結晶少女 47
「今夜には仮契約を解除できる」
夜が明け間もない時刻、いつも通りに起床したクリーヴに結晶少女は告げた。
「かり……けい、やく……?」
「……おい、まさかそんなとこから説明せんとならんのか」
「たのむ」
「……儂がこうしておぬしの魂石に取り憑いとる状態のことじゃ」
「む。ということは」
「ああ、今宵が別れの時じゃ」
「………………。」
クリーヴはしばし黙り込む。そのまま少し俯いた。
結晶少女はこの龍人種が果たしてどう返すか、落ち着かぬ気分で色々と考えを巡らす。
だが、
「そうか……しかし、それならまあ……ちょうどいいな」
クリーヴの答えは少女の予期したどれとも違った。
「おぬし――!」
"ちょうどいい" とは、なんたる言い様だろう。
あれだけ『お前には感謝してる』だの『最大限礼を尽くす』だの言っておきこれか?
せめてこう……何か、ないのだろうか。
もう少し、別れを惜しむとか――そこまで口に仕掛け、結晶少女は思い留まる。
……自分はいったい何を期待しているのだ? そんなことを願ってよい立場か?
答えはわかりきっている。幾千も幾万も繰り返した自問自答だ。それ以上の思考に意味はない。
結晶少女は、
「……今夜、準備が整い次第、儂から声をかける」
とだけ言い残すと、蒼き光の粒と化しクリーヴの魂石へ這入った。
「……む?」
直後。
慌ただしく扉を叩く音がする。クリーヴが何事かと扉を開けると、そこにいたのはアンシェクだった。
「ク、クリーヴ~!」
「どうした、アンシェク?」
「ジョヴィを見なかったんだナ~⁉ 一昨日から姿が見当たらないんだナ~!」
「なに……?」
一昨日。結晶少女と一緒にギャランを訪れた第五日である。
「俺は一昨日の夕方、ギャランでジョヴィエルと会った。なんでも素材店を回るとかで、その後もそういった場所を訪れたはずだが……しかし、それ以上はわからない」
「お、おかしいんだナ~! あのジョヴィが平日に理由もなくいないなんて~!」
「急な用事で実家へ戻ったとかではないか?」
「そういう時は必ず、おいらに伝言を残すとかするんだナ~! ジョヴィはそういうとこ、すっごいマメなんだナ~!」
「……アンシェク、今すぐ教官殿たちに相談した方がいい。もしかすると事故か厄介事にでも巻き込まれたのかもしれん。王都にも行って、検問所の衛兵に問い合わせる必要もある」
「う、うん! とりあえずそうしてみるんだナ~! ありがとなんだナ、クリーヴ~!」
「ああ、力になれることがあれば何でも言ってくれ」




