めくって見るまでわからない
久しぶりになります。お待たせしました。
木製の背丈より大きな扉は、左右とも大きな猛獣の姿が彫られており、部屋に足を踏み入れる者の心を試すような流麗だが勇猛な姿で、この部屋に足を踏み入れる者に威嚇を促す様にも見えるのは怯え心の現れなのかな。
足がすくむ。
正直怖い。
無能は施設行きってのが、嘘に聞こえてしょうがない。
もし無能なら………保証はない。
怯えすくむ私を他所に、扉はギギィ……っと軋む重々しい音をたててゆっくりと開く。
差し込む光が照らす先には、部屋一面白亜の大理石。
広々とした、高い天井は音楽ホールを思わせる。
大きな石柱には葡萄によく似た植物が上から下まで彫りこまれ、職人の仕事が伺い知れる精巧さ。
「異界の皆さま、ようこそおいでなさいましたな。さぞお疲れでしょう?あと少し頑張って下され」
真っ白の部屋の真ん中に、大きな、大人三人分の背丈はあるだろうか透き通った海の色みたいな水晶の原石が佇んでいる。
しかし……あれ?
私たち以外ひとは見当たらないんだが。
キョロキョロ見回すが、声の主が見当たらない。
「無視せんで下され、ワシだって喋りたくて喋ってる訳じゃないのですぞ」
…驚愕、石が喋ってる。