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幻蒼物語 ~ファンタズマブル~  作者: K. Soma
第一部 無限の断絶

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兎と龍の邂逅譚 10

 ユリア歴一一二七年、赤の月、第四週、第一日、午前。

 

 マーシャン・ジャアトグリールの使役する暗褐色(あんかっしょく)の霊機兵、<泥岩>(でいがん)が、(かたわ)らにセイッジ・スタルヴィスタを(ひか)え、演習場に這入ろうとしていた。

 

「おい見ろよ、セイッジ。スピットのヤツ、ふらふらだぜ」

 

「……う、うん。そうだねマーシャン……」

 

 少し離れた場所にスピットらもいる。ここからでもはっきり見えるほど色濃い隈を浮かべていた。

 

<泥岩>に組み込まれた魔物の声帯が、マーシャンのそれと少し異なる声色で語る。

 

「ありゃ寝てないな。この休日、ぶっ続けで調律してたらしい……へん、スピットの野郎、中々根性あるじゃねえか。見直したぜ」

 

「……う、うん。そうだねマーシャン……」

 

「……? おい、セイッジ。どうしたんだお前。この間からなんか変だぞ?」

 

「――へ⁉ い、いや、大丈夫だよ! 平気平気、全然平気!」

 

「……俺とお前の間で隠し事はなし、のはずだよな?」

 

「っ……そうだったね、ごめんマーシャン……この模擬戦が終わったらちゃんと話すよ……」

 

「きっとだぞ? ……よし、じゃあ俺はもう行く。また後でな」

 

<泥岩>はただでさえ広くて目立つ肩を(そび)やかすようにし、演習場の中央へ向かった。

 

 

 

 

 

 演習場中央は比較的見晴らしの良い平地である。

 

 その中央で、二機の巨人が対峙していた。

 

 片やマーシャンの使役する<泥岩>、片やクリーヴの使役する<鉄傀儡>(てつくぐつ)

 

 両機共に上半身、特に使役士の搭乗する胸部――使役室を堅牢に覆った保護具(プロテクタ)を装着している。また、手にした霊石砲には限界まで模造重量(ダミィ・ウェイト)填実(てんじつ)し、最低水準(レヴェル)まで弱化した演習弾を装填していた。

 

 一見すると不格好な鎧にも映るこの保護具だが、実は特殊な霊子回路および霊石を内部に搭載しており、霊石砲に被弾すると着色された水性塗料が噴き出す仕組みである。

 

 本日の "霊機兵演習()の一" では、その塗料の噴出で勝敗を判定するのだ。

 

 言うなれば、ほとんど過保護とも評せる状況下での軽い手合わせである。

 

 最終学年の四年時に実施される対霊機兵戦演習が、陣形を組んだ集団戦、模造重量を減らした演習弾の使用、陣地防衛・奪取の作戦目標設定など、より実戦に近いのに対し、入学から間もない一年生の模擬戦ではせいぜいこの程度が関の山だ。

 

「頼んだぜ、クリーヴ……!」

 

 スピットは防護壁上に設けられた通路から、事の成り行きを見守っていた。

 

 周囲の同期生は早くも勝負はついたとばかりに冷笑交じりの野次を飛ばすが、そんなものは気にも()めない。

 

 ただひたすらに、敬虔(けいけん)な信者のように祈るのみ。

 

「へっへっへ……クリーヴぅ、今日はいったいどんな風に笑わせてくれるんだぁ?」

 

 演習場中央、棘棍棒(スパイクド・クラブ)状の巨大な霊石砲を肩に担いだ<泥岩>が、死せる魔物の声帯を介し(あざけ)る。

 

「………………………。」

 

 クリーヴは何も応えない。構えた霊石砲は<鉄傀儡>標準兵装の棍棒(クラブ)型だ。よく見れば弾倉部を覆うように板金が溶接されていたが、違いはそれだけである。

 

 生気なき魔物の眼で睨み合う両機……。

 

 ――担当教官が開始の合図、白属性霊術の発光を放つ。

 

 それを視界に入れるや否や、マーシャンは棘棍棒を勢いよく振り下ろした!

