パートナーに立候補したお相手は?
「え、新しいドラクラですか?」
次の日の朝、特にやることもないので、いちおう職場である教会に顔を出すと、シスターから話を聞くことになった。
「そうです。試練を終え、この村のドラクラに立候補する若者が、ついに現れました」
「本当ですか? じゃあ、私……聖女としての仕事、できるのでしょうか?」
「それは分かりません」
シスターは首を横に振る。
「だって、貴方の血を受け入れたドラクラなんて、見たこともありませんから」
「で、ですよねぇぇぇ」
通常、ドラクラとなった男は聖女の血を飲むことで、デモンに負けないくらい超パワーアップして、黒霧の影響も受けない体になる。
しかし、ドラクラの試練を終えた男に私の血を与えても、その力を発揮した人物は……誰一人としていないのだ。
「しかし、今回のドラクラは……個人的に少し応援したくなる人物ではありますね」
シスターがこんなことを言うのは珍しい。
「どうしてですか?」
「彼が厳しい試練を乗り越えようとする姿を、ずっと見守ってきましたから」
「ずっと……?」
これまで、村のドラクラに立候補した男たちは、別の村で試練を終えた人ばかりだった。つまり、村を出ないシスターが、ドラクラの試練を見守るなんてできないのだ。
「って、ことは……ドラクラに立候補した若者って、村の男の誰かってこと!?」
「もちろん、そうですよ。って言うか、耳に入ってこなかったのですか? 彼が試練に挑むため、日々鍛錬しているという話を」
「え、マジで村の男……? え、誰? なんかちょっと嫌だなぁ」
「なぜ嫌がるのです。貴方みたいなポンコツのパートナーに立候補してくれるだけ、感謝するべきですよ」
そう、ドラクラと聖女はパートナー同士になる。しかも、半分以上はその後、人生のパートナーに。つまりは結婚するのだ。もちろん、本人たちの意思によるけど。
だから、相性のいいドラクラを見つけ出すことは、聖女にとって婚活も兼ねているのだ。
「それが村の男でしょ? 誰よ? 不良のバッツ? メガネのジェフ? まさか……ババス??」
ババスだけは絶対に嫌! 生理的に無理!
悲鳴を上げていると、教会の扉が開く音が聞こえ、シスターが笑顔を浮かべた。
「あら、噂をすれば、貴方のパートナー候補様がやってきたわよ?」
「えええ???」
ど、どうしよう。
村の男の誰かだとしても、いざパートナーになるかもしれない、と思って顔を合わせると、何だか緊張してしまう。
もう少し、オシャレしてきた方がよかったかな??
思わず椅子の影に隠れ、ドラクラ候補がこちらに近付く足音に、ただ耳をそばだてた。ドラクラ候補の足音が、シスターの前で止まる。そして、シスターに声をかけるのだった。
「おはようございます、シスター」
え?
この声って……。
聞きなれたその声に、思わず椅子の陰から顔を出した。
「あれ、スイ」
ドラクラ候補が少し驚いた後、いつもののんびりとした笑顔を見せた。
「こんな時間に教会にいるなんて、珍しいね」
「……ジョイ?」
ジョイはいつもと変わらない調子で、笑顔のまま頷くのだった。
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