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1-1 恐ろしき呪い

「ニャァァ〜〜、ヌニャァァ〜〜〜」



 連日の残業と休日出勤で疲れ切っていた俺を唯一癒してくれる日曜の朝。

 その貴重な休息日サバトに、俺に何かを訴える猫の鳴き声が聞こえてきた。


 頼むからよぉ。

 日曜の朝ぐらいよぉ。

 ゆっくり寝させてくれよぉ。


 俺は気怠く、ゆっくりとベッドから起き上がり、ベランダのカーテンを開ける。


 眩しい……


 次第に目が慣れてくる。


 見慣れない白い何かがいる。


 よく見ると、耳の中がピンクの白猫が、ちょこんとお行儀よく座っていた。


 ミャオミャオ言いながら、俺を見上げる。


 ……ああ、そうだった。

 捨て忘れ、におってきたツナ缶。

 昨日ベランダに出してたんだった……


 ツナ缶が欲しいのか?

 それとも、俺に飼ってもらいたいのか?


 悪いな。

 あいにく俺は猫アレルギーなんだ。

 残念だったな。


 俺のような非モテアラサーブラック企業平社員じゃなくて、優しくて金持ちで刺激的に遊んでくれるイケメンのところに行きな。

 しっしっ。


 そっちの方が幸せだぜ。


 俺はサッとカーテンを閉めると、二度寝のため、寝床に入った。


 しばらく「にゃーにゃー」とうるさかったが、諦めたのか、そのうち鳴き声は聞こえなくなった。


 猫の鳴き声が聞こえなくなると、連日の疲れのためか、すぐに眠りに落ちた。



**



 …………悪寒が走り、目が開く。

 天井に、ポツンとオレンジ色に光る照明器具の豆電球が目に入った。

 佐賀の実家か?

 俺は畳の上の敷布団で寝ている。


 ふと視線を横に移すと、部屋の障子の奥に光が浮かんだ。

 懐中電灯とは異なるぼんやりとした光だ。


 その朧げな光は段々と大きくなっていく。


 ギシッ、ギシッ、という足音が聞こえ、その音も大きくなる。


 そして、大きくなった光は障子に人影をうつした。


 いや、違う。人影ではない。


 猫だ! 化け猫だ!


 障子がスーッと小音を立てながら、ゆっくりと開く。


 開いた障子には、灯籠を持ったネコミミの童女が立っていた。


 巫女さんのような服を着ている。


 白い絹糸のような細くて長い髪で、白い毛が覆うピンクのネコミミが目立つ。


 ぱっつんと揃った前髪。

 その下にある、薄黄色の瞳に黒い瞳孔を持つその目は、俺をじろりと見下ろす。


 口元は猫童女に相応しく、丸みを帯びたwの様な猫口だ。


 ネコミミ童女は、俺の顔のそばに座る。


 俺は慌てて起きようとする。が、動かない!


 金縛りにあっていて身動きがとれない!



「さっきはよくもわらわを無視したにゃ〜。御主を許さないのにゃ〜」



 ネコミミ童女は、黒い瞳孔を大きくして、金縛りにあっている俺を覗き込む。



「御主には恐ろしい呪いを掛けるのにゃ〜」



 俺はゴクリと生唾を飲む。



「とぉっても恐ろしい呪いなのにゃ〜」



 ネコミミ童女は顔を近づけ、瞳孔をさらに大きくする。





「これから御主は喋る時、必ず『な』が『にゃ』になるのにゃ」





「へっ???」



「何を情けない声を出しているのにゃ。『な』が『にゃ』になるのにゃ。この恐ろしい呪いを解くには、妾を部屋に入れ、毎日食事を与え、存分に甘やかし尽くすのにゃ〜。妾が満足したら呪いを解いてあげるのにゃ。わかったのにゃ?」


 ネコミミ童女は顔をさらに近づける。


「いいにゃ?」


 その圧に押され、俺はうんうんと頷く。


 すると、ネコミミ童女は目を細め笑顔になり、顔をあげ、


「よかったのにゃ。早速部屋に入れるのにゃ」


 と童子のように無邪気に喜ぶ。


「三日ぶりの食事だにゃ〜。ツナ缶、楽しみだにゃ〜。どんな味がするのかにゃ〜」




 俺は目が覚めた。


 夢か。


「にゃんだったんだ、あの夢は」


 アレ!?


「……えっ!?!? にゃにぃぃぃーーーーーーーー!?!?!?」


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