 

 だが、

 

「なにっ⁉」

 

 手に返る反動は保護具でも、死せる魔物の肉体でもない。

 

 地面。棘棍棒がそこを(えぐ)り、深く刺さり込んでいる。

 

「……これで先日の借りは返せたな」

 

 気配――マーシャンの背筋に、ぞっと寒いものが走った。

 

 いつの間にか背後を取られている。

 

 クリーヴの<鉄傀儡>が霊石砲を突きつけていた。

 

「てンめえっ!」

 

 即座に反撃にかかるマーシャン。振り向きざまに棘棍棒を薙ぎ払う。

 

 だがクリーヴはひらりと(かわ)した。

 

 それだけではない。連続して振りぬかれた棘棍棒を紙一重ですべて避け、時にはいなし、マーシャンの攻撃に隙が現れようものなら即座に反撃を試みる。

 

 まるで別人のような動きだった。

 

 スピットのいる防護壁上でも、いつしかざわめきの質が冷笑から驚愕のそれへと変わっている。

 

「やっぱそうだったんだ……!」

 

 スピットは声を震わせ呟く。

 

「アイツは……アイツは、ホントに………………()()()()()()()――!」

 

 その手は知らずの内に強く握られていた。

 

 

 

 

 

 昨日(さくじつ)まで(さかのぼ)る。時刻は白一つ。日付が変わり間もない頃。

 

 落雷と共に紫電の如き閃きを得たスピットは、簡易調律書を片手にクリーヴに詰め寄った。

 

「お、お前今、なんてった……⁉」

 

「む? どうしたのだスピット。そんなに食い入るようになって」

 

「んなこたぁいい! それよりお前、今なんて言った⁉」

 

「この機体は何故――」

 

「そのあとだ!」

 

()()()()()()()()()()()()()()、だが……」

 

()()……お前今、過敏って言ったか⁉ 霊機兵がか⁉ 詳しく話してみろ!」

 

「むぅ……とはいえ感覚的なものなので説明し辛いが………………例えば、俺がこう動きたかったとしよう」

 

 クリーヴは右の掌を差し出し、平の手をすぼめるように指を曲げる。

 

「すると、あの機体は何故か、このような感じで使役されてしまうのだ」

 

 今度は勢いよく手を閉じる。あたかもそれは、速度を出し過ぎた馬車が御者の手を離れる様に似ていた。

 

 それを見たスピットの中で、模型が組み上がるが如く一つずつ部品(パーツ)(つど)い、活き活きと想像力が働き出す。

 

 クリーヴがそこへ、更なる彩りを加えた。

 

「これまでいくつかの版の<鉄傀儡>に乗ってきたが、こんなじゃじゃ馬は初めてだ」

 

「は……⁉」

 

 スピットは呆気に取られて聞き返す。

 

「お、お前、他のも使役したことがあんのか……⁉ いったいどこで⁉」

 

「む。スレネティ戦争だぞ。去年まで俺は使役士として従軍していた」

 

「ちょっと待て! お前、()()()()()()()()()⁉ なんでそれを早く言わなかった⁉」

 

 興奮し掴みかからんばかりのスピットに、クリーヴは冷や汗を滴らせる。

 

「む……言って………………なかったか?」

 

「言ってねーよ!」

 

「そうだったか……むぅ……むぅ」

 

 心なしかぺたんと尾を下げて、むぅむぅ唸るクリーヴ。

 

 ……正直、この話をもっと早くして貰えればどれだけ助かったかとスピットは脱力するが、すぐに気を取り直し、クリーヴを質問攻めにする。

 

「……確認だ、クリーヴ。てことは当然、その時はちゃんと戦えてた、何も問題なく使役できてたってこったよな?」

 

