大袈裟ではありませんか?
馬車の行列が霧に阻まれた事件から三日後。私は今日も馬車に揺られて、うとうとしていたのだが……。
「スイさん、起きて。到着しましたよ」
ベイルくんの声。
どうやら、どこかの町に到着したらしい。
「うーん……。おしっこは大丈夫だから、もう少し眠らせて」
「ち、違いますよ。王都に付いたんです。迎えもいっぱい来ているので、しっかりしてください!」
「え、王都?? あいたっ!!」
飛び起きて、天井に頭をぶつけるという定番のドジっ子ムーブをしてしまった。
「だ、大丈夫ですか?」
「平気平気! それより、王都に着いたってホント?」
「本当です。扉を開けたら、人がいっぱいいると思いますけど、びっくりしないでくださいね」
「ベイルくん、私を田舎者だと思って馬鹿にしているね? さすがに今回の旅で人混みにも慣れたんだから」
「本当ですか? じゃあ、開けますよ」
「はいはい」
ベイルくんが馬車の扉を開ける。
外の光が眩しくて、私は目を細めたため、大都会の光景がなかなか見えてこなかった。
「さぁ、降りてください」
「うん」
先に降りたベイルくんが手を差し出し、私はそれに支えられながら外へ出る。少しずつ目が慣れ、都会の景色が見えてきたのだが……。
まず目についたのは、正面に立つおじさんだった。
「ベイリール様のお帰りぃぃぃーーー!」
「……え?」
おじさんが叫ぶ。
すると、パンパカパーンッ!とラッパの音が。
「ど、どういうこと?」
よくよく見ると、私たちの前に赤い絨毯が敷かれ、それを挟むように楽器を持った人たちが整列している。
ラッパだけではない。
太鼓を叩く人、笛を吹く人など、どこまでも続くように整列しているのだ。
「こ、この人たち……何? 誰?」
思わず助けを求めるように、ベイルくんに聞いている。しかし、彼は平然と答えるのだった。
「迎えがいっぱい来てるって言ったじゃないですか」
「む、迎えって……そういうレベル? って言うか、これって『ぱれぇーど』ってやつだよね?」
「違いますよ。ただの迎えです」
ただの迎え……?
そんなことないだろ、この大行列!!
「王都の外に出て帰ってくると、毎回これなんですよ。レックスにやめるように言ったのですが、ダメだったみたいなんです」
ベイルくんは諦めたように溜め息を吐いてから、赤い絨毯の上を歩き始める。
「ちょ、待ってよう」
私はびくびくしながら、ベイルくんの後を追うしかなかった。
赤い絨毯は見たこともない大きな扉の前まで続いていた。そして、ベイルくんが扉の前に立つと、槍を持った兵士らしき人たちが背筋を伸ばしつつ叫ぶ。
「お帰りなさいませ、ベイリール様!」
そして、大きな扉が開かれる。
「お、お城だったんだ」
赤い絨毯や楽器隊に驚いて見えてなかったけれど、私は王都の中心にいたのだ。
「はい。ここが僕の家です。スイさん、ようこそ。トランドスト城に」
……何か思っていたのと違う!!
ベイルくんって、もっと庶民的な王子だと思ってたけど、ぜんぜん違った!
ベイルくんが先を行ってしまうので、私は恐る恐るお城の中に入って行くのだけれど、扉が閉まってもしばらくは楽器の音は鳴りやまなかった。
「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。
「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!




