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翌日、僕と東城は日本で最初の口裂け女の都市伝説が市内に伝播した際の目撃談などを集める為、市立図書館へ向かった。
地元新聞に記載されていた目撃情報として、当時の小学生女児のコメントが残っていたが、
やはり「噂通りの口裂け女」の容姿だった。
「一部の地域では着物姿の口裂け女も目撃されているみたい」
オカルト系雑誌から東城が情報を見つけたようだ。
雑誌内容曰く東京の一部地域においての口裂け女は着物姿でサングラスをかけているらしい。
随分とハイカラである。
「『着物姿の口裂け女』を知っている、東京にルーツを持つ人が流した噂って説はどう?」
「その線もありえるけど、弱点が効かないという大問題がありまして......」
この口裂け女には弱点がない......
もしくは別の弱点があるのだろうか?
口裂け女の弱点は他にも多数存在するが、口裂け女に遭遇する度に試す必要がある為得策ではないだろう......
流石に図書館内で口裂け女について議論を交わすと周りに迷惑だ。
僕と東城は図書館敷地内の屋外ベンチに腰掛け、手に入れた情報を元に口裂け女の対応策を練ろうとしてはいるが進展はない。
僕らは何か重大な見落としがあるのではないだろうか......
僕達の目の前をマスクをつけた子供が通り過ぎた時、東城はある事に気づいた。
「私たちが見た口裂け女 口元を隠していなかった......」
確かにあの口裂け女は口を隠していなかった。
「もしこの口裂け女が『最初に日本で広まった都市伝説より前から噂されていた怪異』だとしたらどうだろう? 例えば口裂け女の原点的な怪異だとしたら?」
僕と東城はもう一度図書館内の書物を漁る事にした。
日が傾き始めた頃、一冊の書物にたどり着いた。
江戸時代の怪談集『怪談老の杖』。
怪談集の中には江戸近郊で現れた口裂け女についての記述が存在した。
「まさか江戸時代から語り継がれていた怪異だったとは......」
「書物には特に対処方法については記載がないけど....... でもあの口裂け女は私たちに『私 キレイ?』って聞いてきたよね?」
東城の指摘通り、この口裂け女には江戸時代的要素と現代の口裂け女の内容がミックスされている。
この怪異はうまい事弱点をカバーしつつ、『口裂け女』としての都市伝説を成立させている......
「あまりにも不自然だ...... 誰かが意図的に弱点の無い口裂け女の噂を流布しようとしているとしか思えない......」