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事件発生

食事を終え少しして食堂を後にした三人。次の場所へ向かおうとした瞬間、街の中心部から大きな花火が上がった。何かの祭りかと修は思ったが、二人を見ると何やら険しい顔をしていた。いつもはおちゃらけているカルゼですら、だ。

「どうしたんだ?何かあるのか?」

何が何だかわからない修でも感じた、二人の様子は異常だ、と。

「修、悪いが一緒に来てくれるか?危ないと判断したらすぐに避難させるから。理由は向かいながら話す」

「あぁ、大丈夫だ。急いで向かおう」

なにやら緊急事態が起きていると判断した修は二人に付いていくことにした。と思ったらすでにカルゼは居なくなっていた。先遣隊といった様子で軽やかに離脱していたのだ。

「この大きな花火は秘密裏に対応し民たちに感づかれてはいけない事案を指し示す。考えられるのは森の中で問題が起こった時、街に不審者が現れた時、首長に命の危機が迫っている時と三段階ある。今のは一つ目だから森の中の事案だな」

と、冷静に分析していて門の方へ向かっていた。この街に門は一つしかないという事を知っているファグルに付いていく途中、ファグルとカルゼがしていたという周囲探査をしてみる事にした。まだまだ魔力の操作がおぼつかない様子ではあったが試行錯誤しながら進んでみると、進んでいる方向に魔力反応を掴んだ。

「この魔力反応って敵なのか?」

「!この反応を探知できたのか?やはり修は優秀な人の様だな、敵かどうかは対峙してみないと判らないが、恐らく警戒度2のクラン5だな。しかし異常がある事が問題だから対応するんだ。敵じゃなかったらそれはそれでいいんだからな」

「確かに。警備隊は本当に忙しいんだな」

そうこうしているうちに門に近づいてきたが、どうやらカルゼは森の中に入っている様で、門の警戒をしている人々の中にはいなかった。

「あ、ファグルさん、お疲れ様です!森の中に反応があったんですが警戒度4のクラン3という事が判明しました。先ほどカルゼさんが森の中に入っていきましたが、反応がだんだん強くなっていっていますのでお気を付けください」

「ありがとう、引き続き門扉の警戒を怠るなよ、何かあれば連絡をしてくれ」

そう言って通信機を一つ隊員に手渡した。

「修、結構強いみたいだがお前はどうする?ここで隊士たちと一緒に待っていても構わんが・・・」

「大丈夫だ、俺がここに来た理由がわかるだろう?俺も一緒に行く」

「わかった、気を付けて行こう」

「お気をつけて!」

隊士たちに見送られ二人は森の中へ入っていった。




「反応だとこの辺りなんだけどな・・・」

一方先に森の中へ入ったカルゼであったが、警戒度4のクラン3という隊士の報告から急いで対処しなければいけないと思いつつ探しているが、探査能力が優れているはずの彼ですら中々見つけ出せずにいた。

「急がないといけないけど、急ぎすぎて見落とす事は避けたい、仕方ないから()()を使うしかないかな・・・」

どうやらカルゼにはとっておきの物があるらしい。実はカルゼは発明者としての実力を持っていたのだった。ウエストポーチの中から小型の四角い箱を取り出し、頭に着けていたゴーグルを着けたかと思ったら、ピンを抜いて地面に勢いよく叩きつけた。少ししてスゥっと目を開けたカルゼの目の前に現れたのは無数の霊体だった。

「なるほどね・・・道理で肉眼で見えないわけだ、そんなに霊体を相手にしたことないけどなぁ・・・仕方ない、やるか」

覚悟を決めたかのようにポーチから剣を出して霊体と対峙した時、遠くからカルゼを呼ぶ声が聞こえた気がした。しかしそんな筈はないと考えたカルゼは霊体との戦闘を始めた。というのもこのゴーグルを着けている間は集中力を一定に保つために、外部からの情報を一切遮断している為何も聞こえない筈だからだ。考えられるのは霊体が幻聴を聞かせているという事なので気にしない事にした。

