがの私もベイルくんみたいなちびっ子に教わらなくても試験くらい何とかなるって!」


爆笑が止まらない私だが、ベイルくんは少しずつ頬を膨らませていく。


「背は確かに小さいですけど、本当に勉強は得意ですから! そこまで笑うなら、僕は一切助けませんからね!」


あ、怒っちゃった。

ぷいっ、と顔を背けて口をもごもごさせているが、そういう表情も子供らしくて可愛いじゃないか。


「ごめんごめん! 悪かったよう、ベイルくん」


私は立ち上がって、彼の頭をわしゃわしゃする。だが、彼は頭を揺らしてそれを避けようとするのだった。


「もう拗ねちゃって。お子様なんだから」


まぁ、放っておけば勝手に元気になるでしょう。


そう考えて、机の上に残ったお菓子を食べ始める私だったが、ベイルくんは思ったよりも早く口を開くのだった。


「あの、スイさん」


「ん? なに?」


「女の人って、背が高い人が好きなんですか?」


「な、なんで? 誰かにそんなこと言われたの?」


「そうじゃないけど……そんな気がして」


何だかしょんぼりするベイルくん。


あ、もしかして……私にちびっ子って言われたの、気にしているのか?


私は勢いよく立ち上がり、拳を握って力説する。


「そんなことないよ、ベイルくん。人は見てくれじゃなくて心! 優しさと粋な心を持った男が一番よ!」


「本当ですか??」


「もちろん! 私の村にもさ、ババスってやつがいて、背は高かったけど本当に嫌な男だったんだから。ほんと、男の価値は背の高さと関係ないよ」


そうそう、ジョイだって決して背は高くなかったけど、今思うと村一番のいい男だった気がするし。


「あの、もう一つ聞いてもいいですか?」


「なんだいなんだい? お姉さんに何でも聞いてみなさい」


悩める少年よ。

聖女たるこの私(資格なし)にどんな悩みでも打ち明けなさい!


正しい道を示してみせましょう!


「……スイさんって、レックスのこと、好きなんですか?」


「へっ?」


あからさまに固まる私。

ベイルくんは気まずそうに視線を逸らした。


「な、なんでそんなことを聞くのかな?」


「さっきも手を握ったりしてたから……。この前も、馬車の中で手を握ってたし」


ど、どうしよう。

これ、何て答えるべきなの?


えっと……ここは思っていることを、正直に!


「私って、その……実は恋愛とかよく分からなくて。だから、好きとかもよく分からない、と言うか、何と言うか……」


そりゃ、レックスさんはイケメンだよ?


スタイルもよくて背も高い(・・・・)し、


手を握られるとドキドキするけど……


何て言うか、この気持ちが好きなのか、ちょっと分かんない、かな?


「じゃあ、好きとか、そういうわけじゃないってことですか?」


「……うん」


はっきりと答えたつもりだけど、あからさまに顔が引きつってしまう。そんな私を見てベイルくんは何を思うのか、と表情を窺ってみると……。


「よかったぁ」


おお?

めっちゃ笑顔じゃん。


どういうこと?

安心、してるのかな?

もしかして、ベイルくんってマジで私のこと……。


「スイ様、お待たせしました」


扉が開かれ、レックスさんが入ってくる。そして、その後ろには……


レックスさんに負けないくらいの、背の高い美男子が!!


「こちらは、聖女研究家のリネカーです。リネカー、こちらはスイ様。王族聖女の資格取得に必要な知識を叩き込むように」


「承知しました」


リネカーさんが前に出て、私の前に立つ。


「リネカーです。スイさん、よろしくお願いします」


「こ、こちらこそ。あの、リネカーさんって……背が高いんですね」


「そうですか?」


なんだろう、背の高いイケメンに見下ろされるこの感じ……!!


思わず目が泳いでしまったのだが、ベイルくんの視線がこちらに向いていることに気付く。


……あれ? 

ベイルくん、何でほっぺた膨らんでるの?

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