久しぶりに縛られて…
「無線機? なにそれ?」
私が聞くと、騎士さんが教えてくれた。
「小型の電話みたいなものです。今回の任務で初めて配備された、試作機なんですよ」
「へぇぇぇ! 電話線もないのに、話せるんだ。っていうか、こちらレックスって言っているんだよね?? レックスさんが話しているってこと??」
「そうです。ちょっと静かにしててください」
騎士さんは無線機に向かって話し始めた。
「レックスさん団長、こちらキシです!」
キシ?
この人の名前、キシって言うの?
冗談みたいな名前だなぁ。
って、今はそれどころじゃないか……。
キシさんは引き続き、レックスさんに呼びかける。
「レックス団長、緊急事態です。応答、お願いします!」
『こ、らレックス。……に襲撃され、拘束……る』
なんだなんだ?
聞こえにくいぞ。
私が眉を寄せつつ耳をそばだてていると、ライムちゃんが言った。
「電波が悪いんでしょうね」
「電波?」
「テレビとかたまに映りにくくなるのと同じです。電波を上手く受信できていないのだと思います」
「……そうなんだぁ」
よく分からないから、ここは大人しくしてよう。
「ぬぅ、聞こえん。この役立たずが!」
痺れを切らしたように、レックスさんがぶんぶんと無線機を振り、もう一度耳を近付けると……。
『こちらレックス!』
おおお、聞こえた!
全員が無線機に耳を近付けると、はっきりとレックスさんの声が聞こえてきた。
『何者かに襲撃され、拘束された。救援を頼む!』
「襲撃!? レックスさん、大丈夫ですか??」
『その声は……スイ様?? どうしてそちらに??』
おおお、レックスさんに私の声がちゃんと届ている! なんか感激するなぁ。
「レックス、説明は後です」
せっかくレックスさんとお話できると思っていたのだが、リリアちゃんに割って入られてしまう。
「こちらも緊急事態で、貴方の力を必要としています。今どこに?」
『やはり、何か事件があったのですか?』
「恐らくは、西部黒霧発生事件と同じ……テロリストによるデモンを使った同時攻撃です。だから、すぐに貴方の力が必要なのです」
『恐らくは、十階の掃除用具入れです。縛られて動けません。何とか体をよじって、この無線機に声をかけています』
「十階だね! すぐ行きます!!」
「ちょっとスイさん、待って!」
私はリリアちゃんの制止を聞かず、速攻で階段を駆け上がって、十階へ向かった
襲撃された、って言ってたけど、レックスさん怪我してるんじゃないかな。しかも、閉じ込められているなら、不安なはず。私が一番に駆け付けて助けてあげるんだ。
そしたら、レックスさんだって私のこと……。ぐふふっ!!
降りてきたときとは違い、私はノンストップで階段を駆け上がった。そして、十階のフロアにつながるドアを開ける。
さぁ、レックスさん。助けてあげるからね!
しかし、ドアを開けたその先には……。
「おっ。スイさん、見ーつけたっ!」
「ば、バイトくん……??」
剣を担いだバイトくんが、私を見て嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
そして、私は為す術もなく、捕まってしまうのだった……。
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