親友に生かされたこの命
一人の青年が目を覚ました。
「ここは……」
植物がお生い茂り、動物が彼を囲んで物珍しそうに見つめている。ここは自身がよく知る場所では無いことを示すかのように、久しぶりの外気に無意識に思い切り息を吸い込み、青年 酒井修は思いを巡らせた。
(俺は自室に引きこもっていたはず...)
そう、酒井修は中学を卒業し高校に進学したものの、幼なじみであり唯一の親友 水戸祐介を事故で亡くし、それが原因でいじめを受けた。祐介は学年でもクラスでも人気者で、それに嫉妬した修が祐介を手にかけたという根も葉もない噂を流されてしまった。無実を証明しようとするも多勢に無勢、友を失った修は為す術なく、次第に学校に行くの事に恐怖を感じ不登校に陥ってしまった。
(そうだ、俺に生きる資格なんて...!!)
そう思った瞬間、目の前に真っ白い光が現れた。眩しくて思わず目を瞑る。ほんの数秒、次に目を開けた時そこにはいかにもな格好をした謎の人物が立っていた。
『そのままでいいのか?』
謎の人物は修に尋ねた。
「お前は誰だ、何者なんだ?」
『今は我が聞いている。答えよ』
すかさず修も尋ねるも聞き返されてしまった。謎の人物の問に答えあぐねていると、突如答えが浮かび上がった。
「俺は...変わりたい...!誰にも馬鹿にされないくらいに強くなりたい...!」
半分泣きそうになりながらついて出た言葉は、過去何度も思いながらも達成出来なかった願いであった。
『よかろう。その願い、叶えてやろう』
謎の人物は背丈ほどある大きな杖を出し、修の頭の上にかざした瞬間、修は意識を飛ばした。
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『これでいいかの』
謎の人物 ルーテウスは修の亡き友祐介に聞いた。
「十分です、修を助けてくれてありがとうございます」
礼儀正しくお辞儀をした祐介は、次第に体が薄くなっていく。
「修、俺はお前を信じてるからな、今までありがとう」
消えてないなくなる直前、思念を修に向けて放った。修がこれを受け取るまでもう少しーーー。
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再び目を覚ました修は、またしても知らない土地にいた。
「だからここはどこなんだよ...」
落胆した修とは逆に、森がザワザワしている。
「!!」
(修、俺はお前を信じてるからな、今までありがとう)
確かに聞こえた、祐介の声で。辺りを見渡してもなにも感じなずなにも見えない。2度目の落胆をした修を励ますかのように風が優しく吹き、修を導くかのように木の葉が掻き分けられた。それに気づいた修はその道を進んだーーー。