二日目午前
翌日。午前六時。その日は晴れ渡ったいい日だった。
僕らは、次々と起床し始めた。あ、目覚まし時計が付いていたのか。時計のデジタル表示を見ると[AM 6:04]となっている。
「はぁ〜、顔って洗えるのかしら」
森田が言う。さすが女性らしき発言だ。
「ともかく、川を探すしかないな」
僕はそう森田に言い、次に「みんなで川探しに行くか」と述べた。
「そうだな、それしかないな」
目の下に若干くまが出来ている大屋がそう言った。
「よし、バケツと空のペットボトルを持って出発だ」
「OK」
僕らは、眩しい日の光に目を狭めながら進んだ。ここには地図も何もない。方位磁針だけはあるけれど。ともかく、前に進んだ。なぜか他の班はまだいない。水の確保って重要なのにな。
20分位歩いただろうか。すると、川が流れていた。しかし、飲み水なのだろうか…。あっ、そうだこんなときは、「森田!水が。水質検査チェッカーを」20メートルくらい後ろにいる森田に僕は叫んだ。森田は化学同好会に所属している。しかも専門分野は"水"なので、水質検査チェッカーくらい用意しているはずだった。
森田が走ってきた。手には水質検査チェッカーが。どうやら、このタイプはペン型で、上についている液晶が水色になると飲める水らしい。
早速水質をチェックすると、液晶は水色に。要するに、飲めるということだった。
「よし、飲めるらしいな。じゃあみんなでバケツに入れるぞ。男子はバケツ、女子はペットボトルそれぞれ五本ずつくんでくれ。ペットボトルはそのエコバックにいれること。いいな」
「オッケー」
そして、水をくみ始める。2分ほどたっただろうか。水汲みが終わった僕らは、帰ることに。
帰り道――NO.8の班に会った僕らは、片手を挙手した。向こうも笑顔で挙手する。バスの運転士みたいに、挙手することがお約束だった。向こうの班のリーダーらしき人が言った。「水はこの先あったか、あったら飲めそうか?」僕らは短く「ああ」と答え、「じゃ」と言い、足早に進んでいった。
テントに着き、女子はバケツにくんだ水で顔を洗う。男子は別のバケツで歯磨きをする。こうなると、次の問題は「おなかすいた」である。朝食を食べなくてはいけないのだ。
「おい、朝食狩りに行かないとな」僕は言った。そうすると、大屋が「いや、あの川に魚がいたから、ちょっと極秘でとってきたけど、食べるか」といった。ナイス!大屋。僕らは、その魚を焼くために火をおこした。結構大変な作業で、3回も失敗したが無事に火を起こせた。どうやら大屋が持ってきた魚は鮎らしく、調味料を持ってきていた祥子の塩をかけると、鮎の塩焼きになって、美味しかった。結構な量捕まえていたので、残った4匹は昼食にすることにした。
そうして朝の支度を終えると、急にトイレに行きたくなってしまった。とはいっても、全員携帯トイレを持ってきていたため、支障はなかったが、問題は"どこでするか"ということだった。
男性陣はともかく女性陣の猛烈な議論の結果、結局近くの茂みの中ですることになった。僕らはトイレを終え、テントに戻った。これでもう全て安心だ。今の時刻は7時52分。10時に一度先生宿舎に行かねばならないので、それまでは各自持ってきた本や携帯ゲーム機、ケータイ電話などで暇つぶしをしていた。もっとも、ケータイ電話で電話することや、i-modeなどにつなぐことは出来なかったが。とりあえず僕は持ってきた『陽気なギャングの日常と襲撃』を読むことにした。
気が付くと、9時40分になっていた。僕はみんなに「おーい、そろそろ行くぞ。先生宿舎」と呼びかけ。ゴロ寝状態のみんなを起き上がらせ、出発した。
先生宿舎では、問題なく無人島生活できているかどうかというのが話され、各班のリーダーが自分の班の状況を話すことになっていた。そのリーダー役は、僕が引き受けた。というか、押し付けられた。
ついに自分の班の順番が回ってきた。「えーと、僕らの班では特に問題はありません。朝食もトイレも水の確保も済ませました」――こんなのでいいのか?とメンバーに目配せすると、メンバーはとりあえずうなずいたようだった。先生が「分かりました。座っていいです」と発言したので、言葉通り僕は座った。
そんなこんなで午前中が終わった。次は午後だ。昼食も食べなくては…それでは、『二日目午後』に続く。