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外伝 覚悟

夢を見た


形状定まらぬ形容し難い生物とも言えるかもわからない存在が語りかけてきた



  汝 人類最初ノスキル獲得者 褒美ヲ

    汝ノ願イヲ 言エ



 願いなど無い妻を亡くし子も息はあるものの重傷もうこの世に希望などない



  汝 願イ 聞キ届ケタ

    汝 進ムベキ 道ヲ教エヨウ





  ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎



目が覚めた時には見知らぬ場所にいた


「…ここは…ッ統万とうま



「落ち着け、じん。お前の息子なら生きてはいる」



「お前は…悠介か?何が起こったんだ、結衣は結衣は何処にいる…?」

 そばにいた親友である藤原悠介は静かに首を振った。



「…そうか…やはりあの時…ックソが!!」



 何が何があったんだ!!家に帰ったら壁が砕け散り、結衣が統万を抱えて倒れ込んでたんだ、世界は滅亡でもしたのか…?」



「…あながち間違いでもないかもしれないな。7月6日時間未明世界各地で仮称ダンジョンと呼ばれる建造物が出現した」



「ダンジョン?まるでゲームだな」



「あぁ、そこから化け物どもが溢れ出して、世界を破壊しまくっている。

 自衛隊は銃火器で応戦しているが、死なない化け物もいるらしい。

 今は各地に自衛隊が派遣され、拠点が避難地として整備されている。ここもその一つだな。」


「…」

 


「…少し休んでろ。幸いこの付近ては銃火器の効かない化け物らは出ていない。

 あぁそう言えばゲームと言ったがさらにゲームぽくさせる要素もあるぜ、ステータスって言うと自分の名前、年齢、スキル欄ってのと種族?がこう、空中モニター?みたいに半透明で出るんだ、まぁスキル欄と書いてあるが実際スキルを持ってる奴なんて一人も見つかってないんだけどな」


 悠介はじゃあなと言ってこの場を後にした



「……ステータス」



日下部 仁

 32歳

 人間


【殲滅】

 敵を倒せば倒すほど敵を殺す力と敵を逃さぬスピードが手に入る


【歩ミヲ止メヌ者】

 歩みを止めなければ願いは叶う、しかし諦めると全てを失う

1日一回助言を授かる


《願い:妻、結衣の蘇生》




  ◇ ◇ ◇


 スキルが発覚して、もう一週間がたった


 あの日、混乱の中で突然目覚めた【殲滅】と【歩ミヲ止メヌ者】。

 だが、この一週間、助言は毎日同じだった。


【助言:体を休めよ】


 何度呼んでも変わらず、それだけ。

 まるで時間が止まったかのように進展がない日々だった。


 救助のヘリも届かず、情報は錯綜し、

 避難所では誰もが疲れ切った顔で夜を越していた。


 一週間。

 妻のいない現実と、息子が目を覚まさない不安溜まる一方だった


 そんな中で、今朝ようやく助言が変わった。


【助言:東北へ二百キロ進め(1/3)】


 その言葉が、胸の奥の凍った何かをゆっくりと動かした。


「……統万」


 息子の名を呼ぶだけで胸が痛む。

 妻が最後まで守り抜いた命。

 その息子は今、薄い呼吸を繰り返しているだけだ。


 助言は一日一回。

 もしこれが本当に妻へ繋がる道ならば行くしかないのか。


 だが、この状況で息子を連れて行くなど不可能だ。


「……悠介に、頼むしかないか」


 親友の顔が脳裏に浮かんだ。

あいつなら信じられる。

 妻もきっと、そう思うはずだ。


 天幕を出ると、夜の空気が肌を刺すように冷たかった。

 避難所として作られた体育館は、眠れない人々で満ちていた。


「仁、どこ行くんだ」


 声に振り返ると、悠介が自販機の前に立っていた。

 缶コーヒーを二本手に持って、いつもと変わらぬ疲れた顔をしている。


「悠介、頼みがある」


「……聞こうか」


「統万を、預かってくれ。東北の……二百キロ先のダンジョンに行く必要がある」


「二百……おい正気か。まだ世界がどうなるかも分からないんだぞ。自衛隊でさえ近づけてない場所だってある」


「分かってる。でも行かなきゃならないんだ」


 悠介は目を細めて俺を見た。

 何かの嘘を探すように。

 だが、俺の表情が本気だとすぐに悟ったらしい。


「どうして…」


「スキルだ。助言があった。行けと」


「行けば、結衣さんを取り戻せるのか?」


「……その可能性がある」


 悠介は深く息を吐き、缶コーヒーを俺に一つ投げてよこした。

 掌で受け止めると、中身の重さがじわりと伝わってくる。


「無茶だ。だが……お前がやらなきゃ後悔するんだろうな」


「すまない」


「謝るなよ。親友だろ」


 悠介は笑った。

 けれどその笑みには、明らかに不安と寂しさが混じっていた。


「統万は任せろ。医師の目も付けておく。……必ず帰ってこい。結果がどうであれ」


「……ああ。必ず帰る。妻を連れて」


 言葉にすると、胸の奥が火のように痛んだ。

 だが、その痛みが迷いを焼き尽くしていく。


 俺は天幕へ戻り、眠る統万の手をそっと握った。

 小さな体はまだ温かい。


「行ってくる。待っててくれ」


 息子の瞼は動かない。

 だが、その手は微かに震えた気がした。


「歩ミヲ止メヌ者……これは、試練なのか」


 誰に聞かせるでもなく呟き、天幕を後にした。


 外は夜明け前の青い闇。

 世界が壊れた音が、遠くでまだ続いている。


 俺は、東へ歩き出した。

 妻を取り戻すために。

 息子の未来のために。

 そして、自分自身が壊れないために。

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