1話 戦後世界
1950年。世界各国は順調に復興を進めつつあった。
『ミュンヘン講和条約』の締結から約6年が経った現在、世界は大きく変革を遂げていた。
その例は先ずはイギリス。
イギリスは今次大戦で最も多くを失った国だと言える。日本にはアジアに存在する全ての植民地を奪われた。未だに英連邦としてカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが存在するもののアフリカの植民地はイギリスの権威が落ちたことにより相次いで独立を果たした。
しかし、イギリスも事前にソビエト連邦からそうなることを予測され、イギリス政府もそれに理解を示して植民地の独立は穏健なものとなった。
イギリスとしても武力での独立ではなく、自国の影響力を残した緩やかな独立だったので特に文句はないようだ。
植民地を殆ど失った英国は大英帝国と言う国名を変えて単に英国と名乗った。対外的には連合王国で罷り通っている。
フランスはイギリス同様に影響力を残す形で植民地を独立させ、一定の権益を元植民地に残せているようだ。
アメリカ合衆国もまた180°転換した外交を展開し、かつての敵国であった大日本帝国と接近し、同盟を締結。NATOの盟主であるアメリカとの同盟だが、これはアメリカと大日本帝国での単独同盟であり、陣営間での同盟ではないと既に両国政府が公言している。
ドイツは史実のような分割は食らわずに現在のドイツと同じ領土を保持し、ドイツ共和国として再出発を果たして初代大統領にはマンシュタイン前総統が圧倒的な国民の支持の下就任した。戦後ドイツ初の普通選挙であり、満20歳以上の男女全てに選挙権がある、完全に民主的な選挙である。
経済面では各国からの復興支援もあり景気が上向き既に戦前のGNPを越えている。まだまだ統計的には右肩上がりの状態で、それが暫く続きそうだ。
イタリア王国はイタリア共和国と名前を変えて、現代と同じ領土を保っている。イタリアは今次大戦での存在感はあまり無かったものの、国際連合では常任理事国のポストを占めている世界の主要国の1つとして、他国に人道的支援を展開している。
そして一番の変革を遂げていたのは大日本帝国改め大日本帝国連邦だ。
今次大戦で最も多くのものを得たのは間違いなく大日本帝国だと言えるだろう。領土的には史実大日本帝国の領土に加えて仏領インドシナをそのまま引き継ぎ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、そしてオーストラリアとの停戦条約の際に割譲させた東ニューギニア。そして現在のミャンマーを手に入れていた。
そして日中戦争で手に入れたのは中国全土。勿論傀儡国を含めてのものだが、大日本帝国連邦として中国を全て取り込みそうなった。
大日本帝国連邦の構成国は先ずは大日本帝国。満州や蒙古は大日本帝国に併合された。他には中華共和国、新疆共和国、チベット共和国、インドシナ共和国、ミャンマー自治区、シンガポール自治区となる。
領土的には世界第二位の面積となった大日本帝国連邦だが、その実態は各国の高度な自治を残しつつ、国家元首を大日本帝国の天皇と仰ぎ盟主大日本帝国を中心とする緩やかな連邦統治だった。とは言っても経済的には1つであるし、旧帝国は中国に日本語教育を行ったため現在でも中国では多くの人が少なからず日本語を話せるし、大戦においても日本兵として日本人と共に戦った中国人も存在する。両国の確執は日中戦争ご11年の間に溶けて無くなった。だからこそできるこの連邦体制だった。勿論大日本帝国連邦も国際連合の常任理事国である。
経済的には、今次大戦で殆ど都市やインフラを破壊されなかった日本は未開発の中国、東南アジアにどんどん投資して先ずは中国国内の有数都市であった北京、南京、上海、香港、重慶をどんどん近代都市化させてその都市間に鉄道を整備した。それにより大量の金が動いたので日本は特需景気になって、これを後世では『中国景気』と呼ばれた。それは勿論中国に投資してそうなったからそう呼ばれているのである。軍事的には大陸領土が大幅に増えたことで、治安維持の為に憲兵が増員された。海軍は東南アジアまで海上警護をすることになったが元々海軍国の日本なのでそこは多少駆逐艦や軽巡洋艦等を建造し、水雷戦隊を組織することで対処した。主力艦にしても今次大戦の教訓から戦艦は現状の日本の誇りである大和型の戦艦大和と武蔵、長門型の長門と陸奥を除き全て解体。その解体した資材は空母の建造分に回されることになった。この時点で日本の空母保有数は世界一である。既に軽空母は殆ど練習空母として使用されているが日本の正規空母は現代改装が施され、近々最新のアングルドデッキに改装される予定だ。
最後に我がソビエト連邦は今次大戦で得たのは東欧への影響力や多くの同盟国である。大戦末期には正式にバルト3国とは同盟を締結し、戦後には陣営に参加している。得た領土こそ無いが、そこは別にどうでもいい。これ以上領土が増えても元々広い領土に加え管理が出来なくなるだけなのでその代わりに技術を巻き上げた。
ドイツの優秀な科学技術や産業技術により工業生産額は更に増し、農水産業生産額も右肩上がりに伸びた。既に導入は完了している。
軍事的には現在でも世界一の陸軍を持っており、海軍もそれなり、空軍は同率で日米に並ぶ。
そしてこちらも外交面では大変だったが何とか日米ソ3国同盟を結べた。
これは各陣営の盟主の単独同盟なので、同盟的にはこちらが優先される。これにより実質的に全ての陣営が同盟関係となるのだが勿論そう上手くはいかずに後にあることがきっかけで解消することになる。
軍事力と経済力を反映させた各国の国力ランキングでは現在はこうなっている。
一位が我々ソビエト連邦
二位がアメリカ合衆国
三位が大日本帝国連邦
四位がドイツ共和国
五位が連合王国
六位がフランス共和国
七位がイタリア共和国
である。
大日本帝国連邦に関しては史実のように伸びるような気配であるからその内アメリカを追い越すだろう。まあ、我が国は抜かれてやる気はないがな。