「オレに幻聴を聞かせるなんてバカな奴らだ。そんなものに惑わされないからな」

そう言いながら霊体を切り捨てていく。無心で切っていく内にようやく終わりが見え残り三体となったその中の一体から強力な霊力を感じた。恐らくその一体が警戒レベルを上げている、こいつがボスなのだと確信した。そう思うや否やそいつに切りかかっていたが、残りの二体に阻まれてしまった。

「やっぱ警戒度4の霊体だけあって強いな、こいつらはまとめてやった方が良いかもしれないな」

またもポーチから大きめの箱五個を取り出した。これは複数の霊体を一つにして纏めて霊子に返せる代物なのだが、警戒レベルを3までの霊体にしか効かないものであった。それを一気に五個使って対処しようとしていた。

『そんなもので私を葬ろうとしても無駄だ・・・人間ごときに負けるなんぞあってはならないのだ・・・』

ボスが悲しそうに、しかし毅然とした態度でカルゼに語りかけた。そんな姿を目にしてもカルゼは容赦なく切り捨てようとしたが、ボスの霊力の弱体化を探知した様で切るのを戸惑ってしまった。

「お前らはこの森の内で亡くなった奴らだろう?森の中の瘴気が薄くなっている。オレがあんたを切ればこの瘴気が無くなるし、オレがこの剣で切れば時間はかかるがお前は霊子に戻る事が出来る。互いにマイナスな事はないはずなんだがどうする?」

『・・・人間には今までたくさん迷惑をかけてきたが私にはまだやらねばならぬ事があるのだ・・・』

やはり悲しい声で訴えてくるボスにやり残した事を聞いてみた。

「やり残した事はなんだ?オレが出来る事なら手伝ってやりたいんだ」

『・・・我らの一族の秘宝がこの街にあるのだ。その秘宝がなければ間もなく一族が滅びてしまうのだ・・・それを返してもらいたいのだ・・・』

ボスの言っている秘宝にカルゼは心当たりがあった。それはベッツ家の家宝にもなっている宝石の一つの事だと思ったのだ。

「じゃあ霊力がもう少し弱くなったら街に入れると思うから、そしたらオレに付いてきてくれれば大丈夫。もう少し霊力吸い取るね」

そういうとポーチから小型の銃を取り出しボスに向け、引き金を引き霊力を吸い出した。

「これでいいかな、ちょっと待ってて」

ゴーグルを外し周囲を見ると後ろにいつの間にいたファグルと修がいた。

「おぅ居たのか、びっくりしたー」

「びっくりじゃねぇよ、もう終わったのか?反応がないが・・・」

「終わったよ!もう安心して大丈夫!」

「・・・本当か?ここにいるのはボスじゃないのか?」

修にボスがいる所に指をさされて二人は驚いた。カルゼはなんで見えているのかという風に、ファグルは何を言っているのかという風に。

「・・・見えてるの?さすがだね、ちょっと理由があって生かしてるんだ。目的が達成させればすぐ還すから大丈夫だよ」

「ファグルがついていけてないみたいだけど大丈夫か?もしあれだったらオレに憑依させても大丈夫だよ?」

「そんな事も出来るのか?ホントに修には驚かされるな・・・」

だんだんファグルは修の能力について把握したくなってきた気がした。そして修がボスに手のひらを見せると、ボスがそのまま手のひらに吸い込まれていった。

『・・・すまないな、私の望みのために体を貸してくれるのは申し訳ないが、少しの間貸してもらおう』

(大丈夫だ、不便をかけるかもしれないが使ってくれ)

二人でやり取りをしている間ファグルとカルゼは街に戻ろうと支度をしていた。そして支度を終えると修たちに声をかけた。

「じゃあそろそろ街に戻るよー!一旦修はオレたちと一緒に首長の所に行こう!」

そう声をかけて街に向かい足を進めた。

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