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あのときのイケ……

「天にまします我らが星の巫女よ。今こそ我が血に貴方の祝福を。そして、彼に魔を払う力を与えたまえ!」


リリアちゃんの血を口の中に含み、フレイルくんの体が筋肉質に変わる。


「さて、デモンたち。運が悪かったな。こっちはストレスが溜まっているんだ。お前たちで解消させてもらうから、覚悟しておけよ!!」


フレイルくんがザッと飛び出し、剣を振るう。そして、先頭に立っていたデモンの足を切断し、転倒させた。かと思うと、その奥に立っていたデモンの胸に剣を突き立てている。


「兄さん! ここは任せて、さっきのやつを追って!」


続けてリリアちゃんが微笑みを見せる。


「呪木の除去も私たちに任せて。ベイルは敵のリーダーだけを狙って!」


「フレイル、リリア……!!」


感激して目をキラキラさせるベイルくんがったが、そんな彼を私は抱きかかえる。


「ほら、早く行くよ! 逃げられちゃうから!」


「は、はい」


ベイルくんを抱きかかえたまま、走り出そうとする私だったが「くっ付きすぎです!」とリリアちゃんに怒られてしまった。


今度こそ、外に出ようと思ったが、次はレックスさんに引き止められてしまう。


「ベイル様、受付に預けていた斬呪刀です! あと、私の剣も使ってください」


レックスさんが手にしていたのは、ベイルくん専用の大剣、斬呪刀と彼が腰に下げていた長剣だ。


「二人とも、お気をつけて!」


「ありがとう、レックス!」


「行ってきます!」


私が斬呪刀を担ぎ、ベイルくんがレックスさんの剣を抱えてホテルを出ると、そこは濃い霧が広がっていた。


「これだけの霧で、テロリストたちはどうやって逃げたんだ?」


「向こうには聖女が一人いたみたいですね。でも、いくら聖女が霧を寄せ付けなかったとしても、あれだけの大人数を一人ではカバーしきれないはずです」


「うーん……。いや、考えるのは後! 私たちもやるよ!」


「はい!」


私は再び手を切って、ベイルくんの方へ差し出す。


「天にまします我らが星の巫女よ。今こそ我が血に貴方の祝福を。そして、彼に魔を払う力を与えたまえ!」


ベイルくんは私の血を口に含むと、少しだけ苦悶の表情を見せる。が、次の瞬間、ドンッという音と共にベイルくんの体が光り、大人になった彼の姿が現れるのだった。


「よっしゃ! ベイルくん、頼んだよ!」


ベイルくんは斬呪刀を背負い、レックスさんの長剣を腰に下げると、黙って私を抱きかかえた。


「こら! いきなり何するのさ!」


「やつを追います。この方が速い」


「う、うん」


ベイルくんは私を抱えているにも関わらず、物凄いスピードで霧の中を走った。


「聖女様、やつらの位置は……分かりますか?」


「たぶん、あっち……かな」


私たち聖女は呪木やデモンの存在は感じ取れるが、人間の気配を察知できるわけではない。だから、本当に何となくでしかなかった。でも、私はその方向に何かを感じたのだ。


そして、その直観は意外にも……大当たりを引いてしまう。


霧の中、人影が私たちの前に現れた。ベイルくんがゆっくり私を降ろすと、その影がこちらに気付く。


「あれ? スイさんに、チビのベイリールじゃん。早いな、もう追いついたのか」


私たちの進行を遮るように現れたのは、見知らぬ一人の男。いや、どこかで見たことあるような……。


「き、君は……あのときのイケメン!!」


私の言葉にベイルくんが、ぎょっとした顔でこちらを見る。その勢いに、私は思わず「ごめん」と呟いた。


べ、別に謝ることではない、と思うけど……。


……とにかく、目の前に現れた謎のイケメンは、例の王都西部黒霧発生事件の際、巨大な呪木の前で、私たちと戦った、あのドラクラだったのだ。


驚く私たちに、謎のイケメン――いや、謎のドラクラと呼ばないと怒られる――は、笑顔を見せるのだった。


「あはははっ! スイさん、俺の顔が好みなんだね。嬉しいなぁ」


あれ?

この感じ、まさか……!!


その瞬間、私の中にある記憶のパズルが、急に正解を導き出し、一つの事実に至るのだった。


「も、も、もしかして、あのときのイケ、じゃないや。あのときのドラクラは……ライナスくんだったのか!!」


仰天する私に、謎のドラクラ……ライナスくんはニッコリと笑った。


「そうだよ、スイさん。覚えていてくれて、本当に嬉しいよ」

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