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なめんなよ、このロリっ子が

ベイルくんは躊躇う様子なく、馬車の扉を開く。さらに、お猿さんのように馬車の上に昇ると、トランドスト王家による行列の先頭がどうなっているのか目を凝らした。


「凄い霧です、スイさん。これ、絶対に僕たちの出番ですよね??」


「ふふんっ、わかっているじゃあないの、ベイルくん。私たちがいかに優秀なフォグ・スイーパなのか、みんなに見せてやろうじゃないの!」


「はいっ!」


嬉しそうな笑顔を見せるベイルくんは、本当に可愛らしい。でも、やんちゃに馬車の上から飛び降りると、馬車の列の前方へと駆け出す。私もその後を追うと、列の真ん中あたりで、人だかりができていた。


「人が集まっているね。なんだろう?」


「たぶん、フォグ・スイーパが集まっているのだと思います」


そう言われてみると、男女がほぼ同じ人数で集まっている。特に女性は白と赤の聖女の正装を着こんでいるから、間違いないようだ。


「見てください。フレイルとリリアです!」


ベイルくんが指をさす方を見ると、馬車の上に昇ろうとするフレイルくんとリリアちゃんが。


「みんな、落ち着いて!」


馬車の上でフレイルくんが、集まったフォグスイーパに呼びかける。


「確かに霧は濃く、デモンの数も多い。俺たちが遭遇した霧の中でも、過去一の規模かもしれない。だけど、大した問題じゃないことは、みんな分かっているはずだ。なぜなら――」


フレイルくんが腰に下げた長剣を抜いて、それを空に向かって突き出す。


「このフレイル・トランドストがいるのだから!」


フォグ・スイーパたちの歓声。

なんだか、フレイルくんってまだ子供なのに、とんでもないカリスマなんだ……。


私もちょっとかっこいいって思っちゃったよ。


「どれだけデモンが出てきても、俺が斬る。だから、みんなはいつものように呪木を探すだけでいい。さっさと霧を払い、無事に王都に帰ろう!」


再び歓声。

フレイルくんも笑顔でそれに応えたが……


一瞬、視線がこちらに向くと、表情が曇ったみたいだった。


「準備ができているものは先頭へ向かうように! 俺たちもすぐに向かう!」


そう言って、フレイルくんは馬車から降りると、私たちの方へ駆け寄った。


「兄さん、何をしているの? 危ないから、馬車の中にいないと」


フレイルくんの行動に気付いたリリアちゃんも瞬時に駆け付ける。


「ベイル、不安かもしれないけど、ここは私たちに任せて」


その後、リリアちゃんの視線がこちらに。


うっ、これは睨まれている……。


「ベイルを外に連れ出したのは貴方ですか? 霧が出ても私たちはすぐに対処できるので、大人しくしてください」


「違うんだ、リリア」


すぐさま、リリアちゃんと私の間に入るベイルくん。


「僕が自分で言ったんだ。フォグ・スイーパとして、戦いたいって」


「……ベイル」


リリアちゃんは真剣なベイルくんの視線を受け止める。そして、優しい笑顔を見せた。


「焦らなくても大丈夫だよ。ベイルはすぐにフォグ・スイーパとして活躍するんだから。今日は悔しい想いをするかもしれないけど、ここは私たちに譲ってよ」


「そうだよ、兄さん。それとも、俺たちはそんなに頼りない?」


「そんなことはないけど……」


……さっきから三人の熱い友情を目の当たりにし、置物のようになっている私。


まぁいいさ。もう少し置物に徹することにしよう。


「じゃあ、これならどう?」


リリアちゃんが提案する。


「私たちに一時間……いや、三十分だけ時間をちょうだい。それまでに、この霧が晴れなかったら、私もベイルに頼るから」


「三十分って、あれだけの濃い霧を、そんな短時間で??」


今度はフレイルくんがベイルくんの肩を叩く。


「見ててよ、兄さん。これだけ近くで、兄さんに俺の活躍を見せられるのは、初めてなんだから、良い格好させてくれよ」


「でも、僕は……」


何とも器用な二人の気遣いに、ベイルくんは少し押され気味のような。


オッケーオッケー、ここは私の出番だな。


「ちょっと待った!」


私はベイルくんの前に立つ。


「二人とも、ベイルくんがやりたいって言っているんだから、やらせてあげればいいじゃない。それとも、ベイルくんが何もできないとでも思っているの?」


「あ、貴方は!!」


リリアちゃんがキッと感情的な表情を見せる。


「何も知らないくせに、出しゃばらないで!」


子供にしては迫力ある剣幕だが、その程度じゃあ私は引き下がらないよ。


「いやいや、私は知っているよ。全部を知っているわけじゃないけど、ベイルくんが凄いってことは誰よりも知っている。ベイルくんは誰よりも強いドラクラだ。ここにいる誰よりも活躍できるくらい、本当に強い。もちろん、君たちよりもね」


「黙って! それ以上、踏み込むようなことを言ったら、私は貴方を許しません!」


「リリア、興奮するな。血に影響が出たらどうする?」


フレイルくんが掴みかかってきそうなリリアちゃんを制止する。そして、冷静な態度で私に言うのだった。


「あの、スイさん。兄さんのこと、そんな風に言ってくれるの、俺は嬉しいです。俺も兄さんが強いドラクラとして活躍する日がくる、って思っているから。だけど、霧の中は本当に危険なんです。ここは、慣れている俺たちに任せてください。兄さんの力は、別の機会に借りたいと思うので」


むぐぅ……。

これなら、リリアちゃんみたいに感情的にきてくれた方がやりやすいじゃないか。


どうしよう、何て言い返そうかな。と、私は考え込むべきではなかった。


「レックス、こっち! 兄さんを馬車に」


「ベイル様、いつの間に!」


私たちの後ろに、レックスさんがいたらしい。レックスさんは状況を把握したらしく、こちらに駆け寄ると、ベイルくんを抱き上げてしまうのだった。


「危険だと言ったでしょう。馬車に戻りますよ。スイ様も、あまり場を乱さないように」


「待って、レックス! 僕は……!!」


いやいやと暴れるベイルくんだが、強制的に連れて行かれてしまう。


「貴方も、早く馬車に避難したらどうです?」


取り残された私に、吐き捨ているように言うリリアちゃん。ほんと、気が強いなぁ……。


こうなったら、泣くまで罵ってやろうか?

このロリっ子がよぉ!


「スイ様、早く!」


誰でも傷つくであろう罵詈雑言を吐こうとする私だったが、レックスさんに怒鳴られてしまう。これには私もしょんぼりとして撤退するしかなかった……。

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