形勢逆転!①
「動くな、テロリスト。スイ様を離せ」
レックスさんの声が聞こえたかと思うと、誰かが私の体を引っ張った。そして、目隠しが取れる。
ま、眩しい……。
けど、何とか顔を上げて状況を理解しようとすると、バイトくん……いや、ライナスくんの喉元に剣先を突き立てるレックスさんの姿が。
なんだよこの人。すげぇ美形だな。
なんだよあの鼻の形。
目もキリッとしているし。
誰がこの造形を考えたんだ?
え? 誰なんだい?
超絶かっこいい顔を見上げていたのだが、突然横から別の人に声をかけられる。
「スイさん! 突然で申し訳ないですが、干渉をお願いします!」
「へっ??」
リリアちゃん、いたのね。
どうやら、私を引っ張ってライナスくんから引き剥がしたのは、彼女だったらしい。
これは、後で聞いた話なのだけれど、
エレベーターが止まったのはリリアちゃんの作戦だった。私が捕まったところを目撃したリリアちゃんは、まずはレックスさんを見つけ、同時に無線機で一階にいるキシさんに連絡。
エレベーターを止めさせ、すぐにレックスさんの拘束を解いてから、私を含めた人質を救出する作戦を考え、今実行に至った……というわけだ。
そんな、頭の回転がめちゃくちゃ早いリリアちゃんは、短剣を取り出すと、急に私の手を切った。
「い、痛いよ、リリアちゃん!」
「だから、先に断ったでしょ。ほら、あっち見てください!」
「うわっ!」
リリアちゃんが示した方向を見ると、パーティ会場を占拠するテロリストたちの姿が。彼らにとってもレックスさんとリリアちゃんの登場は、突然のことだったらしく、混乱しているみたいだったが、すぐに私たちを捕えようと動き出した。
「スイさん、早く!」
「おおお、オッケー!!」
私は慌てて、意識をテロリストたちの方へ向ける。
一人、二人……と捕らえるが、動き回る標的はちょっと難易度が高い。
「スイさん、私もいるので、落ち着いて対処してください」
助けに来たのは、二人だけでなく、ライムちゃんも一緒だった。
「心強いね! 全員捕まえちゃおう!」
「私は人質を解放します!」
リリアちゃんが会場の方へ走り出したので、私はその背に向かって叫んだ。
「リリアちゃん、ベイルくんじゃなくて、先に将軍を助けるんだよ!!」
「わ、分かってます!!」
よし、テロリストを半分以上は捕まえたけど、だんだん頭も痛くなってきたぞ。全員捕まえられるか、ちょっと不安だ。少しだけ眩暈を感じ、私がふらついたとき、レックスさんが声を上げた。
「スイ様、大丈夫ですか!?」
そのとき、ライナスくんが動いた。腰に下げた剣を素早く抜き、レックスさんの剣を払う。
「しまった!」
さらに、レックスさんに向かって剣を突き出すが、それは打ち払われ、何度も間近で鋼がぶつかり合う音が響いた。
「さすがはトランドスト騎士団の団長だ。他とはモノが違うね!」
「子どもに遅れは取らん!」
二人とも信じられない速さで剣を振り、私はその激しさに目を奪われてしまったが……。
「スイさん、集中です!」
横のライムちゃんに怒られてしまう。そうだよ、その通りだよ。私は会場に入り込んだリリアちゃんに近付くテロリストたちを優先して拘束していく。
既に私の限界、三十に届く数の敵を捕まえたけど……!!
「お父様、お願いします!!」
「応!!」
ちょうどいいタイミングで、リリアちゃんが将軍を解放するのだった!!
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