「そうだ」

 

「お前が使役した<鉄傀儡>って三型だろ? ……何式だ? これまで何式を使ってきた?」

 

「一番長く乗ったのは九式だな……後はそれ以降の版をいくつか使役したことがある。……そういえば、ここに這入る時の奨学生試験で一六式も使ったな」

 

 グランレーファ学院で最新の<鉄傀儡・三型一七式>が配給されたのは今年の春からである。試験が行われたのは前年度なので、その時に使われたのが一つ前の一六式なのは頷ける話だ。

 

「……クリーヴ、大事なことだからもう一回訊くぞ。ちゃんと答えてくれ。お前はその<鉄傀儡>――九式やそれ以降のもの、そんで最後に一六式ならちゃんと使役できてたんだな?」

 

「うむ」

 

「てことは、お前はこの学院に来てから初めて一七式に触れて、その()()()()()()()()()使()()()()()()……そういうことだな?」

 

「そうだ。間違いない」

 

「――ならわかった。原因は間違いなく()()だ。見てみろ」

 

 スピットは手にしていた簡易調律書をクリーヴに渡す。

 

「"中枢神経系における使役補助霊石の選択実装" ……? なんだこれは」

 

「一七式になって組み込まれた新機能だよ。お前の場合、これが悪さをしてる。……いいか、そもそもはだな――」

 

 スピットはクリーヴに一つずつ説明した。

 

 そもそも霊機兵は死霊術に起源を有する。

 

 そして死霊術の正体とは白属性霊術による死肉の操作だ。具体的には霊術で生成した電気刺激を魔物の神経系に伝達させ動かす……それこそが使役だ。

 

 死霊術の軍事応用における最初期のものとして、魔物の死骸を外部から使役する "死霊兵" が挙げられる。死霊兵の主な役割は霊石の運搬および敵軍の霊石砲消費を促す(デコイ)だ。

 

 短期間で着実に戦果へ貢献し、死霊術の軍事応用研究は勢いづく。単一ではなく複数の魔物死骸を組み合わせ、防腐処理等を施した "複合死霊兵"。敵方からの乗っ取り(ハイジャック)対策として表面を板金で鎧状に覆い、死骸内部からの使役に変わった "改良型複合死霊兵" ないしは "第零世代霊機兵" 。

 

 そして、<操人触花>(そうじんしょっか)という魔物の特殊な神経を使用し、制御精度を劇的に向上させた "第一世代霊機兵" および霊子回路を搭載して霊石砲使用可能となった "第二世代霊機兵"。

 

 此度の件で肝要なのは、この内の第一世代霊機兵である。

 

<操人触花>の神経系導入。これにより、従来は運搬や囮など単純作業に終始していた死霊兵が、悪路を走破し、隠密行動を取り、奇襲を仕掛ける等のより高度な役割を(にな)えるようになった。

 

 言い換えれば第一世代霊機兵より前の時代では、死霊兵の使役とは一種の "職人技" だったのである。どのような電気刺激を生成しどのように死骸を動かすかは、各々が純粋に修練を重ね感覚を掴むより他なかった。厳密に言えばこれは死霊術に限らず全属性に当てはまることで、霊術は最後には個人の感覚依存の問題に直面し、行き着く先は技術(テクノロジィ)ではなく技巧(アート)である。

 

 その技巧・職人技の敷居を著しく下げることに成功したのが<操人触花>の神経系導入だ。この魔物は読んで字の如くの性質を持ち、人体の操作に()けている。逆の視点で捉えれば、人にとって圧倒的に使い勝手の良い(ユーザ・フレンドリィ)基盤(プラットフォーム)なのだ。だからこそ、破格の制御精度向上が実現されたのである。

 

「――そんでも、だ。使役の敷居が完全になくなったワケじゃねえ。今でもそれはあるんだ。……クリーヴ、多分お前も()()()()()()()使()()()()()、ちったあ苦労したろ?」

