お前それ詐欺師だぞ
私は連れ去られたベイルくんを追って、村役場へ殴り込む勢いで入って行ったが、受付のおじさんに呼び止められてしまった。
「ちょっとお嬢さん。今は重大な作戦会議中だから、勝手に入られちゃ困るよ」
「だって、私のベイルくんを誘拐するから! 私たちにフォグ・スイーパの仕事を頼みたいなら、まずはベイルくんを返して。話は私が聞くから!」
「あんた、王子様のマネージャーかい?」
「違います。私は聖女。聖女、スイ・ムラクモです。彼とはフォグ・スイーパとして長く組んでいるんだから!」
長くといっても半日程度だけど。
その辺りの感覚は人それぞれだから、まぁ良しとしよう。
しかし、おっさんは疑っているのか、やや目を細めて私を凝視する。
「あんたが聖女様? 見えねぇけどな」
「見た目で判断するんじゃない」
腹が立って、今にも胸倉に掴みかかりそうな私だが、おっさんは冷静に言うのだった。
「でも、あんた……王族聖女の資格はあんのか?」
「……王族聖女?」
「……知らねぇのか?」
……聞いたことないけど?
「黒霧の中を歩けたら、誰でも聖女じゃないの?」
おっさんは呆れたように溜め息を吐く。
「おめぇ、どんだけ田舎から出てきたんだよ。確かに昔は、黒霧の中で歩ければ、聖女様ってもてはやされたけどよ、そんなやつ、今はどこにもいねぇぞ」
おっさんは説明してくれる。
「あのな、最近の聖女様は国家資格の取得が義務付けられていて、ちゃんと国に登録しなければなんねぇんだ。その上で、王族とフォグ・スイーパを組むとなったら、王族聖女っていう、さらに難しい資格を取得しなければならねぇ。もし、資格もねぇのに聖女を名乗ったら、おめぇ……」
おっさんは感情のない目で、私に告げる。
「詐欺師だぞ」
「さ、詐欺師……!?」
私とおっさんは、数秒の間、無言で見つめ合った。が、おっさんは自分の使命を思い出したように、役場の奥に向かって叫び出す。
「おーい! おーい、誰か! この女をひっ捕らえろ。犯罪者だぞ!」
おっさんの呼びかけに応じて、奥からまた別のおっさんが数名出てきた。
「どうしたどうした。王子様が現れたって言うのに、騒がしいぞ」
「それが、こいつ資格もねぇのに聖女を名乗って、王子様を利用しようとしていたみたいだ。詐欺師、ってやつだな」
「詐欺師か。そらいかんな。縄持ってこい!」
待って待って!
本当に縄を持ってきたぞ!
「ちょ、ちょっと待って。誤解だよ! 話せばわかるって!」
私は何とか村人たちの行動を引き止めようとしたが、彼らは容赦なかった。
「ぎゃあああーーー!」
と、いうわけで私は村人たちに縄でぐるぐる巻きにされてしまうのだった。
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