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眠気もぶっ飛ぶ超会議

「大聖女、スイ・ムラクモの証言によると、リーダーはライナス・トランドストと名乗り、貧民街の出身。共に住む人々の救済のため、テロ行為の及んでいる、とのことです」


「まさか、貧民街に住む人々の不満がテロを生み出していたとは。国を治めるものとして、不甲斐ない気持ちでいっぱいだ。しかも、トランドストの名を名乗るなんて、責められている気になるなぁ」


「しかし、さすがはスイちゃん。これまで実態が不明だったテロリストどもの目的だけでなく、リーダーまで特定してしまうとは。マジ惚れる」


……眠い。嗚呼、眠い。


「次に、国立黒霧研究所の呪木解析室チーフ、ニア・ジェニイ博士からの報告です。博士、お願いします」


「はい!」


本当に眠すぎる。

このまま、目を閉じたら、どれだけ楽なんだろう。


「先日のニュートランドストホテルの占拠事件について、犯人たちが霧の中を逃亡した、という報告がありましたが、その方法が判明しました。資料の三ページ目をご覧ください」


「ふむ。ホテルを囲むように円が描かれているようだが……?」


「はい。その赤い円が事件の際にホテルを包んだ、黒霧の発生範囲です」


そうそう、霧だよ。

霧が出るんだよね、毎日毎日。


最近さぁ……霧の除去とテロ撲滅キャンペーンのイベント参加ばっかで休みの日もないし、寝る時間だってないのよ。それなのに、こんな意味の分からない会議に参加させられて……。


「この赤い円の個所を見ると、霧はホテルを完全に包み込んでいた、というわけではないのか」


「ご指摘の通りです。確かに、呪木はホテルを囲うように植えられていました。しかし、霧の発生範囲は完全にホテルの周囲を覆っていたわけではありません。恐らく、発生範囲を計算した上で呪木を植え、脱出ルートとしてあえて霧が薄い部分を作ったと思われます」


だってさ、私がこの場にいたところで、何も理解できないし、意見だってないもん。そんなんだったら、寝てた方がマシじゃない?


「そんな馬鹿な。偶然ではないのか?」


「いえ、緻密に計算されたものだと考えます。犯人の中には、呪木と黒霧について精通した人間が存在しているはずです」


「そんな人間が貧民街にいると言うのか!」


「……何もテロリストのメンバーすべてが、貧民街の人間とは限らないのでは?」


おっと、首がかっくんってなっちゃったよ。皆がざわざわと騒ぎ出さなければ、たぶん落ちてたわ。うーん、でも落ちてもいいような気がする。寝よう。ここは寝てしまおうじゃないの。


「スイさん、大丈夫ですか?」


「ふえっ?」


隣のベイルくんに声をかけられ、今度こそ目を覚ました。


「うん、大丈夫。あと二秒で寝るところだったけど」


「信じられない。重大な会議なんですよ?」


ベイルくんを挟んで一個隣のリリアちゃん。この前の件があったせいか、私を見る目がさらに厳しくなった気がする。でも、ベイルくんの方は相変わらず優しい。


「もう少しで終わるはずですから。我慢してくださいね、スイさん」


「うん、頑張る……」


と言いつつも、ぼーっとした頭で進行役の人の声に耳を傾けた。


「では、テロリストたちの潜伏場所について、ビーンズ将軍からお願いします」


「うむ。既に貧民街に間者を入らせた。一ヶ月以上に渡る調査の結果、ライナス・トランドストの潜伏場所を特定した」


……へっ?

ライナスくんの居場所、分かったの??


私は顔を上げ、会議室の奥にいる将軍を見た。将軍は私の視線に気付くと、視線をキリッとさせ、なぜか二度頷く。


……意味分からんから、早く続きを話しなさい!!


「貧民街の二十三地区。貧民街の中でも比較的に所得があるような人間が住む場所に、やつの自宅を発見した。三日後、我々は少数精鋭の部隊によって、ここを攻撃。ライナス・トランドストを捕獲する。もちろん、生死は問わない」


「ま、マジでーーー!?」


思わず立ち上がった私。

会議に参加した全員の視線が集まったが……。


「あ、いや……何でもありません」


すぐに腰を下ろした。自宅を攻撃、しかも生死は問わないって……ライナスくん、大丈夫かな。殺されちゃったりしたら、どうしよう。


「……スイさん」


隣のベイルくんが私の名を呼んだが、彼の心配そうな目に、気付くことはなかった。

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― 新着の感想 ―
トランドストの名前は名乗ってるだけなんですかねぇ……。 いや絶対なにかあるはず! ベイル君と同じような体質してますしね! 真相が気になります〜!
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