確かに田舎娘ですが
おっさんたちは私を拘束すると相談を始める。
「どうする? ポリス呼ぶか?」
「いや、今ポリスたちは霧の対応で忙しいからなぁ。勝手に牢屋にぶち込んでおくか?」
ろ、牢屋に……?
完全に犯罪者扱いじゃん!
「でも、この娘……本当に王子様の知り合いかもしれねぇぞ?」
最初に会話したおっさんが、その可能性に気付いてくれる。なので、私は両腕の自由を奪われた状態のまま主張した!
「そうそう! これ以上、私に手荒なことすると後悔するよ! 王子様も怒っちゃうんだから!」
おっさんたちは困り果てたように目を合わせるが、仕方なしに結論を出した。
「念のため、王子様に知り合いかどうか聞いてみるか」
「だな。それがいいかもしれねぇ」
や、やった!
ベイルくんに会えればこっちのもんだ!
期待を抱きながら、ぐるぐる巻きの私は引きずられていくのだった。
村役場の会議室らしいところへ引きずられていくと、大人たちの騒がしい声が聞こえてきた。
「さぁ、ベイリール様! お好みの聖女を選び、どうかこの村を霧から守ってください! 」
「えっと……ですね」
あ、ベイルくんの声だ。
私は飛び起きるとベイルくんの姿を見つける。
彼は会議室の真ん中で、大人たちに囲まれ、目の前には数名の女性が並んでいた。どうやらこの村の人々は、あの中からベイルくんに聖女を選ばせて、ドラクラとして霧を排除させるつもりのようだ。
しかし、そうはさせない。
だって、ベイルくんの聖女は私なんだから!
「ベイルくん! こっちだよーーー!」
私が叫ぶと、ベイルくんの視線がこちらに。
「スイさん!」
早く助けておくれ、と駆け寄ろうとしたが、私たちの間に割ってい入る、新しいおっさんが!
「なんだ、この騒がしい女は! 追い出せ追い出せ!」
むっ、何だか今までのおっさんと少し違う。なんて言うか……妙に偉そうで意地悪そうじゃないか。
「しかしですね、村長」
すると、私を捕えたおっさんが意地悪そうなおっさん――どうやら村長らしいが――に説明する。
「この女、聖女を名乗る怪しいものなのですが、ベイリール様の知り合いだと主張するんですよ。万が一のことがあっちゃいけねぇので、王子様本人に確認しようかと」
村長は何やら一瞬考え込んだように見えたが、すぐに「ふんっ」と鼻を鳴らした。
「よく見ろ! こんな小汚い田舎娘、どう見ても聖女のわけがなかろう」
「こ、小汚い田舎娘ですって……!?」
見下すような態度に、私は思わず頭に血が上ってしまう。
「確かに私は田舎から出てきました。でも! 聖女としてちゃんとベイルくんをドラクラに変身させられます! 試しに、私の血を彼に飲ませてみなさいよ。この村だって、すぐに救ってあげるんだから!」
主張する私を冷ややかな目で見つめる村長。
「な、なによ……」
意外なリアクションにこっちが動揺していると、村長は再び「ふんっ」と鼻を鳴らすのだった。
「本当にやかましい小娘だ。とりあえず、猿ぐつわで口も塞いでおけ」
「いいんですか?」
困惑するおっさんだったが、村長は高圧的な態度を見せる。
「今は王子様の協力を得て、霧を排除することが最優先だ! こんな小娘は後回しに決まっているだろ! 話をややこしくされたら困るから、黙らせておけと言っているのだ」
「そうかもしれませんが……」
まだまだ納得しない賢明なおっさんだったが、村長は一歩前に出て詰め寄る。
「私はこの村を守る責任があるんだ。それとも君は、村人全員がデモンに食われてもいいと言うのかね?」
「そ、そんなことは……。分かりました、口も塞いでおきます」
「えええ? 待ってよ、喋らせて! ベイルくん! ベイルくーーーん!」
私の必死な叫び声は周りの喧騒に掻き消され、猿ぐつわによって「ふがふがっ」という異音に変えられてしまうのだった。
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