たまにニュースで見るダメな手口
ベイルくんは私をお姫様抱っこしたまま、堂々と正面からホテルの中へ入って行った。既に霧の影響はなく、ロビーには一仕事を終えた騎士の皆が体を休めていたが、妙に生気に溢れたベイルくんの登場に、誰もが視線を上げる。
そして、皆の注目を浴びながらエレベーターの方に進むと、騎士の皆がひそひそと囁き合う声が聞こえてきた。
「大聖女様、うっとりした顔になってないか?」
「おいおい、リリア様との関係はどうなるんだ?」
「俺、ファンだったのに。ショック……」
ち、違うんだよ!
これは、そういうのじゃないから!
エレベーターに乗り込み、私たちは最上階のスイートルームへ。
「おお、凄いじゃん」
とてもホテルの一室と思えない。
普通に……金持ちの家だ!
ソファもベッドも窓も、全部大きいし、何よりもこのラグジュアリーな雰囲気。
……あれ?
私、思ったより感動しないな。
なんでだろう。
あ、そうか。私って普段から王城に住んでるから、これくらいの豪華な空間では驚かなくなっているんだ!!
「なんかショック……」
自分の変わりように、がっかりする。でも、何にがっかりしているのか、自分でも分からない。そんな私の気持ちをどう解釈したのか、ベイルくんが耳元で囁いてくる。
「安心してください。満足させてみせます」
「へぇ?」
いつだかみたいに、ベッドへ放り投げられるのでは……と思ったが、そんなことはなかった。ベイルくんは私をソファに座らせると、冷蔵庫から飲み物を持ってくる。
「これを飲んでください。少し落ち着くはずです」
「ありがとう」
喉が渇いていたので、一気に飲み干すのだが……。
「うえっ!! これ、お酒じゃない!?」
ベイルくんを見ると、これまでにないほどの美しい笑顔を見せる。
「おや、ジュースと間違えてしまったようです」
こ、こいつ……一服盛りやがったな!?
やり口が、たまにニュースになる悪い大学生のやつじゃないか!
でも……やばい、効果は絶大だ。
余計に体が熱くなって、頭がふわふわしてしまう。
「さぁ、約束通り……一緒に湯浴みを」
そう言って、ベイルくんは私のドレスを脱がし始める。
「こ、こら! やめなさい!」
「なぜです? 以前、私に着替えさせてほしい、と言っていたじゃないですか」
「そんなこと……」
い、言ったわ!
前、めちゃくちゃ疲れていて、パジャマに着替えるの面倒だったからベイルくんに頼んだんだった。
「でも、それは子どもの君に頼んだだけで……。しかも、あのときは自分でやれって言ってたじゃない!」
「今は大人なので、大丈夫です」
「そういう問題か!?」
うぅぅぅ……。
ダメだ、体の自由が。
私はされるがまま、生まれたままの姿に。
「や、やめてぇ。そんなに見つめるなぁ!」
大事なところを腕で隠していても、恥ずかしくてたまらないんですけど!
「隠さないでください。普段はあられもない姿で私の前を歩き回るのですから、今さら……」
「だから、子どもの君の前だけで……!!」
「同じ男です」
「いや、別人だよ。いつものベイルくんは素直で可愛くて……って、何やっているんだ君は!!」
ベイルくんが突然服を脱ぎ出していた。しかも、躊躇いなく全裸に。顔を背けたけど……
アレを見ちゃった、かも。
「湯浴みをするのですから、服を脱ぐのは当たり前では?」
そう言いながら、ベイルくんが私を持ち上げる。そして、お姫様抱っこで浴室へ。
ほ、本当にお風呂入るだけ……だよね?
しかし、浴室に通じる扉が開いた時は、そんな不安を一瞬忘れられた。
「な、なにこれ……!!」
夜空の下、どこまでも続くような湯の揺らめき。それは、視線の先にある夜景と一体であるように見えた。きっとお風呂に入ったら、空中に浮いているような気分になるんだろうな。
「こんなの初めて……」
「嬉しいです。聖女様の初めてを、すべて私にいただきたい」
私はお風呂と夜景に目を奪われていたせいで、何も考えずに言ってしまった。
「ベイルくんに会ってから、色々な初めてを経験させてもらったからね。これからも、素敵な初めてがあるんだろうなぁ」
「もちろんです。聖女様の初めては誰にも渡さない」
そこで、ベイルくんと目が合う。凄くクールで爽やかで綺麗な顔しているけど……
こいつ、エッチなこと考えてない?
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