 

「む。それは……そうだな。最初は動かす――というより<操人触花>の神経と同化する感覚が掴めなかった」

 

 一般に、第一世代霊機兵以降でも使役にはある程度訓練を要する。如何な使い勝手の良い<操人触花>の神経系とはいえ、そこに死霊術を施し第二の肉体として意のままに操るには、やはりある種の感覚(センス)を掴む必要があるのだ。

 

 初めて使役する者で、訓練にはおおよそ一ヶ月強かかる。決して短くはない月日である。

 

「で、だ。今度の<鉄傀儡・三型一七式>はそのことを問題として取り上げて、切り込んだんだよ。それがこれだ」

 

 スピットは先と同様に簡易調律書の項目を示した。

 

「"中枢神経系における使役補助霊石の選択実装" ……むぅ、だからこれはなんなのだ? 俺にはまだ、よく理解できないのだが……」

 

「クリーヴ、お前なんで初めての使役が難しいか知ってっか?」

 

「それは……言うなれば一種の "乖離(かいり)" だな。自分の思い描く動きと、生成する電気刺激が一致しないからだ……往々にして、制御に寄与しない無駄な電気刺激を含ませてしまい、ろくに動かせないことが多い」

 

「その通り。わかってんじゃねえか。……こういう例え話がわかりやすいかもな。オレは今、水を()んだ柄杓(ひしゃく)を手に持ってる。でもって、直接じゃ届かない少し離れた位置に(かめ)があるんだ。オレはどうにかしてその場を動かず水を甕に入れてえ。だとしたら、柄杓を振るって水を飛ばすより他ねえんだが……慣れずにんなことすりゃ、柄杓の水は狙った場所以外にも零して無駄になっちまうだろうな」

 

「……つまり、甕に入れた水の量が "思い描く動き" で、柄杓で飛ばした水が "電気刺激" に当てはまる、と言いたいのか?」

 

「そうだ。ちゃんと使役するには、一発で全部の水を甕に入れてやんなきゃならねえ。でも最初はそれが中々難しいって話だよ」

 

「それは感覚的にも納得できる話だが……その話がさっきの使役補助霊石とやらとどう関係するのだ?」

 

「使役補助霊石ってえのはな、良く言えば "工夫"、悪くいえば "ズル" なんだ。……つまりな、この例えで言うんなら、柄杓を振るった後に《・》()()()()()()()()()、みたいな話なんだよ」

 

「なに……?」

 

「普通使役ってのは、使役士が内部から――使役室から<操人触花>の神経系に死霊術を施す、つまり電気刺激を生成して伝達させる……けどな、三型一七式はちょっと違うんだ。使役士と<操人触花>の間に()()()()()()()()()()()()。それが何を意味するか……わかるな?」

 

「もしかして……電気刺激が()()()()()のか?」

 

「その通り! 厳密には、電気刺激そのものじゃなくって、電気刺激になる寸前の白属性霊術が霊石で増幅されんだ。……このおかげで、使役に慣れてない奴でも最初から()()()()は動かせるようになる。さっきの話で言うんなら、柄杓で水を零しちまっても、霊術で代わりに継ぎ足してるような形になるんだ」

 

「なるほど……」

 

「しかもこの霊石は特殊な加工がしてあるから一度の発術でなくならねえ。使役の度に効果を弱めながら、少しずつ消費されてくんだ。だから、最初の内はどんなに下手なヤツでも霊石の助力ですんなり動かせる。んで、そのまま使ってくと徐々に霊石がすり減って、使役する本人も気づかない内に段々と矯正されてくんだ」

 

「そうか、それで最後には霊石がなくても自然に使役できるようになるのか」

 

「ああ、一七式に新たに実装された使役補助霊石ってのはそういう機能だ。……どーりで初めて霊機兵に触れるような奴でもすんなり使役できてた訳だぜ……それにオレみたいなうん年振りに使役した奴でも動かしやすいと感じたはずだよ……。けどなクリーヴ、()()()()()()()?」

