表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/239

一歩及ばず

ベイルくんは一直線にライナスくんへ向かう。間合いが詰まると同時に、剣を横一文字に。しかし、ライナスくんはそれを軽々と飛び越え、私の方に突っ走ってきた。


「スイさーん! 愛してるよ!!」


「ふざけるな!!」


踵を返したベイルくんは、凄まじいスピードでライナスくんに追いつくと、その背に剣を振り降ろした。ライナスくんの背中が裂かれた、ようみ見えたが、それは彼の上着を少し傷付けただけ。むしろ、華麗に体を捌き、ベイルくんの足を払った。


「なに!?」


ライナスくんに軽く足をすくわれ、倒れ込んでしまうベイルくん。そこに、銀の煌めきが落とされ……鋼の音が霧の中に響いた。重なり合う剣と剣。しかし、体勢としては倒れているベイルくんの方が不利に見えるけど……。


「よっわ! その程度で、これからスイさんを守れるのか?」


ライナスくんの罵倒にベイルくんは表情を歪める。


「スイさんも俺の方がいいよね?」


追い打ちのつもりか、私に声をかけてくるライナスくん。


「私は子どもにそういう感情を持ちません!」


私が言い返すと、ベイルくんは目の前の剣を払い、ライナスくんの腹部を蹴り飛ばす。そして、素早く立ち上がると、剣を突き出した。


「やっぱり、チビの剣は軽いな」


言葉の通り、ライナスくんはベイルくんの剣を軽々と払い、反撃の裏拳を振る。それは見事にベイルくんの顎を弾き、ベイルくんの膝から力が抜けた。


たたらを踏むように後退りするベイルくん。その背には、焦りが感じられた。


「英雄と呼ばれる王子がこの程度なら、トランドスト王国の歴史も終わりだな」


ライナスくんの挑発にベイルくんは奥歯を噛みしめる。


もしかして……なんだけど、ベイルくんが押されている?


今まで、どんな敵だろうと圧倒的な力を見せつけてきたベイルくんが??


「これは焦らなくても、スイさんは俺のものになるかなぁ」


度重なる挑発に、ベイルくんは感情のまま飛び出してしまう。二度三度、剣が交錯するが、最終的にはライナスくんがいなして、ベイルくんを転ばせるか、後退させる展開が続いた。


このままじゃ、本当に負けてちゃう!


「ベイルくん、援護するよ! いつもみたいに、協力して倒そう!」


私は短剣を取り出し、手の平を切る。そして、空間に干渉してライナスくんの足元に意識を潜り込ませた。


「俺には通用しないよ!」


ライナスくんは私が逃した意識の手を斬る。しかし、それは隙を見せるも同然。ベイルくんは一気に踏み込み、ライナスくんの胴を狙って剣を振った。


タイミングも完璧!

これは勝った!


と思ったのに、やはり後一歩が届かない。


「私だって本気を出しちゃうんだから!」


私は意識の手をどんどん伸ばし、さまざまな方向からライナスくんを包囲する。


「スイさんったら、そんなに俺を抱き締めたいんだね! 嬉しいけど、そうはいかないよ!」


ライナスくんは次々と私の意識の手を斬っていく。凄いスピードで斬られてしまうものだから、意識の手は一本たりとも彼に届かないけど、だったら増やすだけ。私は体に負担を覚えつつも、意識の手を増やす。


私の限界、三十本に達すると頭痛に襲われた。それなのに、ライナスくんの身のこなしは凄まじく、一瞬でも彼に触れることはない。


ただ、その間にベイルくんが背中にあった斬呪刀を手にする。そして、十分に腰を落とし、ドンッと地を蹴って距離を詰めると、何もかもを引き裂くような大剣の一撃が放たれた。


ズドーンッ!と、爆発音に近い音と衝撃が広がり、土煙が舞い上がる。


「げほっ、げほっ!」


咳き込みつつ、視界が晴れるのを待つと……。


「だ、大丈夫……かな?」


ベイルくんが斬呪刀を振った周囲は、地面が抉れて、何もかもが吹き飛ばされていた。


凄い破壊力だ。

あの中心にいたライナスくんは……?


「心配ありがと、余裕で生きているよ」


その声は背後から。振り返ると、美形の唇が迫ってきた。


「や、やめんかぁぁぁ!!」


何とか両手で抵抗するが、少しずつ形のいい唇が迫ってくる。や、柔らかそうだ……。


「聖女様!」


すぐさま駆け付けたベイルくんが、斬呪刀を突き出すが、ライナスくんは私から体を離すと、飛び上がる。そして、綿毛のように宙を舞うと、何事もなかったかのように着地するのだった。

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
戦闘中にもかかわらずヤキモチをやくイケメンと積極的なイケメン! これは悩ましい〜! イケメンが気になって戦いが頭に入ってこない笑 モテる聖女はつらいですね(*´艸`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