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同志スターリンは美少女です!?  作者: 虎の狐
大戦
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17話 防衛-2




ソビエト連邦北部戦線


北部戦線は南部とは違いバルト3国という中立の壁もありかなり戦線が狭いため、兵力を厚く、要塞も強固なのでドイツ軍は一方的な損害を被るだけに終わっていた。

勿論ドイツ軍もただ黙ってやられている訳ではなく、航空爆撃も加えてはいるのだがソ連軍の対空陣地によりその殆どが爆弾投下前に撃墜されており、未だ要塞に有効打を与えられていなかった。


一方のソ連軍も被害が全く皆無な訳もなく、人員の損害こそ少ないものの物的な損害は既に凄まじいものがあった。これは全戦線を含めてのことだが、ドイツ軍による突撃と航空爆撃によりいくら強固な要塞であろうと修理を余儀なくされ金銭的、物資的消費は増える一方だった。

しかしそれでも戦闘面では未だに圧倒的優勢でありもうすぐ厳冬期が訪れるが激しいドイツ軍の攻勢を跳ね返していた。




■■■■




ドイツ軍後方補給拠点



「なあ、聞いたか?また突撃の命令が下るそうだぞ。」


「嘘だろ?あんな無駄な突撃をまだ繰り返すと言うのか?上は無能なんじゃないか?」


「っ馬鹿お前!それを万が一上官や憲兵に聞かれたらどうするんだっ!そんなこと聞かれたら直ぐに処刑されるぞ!ただでさえ停滞どころか劣勢なこの状況で上がピリピリしてるんだ······。全く、何でソ連と戦争を始めたんだか·······」


そうやって二人のドイツ軍兵士が話している。

その内容の通りドイツ軍は現在圧倒的劣勢に立たされておりそれによりヒトラーは酷く感情が不安定な状態だ。ヒトラーとてこの戦争は早期決着でなければ勝てないことぐらいは分かっていたのだ。それにも関わらずこの体たらくでありヒトラーが怒るのも無理ないと言えた。その影響で既に何人かの側近が更迭や投獄を喰らっている。


「すまない。しかしまあ、さっさとこんな戦争が終わってほしいものだよ。もう勝ち負けなんてどうだっていいから俺は生きて家族の所に帰りたい。」


「それは俺もさ·······俺を待ってくれている人が居るからな。絶対に生きて帰らないとならないんだ。」


そうやって二人が雑談を交わしている時だった。


「おい、お前たち!召集だ!」


二人の隊の隊長が呼びに来た。


「はっ!了解いたしました!直ちに向かいます!」


と返事をしてそれを最後に集合場所に向かったのだった。





■■■■




「ぎゃあああぁぁぁ!!」


そんな断末魔が至るところから聞こえるこの戦場は独ソ戦において最も過酷な戦場である南部戦線。ウクライナ戦域だった。


主に戦場から聞こえる断末魔や悲鳴はドイツ軍兵士のものでありそれはより一層味方の悲壮感を煽り、士気を落としていた。それもその筈であり大抵の歩兵科の兵士は戦車を盾に前進するも雨のように降り注ぐ砲弾で戦車諸とも吹き飛びたちまち命を落としてしまう。

不運な者はその砲弾が自身に直撃し跡形も残らず消滅してしまった者も居る。その様相はまるで地獄そのものに居るような絵面だった。ドイツ軍側の従軍記者が撮影した写真には戦争の生々しさがそのまま写真に写っており心臓の弱い者が見れば吐いてしまいそうな光景が写っていた。

あるものは腕が消し飛び、あるものは両足を失い、激痛に顔を歪めている様子が写っていた。そして、必死に味方に助けを求める兵士の姿も········


そのような悲惨な戦争の現状をありのまま写された写真は後世でも貴重なもので、いかに戦場が悲惨なものであるかを知ることのできる写真として戦争の愚かさを示していた。



「はは、ははは········あぁ、くそ、くそ、最悪だ。」


そうやって毒づくのは一人のドイツ軍兵士。彼の部隊は彼を除き全滅してしまった。


「なんで、なんでこんなことになるんだよ!!」


彼は悲痛にもそう叫ぶが叫んだところで何も変わることはない。


「っ!!?」


そうしているといきなり彼の腕に銃弾が命中して片方の腕が使い物にならなくなってしまった。そして彼もその激痛に耐えられず苦悶の表情を作り、絶叫した。


ここは戦場だ。こうしている間にも状況は刻一刻と変化している。今では彼以外の部隊もその殆どが壊滅させられるか降伏するかしていた。そして、それは彼にも迫っていた事だ。


彼の前には数人のソ連軍兵士が銃を構えて立っており、彼に武器を棄てて投降するように促していた。

既に戦う気力も体力も無かった彼は素直にその指示に従い武装解除され、ソ連後方の捕虜収容所に連れていかれたのだった。




こうしたエピソードはこの超大規模な戦争においては全く珍しくもない。日常茶飯事に見られる光景になっていた。これは異常だ。しかしながら、異常であるが、戦時に於いては全くの平常であった。





■■■■





大日本帝国帝都東京


その首相官邸では緊急の大臣たちによる会議が行われていた。



「既に皆存じているだろうが、米国が我が大日本帝国に対して要求した『ハルノート』なる最後通牒とも読み取れる文書に対して我々の回答をせねばならん。」


重々しい口調でそう告げるのは内閣総理大臣である東條英機。


「ここに居る皆の概ねの総意は既に決しておろう。既に開戦も止む無し。だろう。勿論、限界まで譲歩するつもりだ。その為に何度も米国とは交渉を続けているが······外務大臣である東郷さんからお願いする。」


「分かりました。外務省では限界まで譲歩した案を既に米国には送りましたが······現地の大使によると『取りつく島もない』とのことでした。つまり、米国はどうにもこうにも我々と開戦したいつもりでしょう。米国からの要求である満州からの撤退等は認められます。それは皆様で決めた事ですから。しかし、それ以外の中国大陸からの撤退等は決して認められません。それに関しては我が国が勝利して得たものです。更には日露戦争前の領土までの縮小を求めるなど最早我々との戦争を望んでいるとしか思えません。私からは以上です。」


「ありがとう。皆、聞いての通りだ。陛下に伝えるには大変心苦しき事であるが、それは首相である私が自ら伝えましょう。勿論、勝てる見込みは限りなく低い。だが、だからと言ってただで米国に勝利は掴ませてはやらん。幸いにも我が国はソビエト連邦との貿易により資源に関して不安はない。陸軍も海軍も十分に戦えるだろう。今ここに至り陸海のいさかいも今だけは無しだ。国が一つにならずしてかの超大国である米英を同時に相手しては勝てんだろう。だからこそ先ずは我々軍が一致団結をし、国民を安心させてやろうではないか。」


その東條の宣言に各大臣からは拍手が送られ、東條は今上天皇陛下にこの決定を報告。

天皇陛下も理解を示され対米開戦に合意なされた。


かくしてここに太平洋戦争が幕を開け、大日本帝国も否応なしに大戦へと引きずり込まれたのだった。





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