 

「ああ、俺からすればそんな機能は余計だ………………そうか、だから俺は――」

 

「"思い描く動き" ができなかったんだよ。当然だよな、お前は最初から百発百中で柄杓の水を飛ばせるようなヤツなんだから。そこに後から水を継ぎ足しなんてすれば、甕ん中は想定量を越える。溢れだしてもおかしくないほどにな……」

 

 結果がこれだ――言ってスピットは先のクリーヴの動きを真似る。

 

 平の手をすぼめるように指を曲げてから……勢いよく閉じる、その動き。

 

「……わりぃ、クリーヴ。こいつは完全にオレのヘマだ。最初からちゃんと、一七式について調べてりゃもっと早く解決できたんだ……。多分お前は今まで、自分の感覚では異常なほど過敏に動く機体に四苦八苦してたんだろ? 動かせなかったんじゃねえ、()()()()()()()()()。だもんで、傍から見る分にはゆっくりの使役しかできなかった……んな状況で戦闘機動なんざ無理に決まってるからな」

 

「むぅ……今となっては少しずつ動きを速められたのも納得だな。あれはその使役補助霊石とやらが訓練を重ねるごとに消費されていった……そういうことだろう?」

 

「ああ。簡易調律書に書かれてる内容からするに、普通は一月(ひとつき)も使役すりゃ霊石はなくなるらしい」

 

「一月……⁉ そんなにかかるのか……⁉ それでは次の演習に間に合うまい――」

 

「慌てんなって。あくまで普通に霊石を使い切るなら、の話だ。こうなった以上、当然そんなの待ってらんねえよ……オレが直接、神経系を開いて霊石を取り除く」

 

「しかし……間に合うのか? 神経系は霊子回路と同じくらい時間がかかるだろう? 演習は明後日……いやおそらく時間的にはもう明日だぞ」

 

「……ギリギリだな。普通なら二日は掛かる作業だが、今から丸一日寝ずにやりゃどうにかなりそうだ」

 

「そうか」

 

「……ああ、だけどよ――」

 

「だけど?」

 

「………………………。」

 

 スピットは口籠る。

 

 一つだけ、心残りがあった。

 

 この霊石の除去は不可逆的な過程(プロセス)である。一度取り除いたが最後、もう戻せない。

 

 そして。

 

 これまでの話はすべて、クリーヴの話が()()()()()()()()()()、の仮定を基にしている。

 

 使役の感覚、従軍していたという経験……それらすべてが、本当だとしたら、の話だ。

 

 しかし、それに関する客観的な証拠はない……。

 

 ――その時、スピットの脳裏で不意に(よみが)る言葉があった。

 

『てめぇが誰も信じねえのに………………誰がてめぇを信じるかよ、この馬鹿野郎っ‼』

 

 彼自身がクリーヴへ言ったそれである。

 

(……へ、自分の言葉が自分に刺さっちゃあしょうがねえよな)

 

 スピットは。

 

 覚悟を決めた。

 

「む? どうしたのだスピット?」

 

「なんでもねえっ。いいから後はオレに全部任せておけ! 終わったら声かけるから、お前はそれまで休んどけ!」

 

「わかった」

 

 そして翌朝、演習当日の早朝。スピットはギリギリで霊石の除去を終わらせる。

 

 クリーヴは使役室に乗り込むや、二度三度と手の握り開きを繰り返し、言葉少なにこう述べた。

 

「ありがとうスピット……ここからは俺の仕事だ。後は任せてくれ」

 

 そう言い残し演習場へと向かった。

 

 ――そして今。

 

 まるで別人のような動きをし、獅子奮迅の活躍を見せる今!

 

「いっけえええ! クリーヴぅう!」

 

 スピットは胸壁から身を乗り出して拳を振り上げ、腹の底から叫んだ。

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