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最強コンビ、出撃!

「レックス、僕も戦うから!」


必死に抵抗するベイルくんだが、馬車の中に放り込まれてしまう。


「スイ様も中に」


レックスさんは有無を言わせない態度だ。ガキんちょたちとは違って、ちょっと抵抗しにくいな……。

私は反省した素振りを見せながら、馬車の中に入ると、扉は閉ざされてしまった。


「話を聞いてよ、レックス! 僕も戦えるんだから!」


ベイルくんは扉を開けようとするが、頑固者の心のように固く閉ざされている。


「どうしましょう、スイさん。レックスのやつ、外から鍵をかけたみたいです!」


「ほ、本当に??」


無理やり開けてやろう、と私もトライしてみるが、やはり扉は動きそうにない。


ちくしょう、大人しくしたふりして抜け出すつもりだったのに!


「こりゃダメだ。せっかく活躍のチャンスだったのにね」


私は両手を後頭部に回し、そのまま背もたれに体を預けた。


「スイさん、諦めちゃったんですか??」


「何してもダメなときってあるからね。寝よう。寝て時間が過ぎるのを待つしかないよ」


「そんなこと言わず、手伝ってくださいよ」


「ダメダメ。エネルギーを無駄にするだけだよ」


しかし、ベイルくんは諦めず、扉を開けようと必死にチャレンジした。王子様のくせに扉を蹴り飛ばしたりなんかして、なかなかのヤンチャっぷりを見せるが、所詮は子どもの力である。扉は何をしても開きはしなかった。


刻一刻と時間は過ぎていく。無駄に頑張るベイルくんも諦め、大人しく座って溜め息を付いたころだった。


ドンッと馬車の外から地鳴りのような音が。


「なんの音でしょう?」


「かなり大きい音だったね……」


嫌な予感がしたのだろう。ベイルくんは再び扉を叩いた。


「レックス! 誰か! 外の様子を教えてください!」


しかし、誰からも応答はない。

それどころか、ドンッドンッと先程と似たような大きい音が連続で聞こえてきた。


しかも、音が近付いた気がする。


あれだけのフォグ・スイーパが集まっていたのだ。すぐに霧は晴れるだろう、と余裕だった私も、少しばかり不安を感じる。


「なんか揺れてませんか?」


「揺れてるね……」


私もベイルくんも耳を澄まし、少しでも外の状況を把握しようとした、そのときだった――。


「わあぁぁぁーーー!」

「ぎゃあぁぁぁーーー!」


馬車が大きく揺れた。

いや、ひっくり返った!


私もベイルくんもひっくり返った状態で、顔を見合わせる。


「やるしかないね」


「はい!」


このまま何もせず、死ぬわけにはいかないからね!


「行くよ! せーのっ!」


私とベイルくんは同時に扉を蹴り付ける。バキッ!という音と共に扉が吹っ飛び、私とベイルくんは外に出る。


思ったより簡単に扉が開いたな、と思ったけど、閂が傷一つない状態で落ちていた。たぶん、馬車がひっくり返った時点で、扉は普通に開いたのだろう。


「ど、どうしてこうなったの……?」


馬車がひっくり返った理由は分からない。だけど、嵐でもやってきたみたいに、馬車が何台もひっくり返っているから……衝突でもしたのかな??


「スイさん、あれを見て!」


ベイルくんが指をさすのは、トランドスト王家による馬車の長い列、その先頭の方だ。列は乱れて悲鳴が上がり、逃げ出す人々も見える。


「二人とも無事でしたか!?」


駆け付けてくれたレックスさんに、ベイルくんが慌てながら聞く。


「そんなことより、フレイルたちは?? 先頭の人たちは無事なの!?」


「フレイル様は無事ですが、ややデモンの数が多く、討ち漏らした敵が近付いています。先頭の皆は既に後方へ避難しているので、全員無事のはずですが……」


レックスさんも焦っているのだろう。明らかに落ち着きがない。そんなレックスさんにベイルくんは主張する。


「やっぱり、僕たちが戦うよ! 霧だって少しずつ近付いているじゃないか!」


「ダメです、ベイル様。安全なところにいてください!」


押し問答が続く。

レックスさんの手前、大人しくしていた私だが、少しずつ焦れ始める。いや、面倒くさくなってきた。


「レックスさん、過保護ではありませんか?」


「か、過保護……ですか?」


心外だったのだろう。

過保護の意味を飲み込めていないような、困惑した表情を見せるレックスさんだが、次第に表情を変えて行く。


「ベイルくんが大切なのは分かりますが、彼は王子で次の王様なんでしょう? 色々と経験させないと成長できませんよ。ベイルくんはこんなに良い子なのに、何もできない王子って思われているなんて、私は納得いきません!」


「それは、私も同じですが……」


「だったら、ここで戦わせてみせましょう。忘れていませんか? 今のベイルくんは、ドラクラ化になれるんですよ?」


「そうかもしれませんが、ベイル様がドラクラとして強いかどうかは……」


「めちゃくちゃ強いです」


私はレックスさんの言葉を遮って主張する。


「しかも、私が聖女やってきた中で、最強のドラクラと言って間違いありません」


と言っても、私の最初のドラクラはベイルくんなんだけど……。


「そ、それほどですか?」


「ええ、ダントツです。圧勝ですよ」


勢いに押されたのか、驚愕の表情を見せるレックスさん。


勝機!

ここで畳みかけなければ!

ポンコツだった私が聖女としてララバイ村に居座るために養われた、交渉術を見せるしかない!


「レックスさん、これからベイルくんが国を引っ張っていくなら、経験と実績が必要ですよ。あと、ここで活躍すれば人望だって得られるかもしれない」


「し、しかし……本当にベイル様がデモンと渡り合えるほど強いのでしょうか?」


「じゃあ、ちゃんとドラクラになれるか、それだけ確かめてみましょう。戦うかどうかは別にして、確かめるだけ」


「うむむむ……。分かりました、それだけでしたら……」


よしきた!

私はベイルくんの方に振り返る。


「レックスさんが許してくれたよ。ベイルくん、行くぜ!」


「はい、スイさん!」


私は小刀を取り出し、人差し指に傷を付ける。


「天にまします我らが星の巫女よ。今こそ我が血に貴方の祝福を。そして、彼に魔を払う力を与えたまえ!」


滴る血液を、私の前で跪くベイルくんの口元へ。見る見るうちに、ベイルくんの体が変質していく。そして、彼が立ち上がるころにはレックスさんと同じくらいに長身の超絶イケメンに変わっていた。


「レックス、マントと剣を借りる」


「べ、ベイル様……なのですか?」


ベイルくんはレックスさんの背中にあったマントで、服が割けて露出した肌を隠すと、私の方を見た。


「聖女様……。先頭の皆を助けに行きましょう!」


「オッケー!」


走り出すベイルくん。

彼を追いつつ振り返ると、ぽかんと口を開けるレックスさんの姿があった。

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